ICT施工StageⅡの積極的な取り組み

　−−経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ３年の実績と2024年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです

　門間　経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の実績ですが、2021年度が62橋（内、鋼橋39橋、Co橋23橋）、2022年度は49橋（内、鋼橋37橋、Co橋12橋）、2023年度は82橋（内、鋼橋51橋、Co橋31橋）となっております。2024年度の計画は67橋（内、鋼橋48橋、Co橋19橋）です。

　鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査はここ3年程度の期間においては（2021～2024予定）、5橋実施しております。疲労亀裂があった場合、ICR処理工法、ストップホール＋当て板補修で対策をしております。

　また、コンクリート桁・床版部において、剥離・鉄筋露出、うき等の損傷が発生しています。床版に損傷があった場合、原因が路面からの雨水等であれば、塗膜防水等で予防保全に向けて計画的に補修をする予定です。





　−−支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類を教えてください

　門間　今年度の施工予定数（実施含む）ですが、支承取替（鋼製支承、ゴム支承等）が5橋でジャッキアップ工法で行いました。ジョイント取替（鋼製、ゴム製、止水材取替等）に関しましては27橋で後付け工法で行いました。



　−−塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか、またその対策工法などを具体的な橋梁などを教えてください

　門間　塩害に関しましては、国道185号「棧道橋」（橋長414.1m　連続RC床版橋、3径間連続RC床版橋、4径間連続RC床版橋）のスプラッシュゾーンにあるRC桁に発生しておりました（1952完成　1994～1997年に電位防食　2021～2024年に犠牲陽極による電位防食）。最新点検（令和5年度）では　判定区分「Ⅱ」となり、主桁、横桁、下部工に補修材の損傷、床版にうきが出ておりました。

　アルカリ骨材反応につきましては国道29号「鶴尾橋橋側歩道橋」（橋長117.9ｍ　鋼4径間単純合成鈑桁橋、PC単純プレテン床版橋）で橋脚にＡＳＲによるクラックが発生しておりました（1980年完成　2013年にひび割れ注入　表面保護工による対策を実施）。最新点検（令和3年度）では判定区分「Ⅱ」となり、主桁の腐食が確認されました。

　−−2023年度の鋼橋塗り替え実績（橋数と面積）と、2024年度の鋼橋塗り替え予定（同）は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から出ている2014年5月30日に出た文書をはじめとした一連の文書・通達を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください

　門間　2023年度の鋼橋塗り替え実績ですが、30橋、14,223ｍ²となります。2024年度の鋼橋塗り替え予定は26橋、16,200m²です。溶射など新しい重防食の採用はございません。



　低濃度PCB廃棄物の処分については、2027年度末までの処分期限内に処分を完了するよう計画的に処分を行っているころです。



　橋梁補修工事等における鉛など有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業においては、特記仕様書へ「受注者は、工事着手前の既設塗装について、鉛等有害物が含まれていないか試験を行い、試験結果を監督職員に提出すること。なお、試験の結果、既設塗装に鉛等有害物を含有する塗料が含まれている場合は、労働安全衛生法等関連法令に基づき、適切に塗装の除去作業を行うこと。また、塗装の除去作業に伴い発生した塗膜は、廃棄物処理法等関連法令に基づき適切な処理を行うこと。」と明記しており、適切な措置を講じているところです。

　耐候性鋼材の橋梁ですが、中国地方整備局では、126橋の耐候性鋼材を採用した橋梁があり、2巡目点検結果では耐候性鋼材における健全度はⅠ・Ⅱ判定となっています。

　−−全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいます。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修もしくは更新（架替）、道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについても教えてください

　門間　近年の気候変動による土砂災害等が頻発化激甚化し、施設能力を超過する洪水が発生することを前提に社会全体で対応しなければならないと認識している。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修、更新（架替）についても、必要性を勘案し検討していきます。

　道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などの補強・補修については、道路区域外からの土砂流入等、近年の豪雨等における特徴的な被災が各所で発生しており、令和2年度に実施したレーザープロファイラ調査等で抽出した危険箇所を含め、法面保護工などの対策を実施しています。



　令和5年度の防災カルテ点検対象箇所は、中国地方整備局管内で3,039箇所。令和6年3月末現在で、要対策箇所は、452箇所あり、対策完了箇所は、カルテ監視箇所を含めて、107箇所となっています。

　−−新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について教えてください

　門間　岡山国道事務所玉島維持出張所において、インフラDXを意識した3次元空間情報の可視化、道路施設情報の一元化、閲覧機能の集約化による道路維持管理作業の効率化に向けたオープンソースの「3次元道路管理情報システム」の開発など、インフラDXの実装に向けた出張所業務の効率化・高度化に関する取り組みを行っているところです。

　−−特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの修繕事業等について。また権限代行で自治体が保有する橋梁などの構造物の点検や補修補強もしくは架替を行う事例の進捗中案件などについて教えてください

　門間　特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの修繕事業等については、現時点で進捗中案件等はございません。現時点で直轄診断・修繕代行など、進捗中案件はありません。

　直近の直轄診断・修繕代行は呉市の仁方隧道に「道路メンテナンス技術集団」を派遣し、直轄診断を行い、その修繕代行が令和5年に完了し、引き渡し会を行いました。

 

　−−新設・災害復旧・保全問わず、安全性の向上、業務の効率化やDXの活用事例について教えてください

　門間　ICT土工については、直轄工事の約86％で採用されるなど、現場へ浸透している状況です。DXの次のステップでは、土工等の工種単位で作業を効率化するだけでなく、建機から得られるデータにより現場の作業状況を分析し、工事全体の生産性向上を目指していきます。

　中国地整では、建設現場の見える化により更なる省人化を目指して、ICT施工StageⅡに積極的に取り組んでいます。具体的には、松江国道事務所の山陰道の道路改良工事で、建設機械とダンプトラックの稼働データをリアルタイムに収集し「見える化」することによって、状況の変化に応じた機械配置、ダンプトラック台数の見直しが可能となり、作業の効率化に繋がりました。













　松江国道事務所の令和5年度の実施事例は次の4工事です。令和4年度 出雲湖陵道路 湖陵IC改良工事（株式会社中筋組）、令和5年度 出雲湖陵道路 東神西地区改良工事（今岡工業株式会社）、令和4年度 湖陵多伎道路 二部地区外改良工事（松江土建株式会社）、令和4年度 出雲湖陵道路 東神西地区第2改良工事（株式会社フクダ）。

　また、令和6年度は、次の7工事でICT施工StageⅡを実施いたします。 令和5年度 福光浅利 道路福光地区第4改良工事（今井産業株式会社）、令和5年度木与防災 宇田地区第6改良工事（株式会社技工団）、令和5年度北条道路 国坂地区第2改良工事（美保テクノス株式会社）、令和5年度福山道路 長和第5改良工事（株式会社 増岡組）、令和5年度玉島笠岡道路 浜中地区東工区改良工事（大成建設株式会社）、令和5年度玉島笠岡道路 浜中地区中工区改良工事（株式会社フジタ）、令和5年度玉島笠岡道路 浜中地区西工区改良工事（株式会社熊谷組）

　鋼橋工事では、工場製作にあたり、2次元の図面を読み取り、自動原寸システムに手入力していました。一方、詳細設計では、自動設計システムが使われており、この間の連携が課題となっていました。先般、日本橋梁建設協会と建設コンサルタンツ協会とが設計段階と施工段階のデータ連携実装の共同宣言をしたことからデータ連携の開発が進みました。









 

　中国地方整備局では、「福光・浅利道路2号橋鋼上部工事」と「笠岡バイパス入江高架橋第2鋼上部工事」において、鋼橋の設計から工場製作へのデータ連携の試行を実施しました。この取り組みは、全国で2件の試行工事（中国・福光浅利道路2号橋、四国・津田高架橋）に中国地方整備局独自の1件（入江高架橋）を加え、3件で試行されていたものです。



　自動設計システムから自動原寸システムに連携する中間ファイルを自動作成するシステムを開発することでデータ連携が実現し、自動原寸システムのデータ作成の時間が従来に比べて1割弱（約20時間）効率化することができました。今回の試行により、判明した部材定義等のシステム改善を行えばさらに3割程度（約90時間）の効率化が図れる見込みです。今後はこの試行を継続し、日本橋梁建設協会と建設コンサルタンツ協会のシステムの改良にフィールド提供で協力していく予定です。

−−ありがとうございました