国土交通省中部地方整備局 佐藤寿延局長インタビュー
新しい技術をいち早くどのように導入するかが肝心
生産年齢人口減少のため自動化は急務
新しい技術をいち早くどのように導入するかが肝心
−−国交省ではDXの推進・活用を大きなテーマとしておいでですが、新設や災害復旧はもちろん、維持管理業務においても、点検作業の効率化や立会の効率化、工事や点検などの安全向上の面(無人化技術など)など用いている取り組みを教えてください。
佐藤 部下にはいつも話をしているのですが、今後人口が減少し、特に生産年齢人口の減少が顕著になり、3人で行なっている仕事を2人で行うような時代が必ずやってくると思います。それを支援してくれるのが、DXの技術であると思います。
自動車の工場等はベルトコンベヤー方式で、大量生産が可能なため、自動化は比較的容易ですが、建設業は同じものが2つとないような世界ですので、自動化の難易度が高かったのではないでしょうか。しかし、多品種少量生産でも自動化ができる時代ですので、そういった取り組みを行なっていくことが必要だと考えています。
まずは繰り返し作業の多いもの、作業量が多いものから自動化を進めていくことができればと考えています。条件的に言うと、ダム、トンネル、ケーソン、この3つからではないでしょうか。
2つのダムを鹿島建設と大林組にそれぞれ施工していただいており、現在技術開発が進んでいるコンクリートを打つ工程に加えて、コンクリートの製造まで一連の全工程が自動化されるような取り組みが進むと考えています。そのうえ、生産量の管理等をAIで行えば、おそらく24時間人も介さずに現場を動かすことも可能だと思います。働き方改革という意味においても大きい成果をあげていくことになると考えます。
新丸山ダムのDX
そういった意味でも2つの大きなダム事業の中で技術開発を官民連携しながら進めていければと思っています。先日も一部トンネルで自動ドリルジャンボを使ってもらった現場があり、そのような繰り返し作業が多い現場が割とあるので、技術開発をしながら、それをまた違う技術に応用していくような形で、省力化と省人化をしっかり行なっていくということが、一つの大きなポイントになってくるのではないかと思います。
現場の管理に関してはドローンが面白いです。徳山ダムのあたりに砂防施設があり、ダム湖もそうなのですが、砂防施設も人が点検することが大変で、往復十数kmあるところを船も使いながら歩いて向かう場合もあり、非常に非効率ですし、わざわざヘリコプターを借りて飛ばすのもコストがかかります。
そのような背景もあり、ドローンを飛ばして点検することはとても効率的だと思いました。しかし、点検となると2、3時間ドローンに飛んでもらわなくてはなりません。長時間飛ぶドローンをつくらなくてはいけないということで、一昨年数時間飛べるドローンが開発されました。普通のドローンはバッテリーで飛びますが、ガソリンエンジンで発電しながらいわゆるハイブリッドカーと同じ仕組みで飛ぶドローンです。完全無人化飛行はレベル4というのですが、航空局は一昨年の12月にレベル3.5という基準をつくってくれて、通信しながら遠隔で監視し、人がいなければその上を飛んで良いという基準ができました。しかし、この辺の山間は携帯が通じません。携帯が通じないと遠隔で操作が不可能なのでどうしたものかと思っていたら、今度はStarlinkがスマホサイズに小型化し、ドローンに積めるようになります。
これらにより、人は事務所にいて、ドローンが映してくる映像を見ながら、ドローンが現場を回遊して帰ってくることができるようになります。3月14日には、長島ダムのダム湖の周り約17kmのコースで飛行試験を行いました。半自動のレベル3.5という基準は映像を監視しながら人を避けて飛ばす必要がありますが、ダムや砂防施設等には基本人はいないですから、人の代わりにやってもらうことができます。そうなると、今まで行けなかったところの点検ができるようになるので、今度は災害のときはそれがヘリコプターの代わりになるのではないかと。3時間飛べればヘリで見てこなくてもドローンに映像を撮らせることができるので、災害の対応能力も高まります。

長島ダムでのドローンによるレベル3.5の飛行試験
今まではボートを出して、現場に行って人の手で管理していたものが、部屋から映像を見て、崖崩れが起こっていないか等がわかります。DXやデジタルだとか、そのような新しい技術をどうはっきりと受け止めるかということがとても重要で、技術開発はいろんな分野で進んでいるので、それをいち早くどのように導入するかということが大切です。
地域特性を活かしながら魅力的な地域へ
官民連携しながら街を活性化
−−最後に今後の課題と展望などを教えてください
佐藤 3大都市圏を比べると、中部圏だけ人口が減少しており、中部地方全体だと年間2万5,000人くらいの減少、愛知、三重、岐阜の3県に限っても1万1,000人くらい減少しています。どのように人口減少をストップさせるかというのが大きなテーマです。都市の魅力をどのように高めるかというのが課題としてありますが、最近再開発のコストがどんどん上がってきているので、建設コストが大規模な投資に踏み切れない部分があります。その中で官民連携しながらどのように活性化させていくのか。インタビューの冒頭でもお話ししましたが、特に愛知県は地方分散型なので、それぞれの都市が魅力を持った都市として、街づくりができないかなと思います。
また、戦国時代にたくさんの偉人を輩出した地域ですので、そういう意味では歴史的資産も多いのですが、正直PRできているかというと決してそうではないと思います。中部国際空港だけがコロナ前の水準に戻っていないのです。観光の面でもまだ課題があり、それに向けたプロジェクトもこれから支援していくことが中部地方整備局の仕事なので、力を入れていかなければならないと思っています。
−−ありがとうございました