Interview

国土交通省中国地方整備局 林正道局長インタビュー

2025.01.01

地域の安全・安心と地域経済の強化を重点において整備

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2025年新春インタビュー 国土交通省
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スーパーブラスター工法 全てのコンクリート構造物の調査・診断・補強・補修に関する総合エンジニア CORE技術研究所

再度の災害防止を着実に

再度災害防止対策 小田川合流点付け替え事業が完了

土砂災害防止のための砂防堰堤も27基が完成

−−先ほど河川氾濫や土砂崩壊のリスクのある地域だとおっしゃっていましたが、こうした状況に対し、道路や河川の損壊を防ぐため、どのような予防保全的対策を行なっていくべきとお考えでしょうか。ソフトウエア、ハードウエア対策なども含めて教えてください

 林 水害、土砂災害の関係ですが、先ほどお話ししたように山が多い地形で、地質的にも花崗岩が広がっていて、それが風化すると土砂災害につながりやすい、そのようなリスクの高い地域です。その対策として、河川関係で今力を入れていることが平成30年西日本豪雨の再度災害防止です。

 まずは、高梁川支川小田川が大きな被害を受けたということで、小田川の水位を抜本的に下げる対策である小田川合流点付替え事業が令和63月に完成しました。

 

小田川合流点付替え事業概要



左:締切堤防付近の様子 右:新合流点付近の様子


 

 平成30年には、呉市を中心に広島県内で土砂災害がありましたが、再度災害防止として、広島西部山系や安芸南部山系の砂防堰堤などの整備を進めています。計画として32基整備するうちこれまで27基が完成しています。残りの計画箇所についてもしっかりと進めてまいります。

 

広島市安佐北区口田南地区で進む砂防堰堤工事


 

 道路関係でも地すべりが生じ、全面通行止めということもありましたが、国道9号に並行して整備している山陰道で迂回をして、その効果が発揮されました。迂回路につながるような道路の整備を進めていくということで、道路事業についても機能確保できるような整備を進めていくということだと思っております。

 ソフト施策としては、ハード整備だけでは、河川についてはやはり雨がこれからますます強くなっていくことで、河川管理者だけではなかなか全部抑えられないということになるので、流域のあらゆる関係者が共同して一緒に頑張るために、「流域治水」の取り組みを進めています。

 


「流域治水」への転換


 

流域治水」の施策のイメージ


 


江の川水系江の川等の特定都市河川への指定


 


江の川下流におけるまちづくりと連携した河川整備

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点検や耐震対策を強化

通行止めのバックアップのための迂回路の確保

 −−熊本地震や、能登半島地震の記憶も新しいところですが、こうした地震災害の備えとして、道路や河川、港湾といったインフラのハードウェア的な対策、ソフトウェア的な対策をどのように進めていますか

 林 地震の対策ですが、堤防や水門・樋門等の構造物の耐震点検を実施し、順次必要な対策を実施することが重要だと考えています。特に瀬戸内海に注ぐ河川の河口は、南海トラフ巨大地震等による液状化によって堤防が沈下した場合に津波による浸水被害が発生するおそれがあることから、吉井川などの堤防の耐震対策を実施しています。

 地震災害の備えとして、災害時の救急救命活動や復旧支援活動を支えるため、緊急輸送道路上の橋梁について、大規模な地震でも軽微な損傷に留まり、速やかな機能回復が可能となる橋梁の耐震補強対策を推進しているところです。引き続き、地方公共団体と協力して優先すべき緊急輸送道路ネットワーク上の橋梁耐震補強を計画的に進めてまいります。

 港湾も同じく大規模地震が発災した際に、発災直後から緊急物資等の輸送や経済活動の確保を目的とした、通常岸壁よりも耐震性を強化した係留施設を、広島港出島地区や宇品地区で整備を進めております。

 ソフト施策としても、災害時に何をどのように進めていくのかとあらかじめ訓練をしておくということが大切だと考えております。地震で壊れたときにそれを復旧するためにどうしたらいいのか、あらかじめBCP業務継続計画の作成を行っております。

 道路関係ですが、山陰道での9号通行止めのバックアップに整備効果が発揮されました。そういった整備をさらに進めること。山陰道の中でも通れなくなると困るようなところを重点的に解消するような事業が現在進められています。災害に強いまちづくりのため、国と県と市が連携してどのような避難対策を取るか、道路啓開をどうするかなど、様々な取り組みを行っております。

山陰道の整備効果


 


中国地方道路啓開計画の基本的な考え方

自治体への支援を積極的に

インフラメンテナンス国民会議「ちゅうごく」の取り組み

 −−基礎自治体の財政力の低下とインフラの老朽化が進んでいます。中国地方整備局が点検代行や修繕代行を行なった構造物について教えてください。また、今後の傾向や基礎自治体のインフラマネジメントの保全支援についても、整備局として行っている効果的施策や新しい取り組みなどがあれば教えてください

 林 自治体の財政力低下や技術者不足というような状況がある一方で、インフラ自体が老朽化しているというのは深刻な事態になってきています。自治体の支援というものを国としても積極的に進めていきたいと考えています。事例として、市の要請に基づいて点検代行・修繕代行した実績がありますが、現在は自治体がやっていることの支援ということとして、産官学が連携してみんなで対応していくというインフラメンテナンス国民会議「ちゅうごく」を立ち上げています。メンテナンスのベストプラクティスの水平展開や民間企業と連携した中国地方発の技術開発、市民団体との連携促進などを進めています。



 


インフラメンテナンス国民会議「ちゅうごく」の活動内容


 

 その上で、インフラの施設の機能を維持しながら広域多分野のインフラをグループとして捉えていき、戦略的に重要インフラをマネジメントする「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」についても、中国地方としても戦略的に推進してまいります。令和512月から中国管内では48自治体が群マネモデル地域に選定されていて、島根県益田市などでは農林道を含む道路分野の水平連携、広島県では県と町で道路分野での垂直連携、広島県三原市では道路、河川、公園といった分野の連携を図っています。さらに、山口県下関市では臨港道路を含む道路分野との連携を行っています。

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