Interview

国土交通省中部地方整備局 佐藤寿延局長インタビュー

2025.04.23

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国土交通省
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災害にはリダンダンシーの確保が重要

災害にはリダンダンシーの確保が重要

ITを使用したソフト対策も有効活用

 −–近年、水害による河川氾濫や土砂崩壊のリスクも無視できません。こうした状況に対し、道路や河川の損壊を防ぐため、どのような予防保全的対策を行っていくべきとお考えでしょうか。ハードウェア対策ソフトウェア対策なども含めて教えてください


 佐藤 雨の量を従来よりも1.1倍くらいに想定して河川整備計画を作り直していますが、全ての川幅を広げていくというのは現実的には不可能で、用地買収の面から考えても難しいと考えており、増えた雨の量をどこかに貯めなくてはならないというのが、温暖化の対応策だと考えています。当然川の能力を高める努力は最大限するのですが、それにも限界があります。ダムで貯める地域もあれば遊水地等で貯める地域もあるのでそれぞれの地域特性も加味して対策をしていきます。例えば木曽川はV字谷が多くあり、ダムで水を貯めることが向いていますが、長良川はV字谷がほとんどないので遊水地で対応しています。




新丸山ダム



設楽ダム


長良川における遊水地整備


 道路に関してはリダンダンシーの確保が重要だと考えています。1本の道路を強くすることに加えて、逃げ道を作り、災害に備え、ネットワークにすることによって、一つが壊れても到達できるようにした方が良いと考えます。様々なルートを作って複数のネットワークを持つこと、それが唯一できないのが半島部で半島部にはしっかりした軸が必要だと考えます。


 ソフト対策に関しては、水害はリードタイムがあるのでこれをいかに有効活用するかどうかということは重要な点になります。予測精度と観測精度を上げ、水位観測をしっかり行うことが重要であり、2016年には水位計のない河川付近の介護施設で避難ができずに、9人の方が亡くなったことがありました。現在、危機管理型水位計によりコストが大分下がったため、これまでの水位計8千台弱に加え、危機管理型水位計が9千台以上設置され、観測箇所が倍に増えており、様々なところで観測できるようになりました。今後、浸水センサを管内に設置しようとしています。様々な場所で観測し、ビックデータ化してリードタイムを使って、安全に避難していただくということがソフト対策だと思っています。また、そのような観測や情報の共有がスマートフォンなどで個別にできるような時代がそのうち来るのではないかと思っています。


 水道行政が中部地方整備局に移管されましたので、水道メーターの使用量を通信で自動に送れるように数年でなるかと思うのですが、メーターに加速度計をつけたら地震の詳細なデータも取れるようになると思います。ITの力を借りると、「どの地域の地形が弱くて揺れそうだ」というデータを収集することが可能になるので防災につながると考えます。

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被害後、スピード感のある復旧を

事前復興計画の作成が必要

 −−熊本地震や、能登半島地震の記憶も新しいところですが、こうした地震災害の備えとして、どのような対策をされていますか?


 佐藤 津波はリードタイムがあるので津波が起こった際にこれを活用して対応をすること重要です。地震が起こってから時間勝負の世界です。津波が直後に押し寄せリードタイムがとれない伊豆半島の西側や志摩半島では人口の半分が亡くなってしまうような被害が出ると想定されています。

 中部地方整備局の管内でも東日本大震災のように大変な被害が出るであろう地域がいくつかあります。いち早く復興させるためには事前の復興計画が必要だと考えています。地震が起こってそこから議論をはじめると時間がかかり、議論している間にその地域から人がいなくなってしまうこともあります。事前に復興計画を立て、地域に津波が来た場合、嵩上げをするのか、移転をするのか等を事前に決めておけば、被害の後に復旧が遅れることなく、速やかに嵩上げの工事を始めることができます。現在、管内では岐阜県で1箇所静岡県で2箇所事前の復興計画を作っているところがあります。その他の地域も高い津波が来ると想定されているところは事前の復興計画を作っておくべきだと思います。

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メンテナンスエキスパート(ME)の養成

MEが中核となって活躍できる環境を整えることが重要

−−基礎自治体の財政力の低下とインフラの老朽化が進んでいます。今後の傾向や基礎自治体のインフラマネジメントの保全支援について、整備局として行っている効果的施策や新しい取り組みなどがあれば教えてください

 佐藤 財政的にも人員的にも実力がある自治体は問題ないでしょうが、人口が減少しているような小さな自治体などは今後メンテナンスが厳しくなってくるだろうと感じます。岐阜大学にMEといってメンテナンスエキスパート、いわゆる高度な技術を持つメンテナンスの専門家を1年かけて養成するプログラムがあります。メンテナンスエキスパートを養成する大学は長崎大学、山口大学、愛媛大学など全国でも数少ないですが、その分野のリーダー格的立ち位置となります。中部地方整備局の職員もこの講座には毎年何人か受講しております。当然民間の会社の方も来ています。そこで養成されたメンテナンスのエキスパートらが各地域で活躍できる環境を整えてあげることが重要だと考えております。

メンテナンスエキスパート(ME)の意義


 維持工事は手間がかかります。市町村では維持工事だけで年間30本くらい発注します。発注する側も受ける側も事務作業が大変ですので、地域インフラ群再生戦略マネジメントを活用し、お互いの生産性を上げていくことが必要ですし、ある程度のところまでは受注者に裁量権を与えるなどをやっていかないと地方の維持修繕は回っていかなくなってしまうと思います。市町村の養成したメンテナンスエキスパートが中核となって取り組んでいければと考えます。


メンテナンスエキスパート(ME)の活用

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民間を含め対応能力をどう高めるかが重要

弱部を洗い出して優先順位をつけて対策

 −−八潮で崩落事故が起こりましたが、全国どこで起こってもおかしくないという状況だと思います。自治体間の連携などはいかがでしょうか?

 佐藤 自治体間の連携といった点で見ると何か事故が起こった時に技術力を持っている自治体にみんなが寄りかかってしまうことが課題だと思います。もし大きな災害が起こり、全てを一部の市などが背負いきれるかというと、それは無理だと思うので、いかに民間も含めて対応能力を高めていくかということが非常に重要だと思います。

 管内を見ていても、下水道の歴史は名古屋市が112年、岡崎市も先日100年を超えました。その技術力をどのように維持していくのかというのは重要だと考えます。先日、デジタル甲子園で豊田市のDXによる点検技術が賞をとりました。今までは大きな自治体しかできなかったようなこともデジタルの力を借りれば中小は厳しいとしても次のクラスの自治体はできるようになってくると思うので、技術開発を進めながら、全体の底上げを図っていくことが必要だと考えています。

  −−これを受けて何か点検を行うことはありますか?

 佐藤 南海トラフ地震が来たときに大規模断水が発生すると想定されています。中部地方全体で1,000万人が断水の影響を受けると言われているので、まずはこの1,000万人が断水したらどうするかということを考えなくてはいけないため、能登半島地震の後に中部圏大規模断水協議会という組織を作って議論していきます。

 あとは弱点をなるべくなくすということですね。先ほどもお話ししましたが、リダンダンシーがないところは対応をどのようにするかということを早めに考えて手を打つことが必要だと考えます。

 例えばですが今年度、昨年度は補正予算で、離島の海底送水管に大きく補助を行いました。南海トラフ地震が来たら離島に水が行かなくなる恐れがあります。離島は井戸がありません。このように、今から弱部を洗い出して、優先順位をつけて対策をしていかなくてはいけないと思います。

 −−年数によって補強をするなども?

  佐藤 そういう意味においては、単に古いから補強するというよりは、弱部でリダンダンシーがあるかどうかという視点で優先順位を決めるということになってくるのではないかと思います。先ほどの離島は送水管が1本しかないので、そのルートが途切れたら壊滅的な状況になってしまいます。送水管をもう1本入れてリダンダンシーを確保する等、弱いところを手当てしていくということをやっていかなくてはいけないと考えています。

 年数が古いものの補強ももちろんしていかなくてはいけませんが、まずは起こる事象に対して想定されることを考え、リダンダンシーの確保が十分でないものから順番に行なっていくことを考えていくことが重要だと考えています。

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