Interview

国土交通省 中国地方整備局 門間俊幸道路部長インタビュー

2025.01.31

道路の老朽化対策や災害対策を全力で進めていく

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国土交通省
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技術をもって社会の発展に貢献します 鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 never-ending challenge

新技術を導入したトンネル覆工工事の省力化

新技術を導入したトンネル覆工工事の省力化

トンネル作業の省人化・自動化を進める

 −−新設における新技術・新材料の導入事例について教えてください

 門間 トンネル工事は、狭い坑内での作業であることや、切羽付近での肌落ちによる事故など、危険と隣り合わせの作業が多く、これにより、若年層の入職者の減少など、担い手不足が顕在化している状況にあります。トンネル工事の生産性向上に加え、現場環境の改善による入職者の確保も喫緊の課題となっています。この課題解決のため大手ゼネコンが中心となってトンネル作業の省人化・自動化が進められているところです。

 例えば、令和4年度俵山・豊田道路第1トンネル工事において、トンネル覆工作業時に通常6人編成で点検窓から作業員が身を乗り出し締固め作業を行い、1ロットの打設が完了するとコンクリートの吐出口を切替えて次のロットを施工するが、『自己充填覆工構築システム』を採用することで、コンクリートの締固めおよび吐出口の切替作業を行うことなく、3人の作業員で作業時間は通常の半分程度で施工することができました。県の工事では採用事例がありますが、直轄では初の採用となります。なお、締固めに従事する作業員は0人です。


自己充填コンクリートの圧送配管(スライドセントルの下端へ圧送)(写真提供:佐藤工業(株))


 

覆工コンクリート充填確認モニター(写真提供:佐藤工業(株))


 

 また、フライアッシュ(石炭灰)を活用した『低炭素型自己充塡コンクリート』を使用することによって、CO2の排出が削減され、環境負荷低減を図っています。

 省力化および環境負荷低減を図ることができる理由とその効果ですが、①自己充填コンクリートを使用することで、セントル点検口からの締固め(バイブレーター)作業が不用となるため、締固め要員が不要となります。(1編成 6人⇒3人)②コンクリート打設にかかるコンクリートの吐出口の切替作業が不要となります。(1回約20分✕5回を縮減)③締固め作業および切替作業が不要となることによって,施工時間を大幅に短縮することが可能となります。④コンクリートの材料であるセメントは製造時に多くのCO2を排出します。流動性の高い自己充塡コンクリートを製造するには、一般的なコンクリートよりも多くのセメントが必要となり、環境への影響が懸念されますが、今回、火力発電所から排出されるフライアッシュ(石炭灰)を活用することによりセメントの使用量を削減し、環境負荷低減を図りました。 

 通常6人編成で作業を行う作業が3人(実質1人:残りの2人はトラブル時の対応要員)で施工することができ、作業時間は作業開始から7時間程度かかっていたものが4時間程度で完了することができました。

  また、低炭素型自己充塡コンクリートを使用したことによって、セメント単体の場合に比べCO2排出量を約3割抑制することができました。

 採用に当たっては、条件を満足する必要があり、(①自己充塡コンクリートに使用するフライアッシュ(石炭灰)は、安定した品質で安定的に供給できること②フライアッシュを使用した自己充塡コンクリートを製造できるプラントが近傍にあること③スライドセントル下部から自己充塡コンクリートを圧送して打設するため、圧力に耐えうる特殊なセントルを製造できること)今回の工事では三隅火力発電所から排出されるフライアッシュを使用しました。

インフラを技術で守る レーザーによる塗膜剥離 ウォータージェットによるコンクリートのはつり おまかせください 人々の「当たり前」を守る

「橋の計画と形式選定の手引」は設計実務の参考として活用

 −−土木学会では2023年5月に「橋の計画と形式選定の手引」を発刊しました。新設橋の予備設計や道路計画段階時点で様々な形式選定や、リスク管理、新技術の導入などを検討し、しかもプロセスの過程を残しておくことで、後工程に資する橋梁計画や予備設計となることを目指したものです。予備設計段階では、地質や住民との合意形成など不確定要素があり、かつ同時点での新技術についても有望ながら信頼性の点で断念することもありました。しかし、予備設計段階から実際の工事に入るまでは通常でも3~5年程度かかり、その間で所与の条件やより詳細な情報、新技術の信頼性も向上することから、議論の過程を残し、予備設計の最適案も無理に1つにしないことで、後工程の選択の幅を広げるようにしたことが最大のメリットです。同手引きの活用についても今後行っていくか教えてください

 門間 本手引き「橋の計画と形式選定の手引」については、橋の設計供用期間を100年とすることが道路橋示方書に明記され、持続可能な国土づくりを支える重要なインフラとしての橋のあり方が明確化されたことを踏まえ、橋の計画、形式選定を行う上で、構造物のリスク評価や新技術導入の検討等において、実務の参考とするべく作成された手引きとなっております。

 今後、実務を担う各事務所にも本手引きについて共有を図り、設計実務の参考として活用して参りたいと思います。

インフラを技術で守る レーザーによる塗膜剥離 ウォータージェットによるコンクリートのはつり おまかせください 人々の「当たり前」を守る

4,870橋、278トンネルを管理

建設後50年以上を経過した橋梁箇所数を占める割合は現在43%

 −−次に保全について教えてください。現在の管内橋梁・トンネルの内訳は

 門間 橋梁は全体で4,870橋(令和6年4月1日時点、橋長2m以上)、鋼橋1,096橋、RC橋901橋、PC橋1,441橋、溝橋1,430橋、その他2橋を管理しております。建設後50年以上を経過した橋梁箇所数を占める割合は、現在43%、10年後54%、20年後69%と老朽化が急激に進む見込みです。



 





 

 

 トンネルは全体で278箇所(令和6年4月1日時点)を管理しています。工法別の内訳は山岳(NATM)170箇所、山岳(矢板)103箇所、開削3箇所,シールド2箇所。建設後50年以上を経過したトンネル箇所の占める割合は、現在27%、10年後35%、20年後44%とこちらも老朽化が急激に進む見込みです。









 

 −−点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しく教えてください。また、一巡目と二巡目の比較や、損傷度が遷移についても教えてください

 門間 全体的に見ると国道2号、国道9号は距離的にも大きいので損傷箇所数はどうしても多くなります。トンネルは9号が多い印象です。山陽側は橋梁に損傷が多い傾向にあります。

 橋梁は2巡目点検結果をみると路線別では、国道54号、国道190号が健全度Ⅲの割合が若干高い傾向にあります。橋種別では環境の厳しいところに架けているため、鋼橋が他の橋種に比べて健全度Ⅲが多い結果が出ました。鋼橋の損傷は桁・支承に腐食損傷が多く、原因として防水・排水工不良、塩害が多く、伸縮部からの漏水により、鋼橋の桁端部の損傷が多くなっていると推定しています。1巡目点検の健全度Ⅰ・Ⅱ判定について2巡目点検でⅢ判定になった遷移状況として、中国地方整備局は5%程度で国土交通省(全国)5%とですので同様の遷移状況となっています。







 

 トンネルは2巡目点検結果をみると路線別では、国道375号で健全度Ⅲの割合がもっとも高く、国道53号、国道185号、国道2号で健全度Ⅲ判定の割合が多くなっております。施工法別では、山岳(矢板)が他の施工法に比べて健全度Ⅲが多い傾向です。最近ではほとんどNATMで矢板は昔のものが多いため、この結果となったと考えます。中国地方整備局管内のトンネルの変状傾向として変状は、9割以上で「材質劣化による変状」、「漏水による変状」に分類されるものとなっています。1巡目点検の健全度Ⅰ・Ⅱ判定について2巡目点検でⅢ判定になった遷移状況として、中国地方整備局は16%程度で国土交通省(全国)17%と比べほぼ同様の遷移状況となっています。











 

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被災後速やかに緊急車両の通行を確保できる補強の実施

 −−橋梁など耐震補強の進捗状況(耐震性能2)、および落橋防止装置の設置状況(全数および実施済み数)および2024年度の対策予定について教えてくださいまた、熊本地震や今回の能登半島地震に対応した耐震対策についても知見をもとにどのようなことが改めて必要になっていると考えているか教えてください

 門間 橋梁の耐震補強の進捗状況(耐震性能2)については、速やかな機能回復が可能な性能を目指す対策として、橋脚の補強や落橋防止装構造等を行っています。(中国地整管内:対象橋梁1,611橋、うち1,378橋が対策済み。2024年度は6橋を対策予定。)

 熊本地震や能登半島地震に対応した耐震対策としては、災害時の救急救命活動や復旧支援活動を支えるため、緊急輸送道路上の橋梁について、大規模な地震でも軽微な損傷に留まり、速やかな機能回復が可能となる対策を推進することが一番と考えており、落橋・倒壊を防止する対策に加えて、橋桁を支える支承の補強を行い、被災後速やかに緊急車両の通行を確保できる補強の実施が必要と考えています。(中国地整管内:緊急輸送道路上の橋梁1,611橋のうち、1,378橋が対策済み。)

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10年間でⅢ判定の補修を完了させ2032年度より予防保全に移行

 −−橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況について教えてください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。トンネルの点検状況、トンネルついて橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください。

 門間 中国地方整備局の予防保全に向けた対策では2022年度から10年間でⅢ判定の補修を完了させ2032年度より予防保全に移行するように計画をしています。

 橋梁は過去の遷移状況により、毎年55橋が遷移すると想定した計画において、令和5年度末実施実績では毎年平均68橋の目標に対して平均75橋と順調に補修が進んでいます。



 

 トンネルに関しても2022年度から10年間でⅢ判定の補修を完了させ、2032年度より予防保全に移行するように計画をしており、 過去の遷移状況により、毎年12箇所が遷移すると想定した計画において、令和5年度末実施実績では毎年平均14箇所の目標に対して平均15箇所とほぼ計画どおりに補修が進んでいます。

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