Interview

内閣府沖縄総合事務局 那覇空港道と沖縄西海岸道路を重点整備

2025.01.01

保全は来年度からとよみ大橋の補修工事に着手

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2025年新春インタビュー ASR 沖縄総合事務局 鋼橋 防食
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来年度からとよみ大橋の補修工事に着手

トンネル 健全度Ⅲは5箇所

橋梁耐震補強 未対策は13橋

 ――トンネルについてはいかがですか

 関 トンネル数は20本あり、覆工コンクリートのひび割れや、漏水が発生しています。対策としては、ひび割れ注入工、断面修復工、漏水樋の設置などとなっています。


トンネルの損傷状況


 損傷度の遷移ですが、1巡目から2巡目にかけてⅡからⅢへ進行したトンネルは5箇所となっています。2箇所については、ひび割れが進行して浮きが見られたことから断面修復、ひび割れ注入工などを行っています。あと3箇所は幸地又トンネルの漏水、名護大北トンネルでは側壁のひび割れ、目地部からの漏水などとなっています。

 ――耐震補強の進捗状況および落橋防止装置の設置状況などについて教えてください

  耐震補強が必要な橋梁は236橋あり、内、223橋は対策済みとなっています。未対策橋は13橋です。

 沖縄の道路啓開の考え方として、津波により海岸沿いの道路が寸断された場合を想定して、津波の影響を受けない沖縄自動車道と県庁を結ぶ那覇空港自動車道の南風原高架橋の耐震補強を優先して実施しています。

 落橋防止装置の全数、実施済み箇所は不明ですが、耐震補強未対策の13橋は落橋防止対策が必要か照査を行い、対策を進めていく予定です。

 能登半島で2024年元旦に起きた地震については、大きな教訓であると考えています。橋梁等が通れなくなった時は、どういう優先順位で啓開していくか、などを考えていかなくてはならないと考えています。

 とりわけ北部国道管内は道路ネットワークの冗長性が不足しており、災害時を念頭に置いて、絶えず緊張感をもって望んでいく必要があります。

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来年度からとよみ大橋の補修工事に着手

幸地又トンネルの漏水対策を実施中

 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況についてお答えください。また、具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです

 関 橋梁の修繕については、点検要領に基づいて、健全度Ⅲの橋梁から優先的に対策を進めています。現時点では、健全度Ⅲの橋梁8橋のうち6橋については補修が完了しました。残り2橋は関係機関(防衛施設局)との調整(2,3年を要する見込み)が難航しており、補修に時間を要する見込みです。来年度からは先ほどお話ししました、損傷が進行しているとよみ大橋の補修工事に取り掛かる予定です。

とよみ大橋遠景と添接部の損傷状況 


 損傷状況としては、塩害による桁のエッジ部、ボルト連結部の腐食、塗装の劣化などとなっています。補修の内容としては、塗装の塗替えが主となります。

 ――同様にトンネルは

 関 橋梁と同様に5年に1回の点検を実施し、健全度Ⅲを優先して補修を実施しています。現在の所、Ⅲ判定は3箇所でうち2か所は対策済みとなっています。現在、幸地又トンネルの漏水対策を実施中です。


トンネルの補修状況


 トンネルの修繕としては、覆工コンクリートの浮き、ひび割れの補修、漏水樋の設置、水抜き工の設置など湧水対策を行っています。

 ――経年劣化や疲労などによる橋梁上部工補修補強のここ3年の実績と2024年度の施工計画について教えてください。またとりわけ橋梁床版の防水工の施工の有無や対策状況について教えてください

 関 ここ3年の実績は、塗装劣化による塗装塗替え工事を5橋(国道58号ツマサ橋、牧港高架橋(下り)、国道329号長堂橋、国道331号山下垣花高架橋ランプ、国道506号宮城高架橋(P9~P11))で実施しました。

 2024年度は、国道58号東寺川橋(上り線)の塗装塗替え、支承の塗替え、国道330号浦添大橋の上部工補修(高力ボルトの取替え)を施工します。

 コンクリート床版の防水工の施工済み割合は把握できていませんが、床版からの漏水があった場合は、詳細調査し、防水工の有無を確認している状況です。床版防水の施工については、今年度の施工予定はありません。

 ――支承取替えやジョイントの取替えノージョイント化について今年度の予定を教えてください。また予定がある場合は、どのような種類の支承やジョイントに取替えるのか教えてください

 関 ノージョイント化の予定はありませんが、北部国道事務所管内の東寺川橋(上り線)においてゴム製ジョイントへの取替えを実施します。

未洗浄の海砂を使用したコンクリート部材で腐食やひび割れが発生

ASR対策 幸喜橋、ナンガー橋で実施

 ――塩害、ASRなどによる劣化の有無と損傷状況について、詳しく教えてください

 関 塩害については、鋼橋、コンクリート橋問わず生じています。

 鋼橋については、塗膜の劣化による錆の発生が、主に連結部のボルト、桁のエッジの部分など塗装被膜がのりにくい場所で多くなっています。

 対策としては、沖縄地区鋼橋防食マニュアルに基づいて、塗膜を厚くし、ボルトキャップをかぶせるなど新たな対策を行っています。


ボルトキャップ / 塗替え


 コンクリート橋では、未洗浄の海砂を使用したコンクリート桁および橋脚で、鉄筋の腐食やひび割れが発生しています。

 対策としては、断面修復を主に行っています。また、PC橋ではPC鋼材が腐食し、破断に至り架替えになったケースがあります。名護市の国道58号後原橋です。

――ASRについては以前の取材で、幸喜橋やナンガー橋(いずれも国道58号)で対策を施す予定とされていましたが、具体的にはどのような対策を行いましたか

 関 幸喜橋では車道部床版でシート系防水、歩道部床版で塗膜系防水を行うと共に、橋梁部全体では含浸系表面保護材塗布工を施工しました。


幸喜橋の施工前(左)および施工後(右)の桁下面状況


 同様に、ナンガー橋では車道部でシート系防水、歩道部で塗膜系防水を施工すると共に、橋梁部全体では、断面修復工、ひび割れ注入工、含浸系表面保護材塗布工を施工しています。


ナンガー橋の防水工施工状況(左2枚は車道部、右2枚は歩道部)


 ASR対策としては、主桁に漏水がある場合は防水対策、断面修復、ひび割れ注入工、含浸系表面保護材塗布工などを行っております。

 ――今年度の鋼橋塗り替えはどのくらいの規模でしょうか。また、塗替えの際の有害物質を含む既設塗膜の除去方法について採用している工法を教えてください

 関 今年度の鋼橋塗替えは2橋2,730㎡を予定しています。対象となるのは、浦添大橋の添接部(130㎡)と東寺川橋(上り線)2,600㎡です。鉛含有塗料はありませんが、PCBなどの有害物質を含む塗膜処理については、塗膜剥離剤を使用することで、飛散防止に努めています。また除去後の既設塗膜処分については県内に処理施設がないため、全て本土で処分しています。

法面や斜面の予防保全 要対策箇所は87箇所、49箇所が未対策

――全国的に異常気象などによる土砂災害が発生しています。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修、もしくは更新、道路に面する斜面や古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的事例や計画などがございましたら教えてください。

 関 法面や斜面の予防保全については、点検を行い早期に変状を把握することにより、適切な対策を取ることが重要であると考えています。年に1回の頻度で点検を実施し、地震、豪雨などがあれば、防災点検業務で巡回し、変状が予想される箇所を重点的に目視点検しています。法面、斜面、盛土などの点検箇所は320箇所あり、要対策箇所が87箇所、カルテ点検箇所が233箇所となっています。要対策箇所中49箇所が未対策となっていますが、今後予算要求を行って、対策を施していく予定です。


法面対策状況


 直轄道路では、橋梁の河積阻害による架替えの実績はありません。

 ――新技術やコスト縮減策、または独自の新技術・新材料などの活用について教えてください。

 関 新技術については、舗装点検で車載カメラによる舗装劣化状況を確認する技術(路面モニタリングシステム、PA010013-V0022)や、橋梁点検で近接目視が困難な箇所をドローンを使用して業務の効率化を図る技術(無人航空機を利用した橋梁点検システム. 【FLIGHTS CONTROL】、BR010028-V0324、「全方向衝突回避センサーを有する小型ドローン」、BR010009-V0222)を採用しています。 

 ――新設、災害復旧、保全を問わず、安全性の向上や業務の効率化、DXの活用事例について教えてください

  DX活用については、まず維持管理面における活用としては、先に話したドローンを用いた点検技術の他、遠隔臨場の活用により、工事立会の効率化を進めています。

 そのほか、道路管理業務で保有する道路台帳や占用申請等の資料および道路施設など点検データなど各種情報をGSI・APIと連携した道路管理プラットフォームを構築し、より迅速に閲覧・共有、有効活用することで、道路管理業務の効率化・円滑化を図ろうと考えています。

 新設については、小禄道路において、基本的に工事全般において、BIM/CIMモデルを活用して進めています。2D図面では事前チェックが難しい橋梁配筋図の鉄筋干渉の確認など、施工時の不具合の防止や完成イメージの確認が容易にできることで、関係者へのわかりやすい説明が3Dモデルにより可能となっています。各々の施工業者が現場状況に合わせて加工を行うなど、DX技術の活用推進を進めています。


BIM/CIMモデルの活用事例②

ICT施工の活用事例


 また、BIM/CIMモデルを地元業者が施工段階でうまく活用できるように、読谷道路でICT活用工事現場見学会を開催しています。国・県・市町村やコンサルタント、施工会社など、約100名の参加があり、普及・促進に努めています。

 ――ありがとうございました

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