国土交通省関東地方整備局 岩﨑福久局長インタビュー
人口減少を踏まえ、生産性を高めるためにDXを活用
i-Construction2.0の推進
建設施工のオートメーション化を目指す
−−国交省ではDXの推進・活用を大きなテーマとしておいでですが、新設や災害復旧はもちろん、維持管理業務においても、点検作業の効率化や立会の効率化、工事や点検などの安全向上の面(無人化技術など)など用いている取り組みを教えてください
岩﨑 インフラを取り巻く環境というのがだんだん厳しくなってきており、人口減少を踏まえ、働き方改革を進めて生産性を高めていかなくてはなりません。また、我々だけではなく、パートナーである建設業界の生産性を高めていくことも大切です。そのためにもDXに取り組んでおります。働き方改革等で創出された時間を活用して、手つかずの業務の課題を解消したり、新たな業務に挑戦したり、スキルアップして、休みをライフワークバランスの充実に活用するという効果が考えられます。大切なのは、私たちが背中を見せていかなくてはならない。リードしていくということと、楽しく前向きに失敗を恐れずに「アジャイル精神でやってみなはれ」というスローガンのもとに職員は頑張ってくれています。
関東地方整備局はインフラDXを進めるために、基本的なスタンスを改めて再整理しました。取り組みを強化するところとして、5つの項目を挙げています。1つ目は「i-Construction2.0、ICT施工stageⅡ等の推進」です。建設施工のオートメーション化、今まではICT施工の初段階として3次元データで施工や検査をやっておりました。それをさらに進めて、自動で建設機械が現場を施工するというところまで高められないのかということを現在2つの現場で試行しております。
ICT施工stageⅡというのは、現場で得られた様々なデータを見える化し、施工管理に生かしていこうというものです。複数のダンプやバックホーにセンサーを付けて、リアルタイムでどこにいるのか、どれだけの作業が今行われているのか、1日当たりどのくらい出来高が上がっているのかなど見える化することによって、施工計画を最適化することが可能になるので、まずは試行、検証しているというところです。
2つ目は「BIM/CIM適用による好事例抽出と水平展開」です。CIMをより使いやすい、使い勝手のいいものにするために、好事例を掘り起こしして、それを水平展開していくというようなことを行っています。
また3つ目の「小規模工事へのICT施工の普及強化」では、県、市町村などの小規模工事に対しても、ICTを活用できるようにしないといけないと考えています。生産年齢人口が減っていく中で、いかに効率を上げていくかという問題意識の下に、手引きの作成、セミナーの開催などを実施しております。
4つ目の「異分野間の取り組み共有による創発・高度化」ですが、これは分野間で良いところをもっと共有し、連携して行うことはできないのかという取り組みです。特に管理の場面で、河川の管理、道路の管理でプラットホームを作り行っておりますが、それを河川だけではなくて道路にも応用できるようなところがあるのではないかと。逆に道路で使っているユースケースを河川にも展開できるのでは等、意識して取り組みを共有して、よりいいものにできないのかと試行しております。
最後は「各事務所のDXの取り組み推進」となりますが、i-Constructionのモデル事務所である「甲府河川国道事務所」及び「荒川調節池工事事務所」の取り組みを横展開していくことを行っています。
また、道路WGにおいては道路の日常管理において、今まで目視で行っていた点検を、AI画像解析により舗装損傷状況を自動検知出来るようにしたいと思っております。
安全なインフラ整備のための体制をいかに持続的に確保していくのか
−−今後の展望をお願いいたします
岩﨑 KOSEN-REIM(高専レイム)(本サイト連載:「高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦」参照)というメンテナンスの担い手をリカレント教育して育成していく取り組みがあります。本省公共事業企画調整課長だった際、私も設立に協力させていただき、担い手確保、人材育成の重要性について改めて考えさせられました。
インフラの老朽化は加速する一方でさらに自然災害、気候変動で激甚化、頻発化する中、人口は減少しています。建設産業界の方々も人が減っていて、メンテナンスだけでなく、インフラの整備と管理をそういった現状の中で立ち向かっていかなくてはならない。体制をいかに持続的に確保していくのかということが大切で、そのために担い手の確保や処遇の改善、働き方改革、さらには生産性向上というものを本当に正面に捉えてやっていかなくてはならないと最近強く思っております。
−−ありがとうございました