国土交通省 中国地方整備局 門間俊幸道路部長インタビュー
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国土交通省中国地方整備局は、直轄国道1,944km(うち自動車専用道路:約451km)、4870橋、278か所のトンネルの管理を行っている。中国管内は九州や近畿を結ぶ中継地点で製造業を主とした瀬戸内海工業地域が広がっており、輸送も盛んに行われている地域である。また、平成30年7月豪雨災害では道路や鉄道の交通ネットワークの寸断が広範囲、長期間にわたって発生した。こうした状況に道路行政がどのように対応していこうとしているのか門間俊幸道路部長に詳細を聞いた。
山陰道の整備率も来年度には6割以上に。地域の自立的発展を支援
災害リスクを考慮したトンネル坑口の設計
豪雨時の越水や土石流で坑口が埋まらない構造に
−−大規模な風水害や地震などが全国各地で生じています。管内でも先の西日本大水害などにより大きな被災が生じたことは記憶にあたらしいところです。そうした洪水や斜面崩壊に対して橋や道路が損傷しないため、施している構造上および工事上の工夫について教えてください
門間俊幸道路部長 能登半島地震ではやはり強靱な道路ネットワークの必要性というのを改めて感じたところでございます。島根半島の島嶼部等は能登半島と条件が重なる部分もあると思います。また令和6年8月に宮崎の方で地震が発生し、南海トラフ地震の臨時情報が初めて気象庁から出たこともありました。先日は注意でしたが、それが警戒になった場合どのような体制を取れば良いのかと体制を見直すきっかけにもなりました。津波の場合は四国をいかに助けるか、四国と連携する体制をとっておりますので検討をしていかなくてはならないと危機感を感じました。現在のネットワークをどのように強化していけるかを改めて考えております。
中国管内は瀬戸内の気候で穏やかなイメージがあります。しかし、平成30年7月豪雨災害の際、土壌が真砂土であることのほか、災害の経験が少ないためか、非常に弱い部分もあり、大きな危機感や災害の切迫性を持った時期でもあったかと思います。現在は防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を含め、のり面対策や浸水対策等取り組んでいるところでございます。
災害を事前に防ぐような取り組みとしては、新規事業化の際に航空レーザー測量から作成した赤色立体図を用いてリニアメントや地すべり地形、土石流錐などの不安定な地形を判読し、ルート回避や橋梁等に道路構造を変更するといった工夫をしています。
(中国地方整備局提供、以下注釈なきは同)
また、従来はトンネル坑口をできるだけ追い込んでトンネル延長を短くすることにより経済的になるよう設計を行っていましたが、トンネル坑口上部に沢の付け替え水路が計画されるなど、豪雨時の越水や土石流が発生した場合、トンネル坑口が埋まるリスクがありました。
当地整で整備・管理する道路は、災害時における緊急輸送道路として位置づけられており、速やかに緊急車両が通行できる機能を確保する必要があるため、設計審査会において豪雨時の越水や土石流により坑口が埋まらない構造とするよう指摘を行い、初期コストは高くなるものの、トンネル坑口の延伸と水路への落差工の追加によって、土砂災害による安全性の向上を図る設計に見直した事例もあります。また、設計打合せや設計審査会などにおいて、構造物の重要度や維持管理面、地震後の対応等を踏まえ、コストにも考慮しつつどういう構造物を造るべきか指導を行っています。
平成30年7月豪雨災害の際、広島、呉、東広島都市圏において、道路や鉄道の交通ネットワークの寸断が広範囲、長期間にわたって発生しました。鉄道の被災により自動車への交通手段転換が進むとともに、通行可能な特定の道路へ自動車交通が集中する事態となり、特に広島市~呉市間では大規模な渋滞が発生しました。渋滞に対応するため、経済界、学識経験者、交通事業者、行政等が連携した「広島・呉・東広島都市圏災害時交通マネジメント検討会」が立ち上げられ、「山陽道の料金調整を行い、高速道路を経由した広域的な迂回の促進」や「臨時便の運行・車両の確保」、「バス専用レーンの設置」、「各機関が保有する情報の一元化、渋滞状況の分析」等の各種対策が展開されました。災害時の交通マネジメントを行なったのはこの時が初でしたが、比較的スムーズな体制で行うことができたと考えています。この経験を今後も活かせればと思っております。
山陰道の整備率も来年度には6割以上に
地域の自立的発展を支援
−−2024年度の重点道路事業建設の計画と進捗状況、また新規事業化区間について教えてください
門間 現在は高規格道路の一部である山陰道を整備しております。山陰道は、鳥取県鳥取市を起点とし、山口県下関市を終点とする、延長約380kmの道路です。中国管内は九州や近畿を結ぶ中継地点で、瀬戸内の工業地帯は国内でも重要な拠点の一つです。その輸送に重要な道路である中国縦貫道がありますが、山陽道の渋滞対策で、2号と山陽道を長い間整備してきた歴史があります。これまでどちらかというと山陰側の整備が遅れていましたが、ようやく追いついてきたという状況です。
現在、事業中の山陰道は鳥取県は北条道路、島根県は出雲・湖陵道路、湖陵・多伎道路(今年度末)、福光・浅利道路、三隅・益田道路、益田道路(久城~高津)、益田西道路、益田・田万川道路、山口県は木与防災、大井・萩道路、三隅・長門道路、俵山・豊田道路です。現在、整備率は約58%(221km/約380km)となっております。来年度には三隅・益田道路等、64%が開通する予定です。
この道路は、鳥取・島根・山口3県の主要都市を東西に結び、移動時間の短縮や、空港・港湾へのアクセスの強化を図ることにより、各地域間の交流・連携の強化及び推進、山陰地方の産業・経済の発展や観光振興を目的として整備を進めています。また、災害に強い国づくりを推進し、更に活力ある地域社会を形成するために、地域の自立的発展を支援する視点からも重要な路線です。
現在、山陰道が予算の大きな割合を占めているのですが、完了しつつありますので岡山や倉敷の2号の渋滞対策が今後の大きな課題と考えています。また、広島の都市圏の整備を進め、工場地帯と高速道路のアクセスいかに早く繋げるかが重要だと考えています。
新規事業化区間については、令和6年度に鳥取県内の一般国道29号津ノ井バイパス(広岡~西大路)、山口県内の一般国道2号台道・鋳銭司拡幅、岡山県内の一般国道2号コネクトパーキング岡山・早島、広島県内の一般国道2号仁保局所渋滞対策を事業化したところです。
津ノ井バイパスについては、鳥取市広岡~西大路間の交通混雑の緩和、交通安全の確保及び、救急医療活動の支援を目的とした延長2.8kmの道路です。現在、測量調査、地質調査を実施しているところです。(延長:2.8km、土工延長:0.2km(12%)、橋梁延長:1.5km(88%))
台道・鋳銭司拡幅については、防府市台道~山口市鋳銭司の交通混雑の緩和、交通安全の確保及び、地域産業の支援等を目的とした延長2.8kmの道路です。現在、測量調査を実施しているところです。(延長:2.8km、土工延長:2.8km(100%))
コネクトパーキング岡山・早島については、物流関連車両の中継輸送拠点を整備するもので、整備により物流事業者の中継輸送を支援し、物流の効率化やトラックドライバーの働き方改革を目的とする事業です。(延長:0.5km)ドライバーの泊まりがいらなくなるので働き方改革にも寄与すると考えています。
仁保局所渋滞対策については、一般国道2号から広島高速2号線仁保IC方面のランプを2車線化に拡幅する事業です。拡幅することで本線直進車両の阻害を解消し、渋滞の緩和を図ることを目的としています。(延長:0.2km)
設計中の主要橋梁は11箇所、トンネルは8箇所
−−2024年度の設計中の主要橋梁・トンネル事業の計画と進捗状況を教えてください
門間 設計中の主要橋梁11箇所あります。施工中はこちらのトンネルがトンネル7カ所で、橋梁はメタルが20カ所、PCが13カ所となります。設計中の主要トンネルは8箇所となります。
橋梁は山陰道山側はPC橋が多く、都市部はスパンを飛ばさなくてはならないので鋼橋という傾向で発注が進んでいます。
このうち西広島バイパスでは、広島市中心部を通過する国道2号を2.3kmに渡り高架化する事業であり、厳しい交差条件(直轄3河川、路面電車2系統、直轄国道1路線)と狭隘な施工ヤードから長スパンの橋梁と鋼製橋脚を採用しています。
施工中の主要橋梁は43橋、トンネルは7箇所
−−施工中の主要橋梁・トンネル概要(橋長(延長)、上・下・基礎各形式、防食方法、進捗状況)を教えてください
門間 施行中の主要橋梁は鋼橋20箇所、PC橋13箇所、主要トンネル7箇所となります。
一般国道2号広島南道路(明神高架)は広島都市圏における交通の円滑化、都市機能の向上を図ることを目的とした延長23.3kmの道路となります。広島南道路の東端に位置する明神高架区間(延長2.9km)は令和元年度に工事着手し、現在、橋梁下部工事を進めており、令和6年度から橋梁上部工事を行なっております。