Interview

NEXCO西日本 橋梁8,418橋、トンネル906チューブを管理

2024.05.16

大規模更新と耐震補強を着実にこなしていく

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”誰でも、どこでも”使えるESCONを目指しています 超高圧水を安全に 複合型ケイ酸塩系鉄筋防錆材「リフレ防錆コートZN レックス工法」

UHPFRCで床版延命化、新たな知見にも着手

床版延命化を図るためUHPFRCの採用も検討

 ――UFCを用いた床版やUHPFRCを用いた上面補修について

 小笹 採用を始めています。宝塚IC~神戸JCTの中国道の有馬川橋でUFCを上面20mmに用いた耐久性の高いプレキャストPC床版による更新を行っています。ここは大林・大豊・東急・東洋JVです。


中国道有馬川橋で採用するでUFCを上面20mmに用いた耐久性の高いプレキャストPC床版概要図


 また、九州道の宝満川橋では、プレキャストPC床版同士の継手部にUFC を採用しています。


プレキャストPC床版の継手部にUFC(スリムクリート)を用いている


 UHPFRCによる上面補修は関西支社管内の中国道で採用を予定しています。 同材料による補修については、規制時間や路面嵩上げの制約や、下部工の負担軽減等の観点から都市部の路線が対象となりますが、今後採用について検討していきます。

高機能養生剤 クリーンセイバー 高強度繊維モルタルを用いた橋梁用排水溝 YNタフドレーン 急速施工が可能な新形式のプレキャスト合成床版橋

新たな知見 切土のり面をトンネル構造に改変するリニューアル工事を予定

 舗装路盤の高耐久化も重要な対策事項

 ――『新たな知見』に関しては

 小笹 これまでの点検結果や維持補修、リニューアル工事等の経験から得られた知見について、他の高速道路会社とも連携し、蓄積しております。大きく5項目に分けられており、NEXCO3会社で約1兆円の事業規模で、当社の事業費は2,556億円です。橋梁分野はPC桁の架替えや、グラウト充填不足が疑われる箇所のグラウト再注入などがあり、現地調査の結果を踏まえながら状態の悪い箇所から順番に更新・修繕していくことになります。


新たな知見の項目と投資額

PC鋼材の損傷状況


 当社で特徴的で、かつ早急に着手したいのは切土のカルバート化です。平成8年に開通した山陽道・三木JCT~神戸西IC間の木津地区に、変状がどうしても収束しない切土のり面があります。これまでグラウンドアンカー等による対策を繰り返し行ってきましたが、変状が収まっていません。そこで、のり面及び車道全体を押え盛土とし、道路構造をカルバート構造のトンネルへと抜本的に変更するリニューアル工事を計画しています。


山陽道・三木JCT~神戸西間の木津地区ののり面


 ――NEXCO東日本が上信越道蓬平で行っている対策と似ていますね

 小笹 そうです。対面通行規制などを行い、全面通行止めを極力せずに事業を進めていかねばならず、かなり長い期間がかかると思います。
 また、舗装路盤の高耐久化も重要な対策事項です。長年にわたる交通荷重により、上層路盤より下方部分にひび割れが発生した場合、表層・基層までの補修では、またすぐに舗装表面にひび割れが発生してしまうため、下層路盤まで含めた形での舗装路盤の更新及び高耐久化が必要になります。今後、速やかに調査を行い、状態の悪い箇所から対応していく予定です。

既存塗膜にPCB含有する橋梁は残り15橋 工事は発注済み

 塗膜除去方法は剥離剤の他に循環式ブラスト工法などを用いる

 ――PCBや鉛などの既存塗膜の除去方法や塗装の塗り替え方法および規模、耐久性の高い防食方法の採用について

 小笹 PCBを含んでいる既存塗膜が未だ除去されていないのは15橋あり、残面積は169,000㎡となっています。すべて関西支社管内であり、他支社はすべて施工を完了しています。該当する15橋は既に工事発注済であり、現在施工中です。完了見込みは令和8年2月の予定です。


塗膜除去状況と塗替え塗装施工状況


 施工方法は、国交省や厚労省などからの指示に基づき、法令に則って施工しています。既存塗膜を除去する際は、塗膜片などの作業場外への漏洩防止に努めています。例えば足場の安定性を高めるために先行床施工式吊足場(クイックデッキ)を使っており、さらに難燃性のシートを用いて二重三重の養生を施しています。さらに場内においては負圧の集塵機の設置を義務付けています。当然、受注者に対して、作業員の安全教育だけでなく、鉛中毒やPCBの有害物質対策といったことへの教育の実施と、適切な保護具を着用させる、あるいは作業場外に出るときのエアシャワーなどによる洗浄設備の設置、着用している使い捨て保護着の適切な廃棄などを行うように指導しています。

 塗膜除去方法については従来の塗膜剥離剤による除去方法のほかに、技術提案として、循環式ブラスト工法などを採用するケースも出てきています。
 鋼橋の防食方法は、重防食塗装系を標準としています。一方で、伸縮装置からの漏水や風通し等の周辺環境から腐食要因を完全に排除することが困難な桁端部など、環境条件・使用条件から長期耐久性を有する必要性のある箇所については、予防保全の観点から長期防食性に優れた金属溶射を採用し、長期的維持管理やライフサイクルコスト(LCC)の低減およびミニマムメンテナンスに取り組んでいます。

のり面・斜面の維持管理 レーザプロファイラーによる調査

 高エネルギー吸収タイプの土石流出防止柵を活用して災害の拡大を防ぐ

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、近年の災害の特徴や、それらを未然に防ぐ対策について教えてください

 小笹 昔は雨による被害は台風による影響が多かったように思いますが、近年は線状降水帯の影響を強く受けています。平成30年豪雨も記憶に新しいところです。

 昨年は6月~8月までの間、毎月土砂災害が発生しました。特に令和5年7月10日には大分道の高山トンネルで、8月15日には京都縦貫道の坊口トンネル・内久井トンネルにおいて、高速道路区域外で発生した土石流が高速道路に流入し、大きな被害を受けました。

 様々な取り組みを行う中で、災害時にはレーザプロファイラーによる調査を行い、事前に同調査で取得した地形データを活用して、その比較から被災状況の把握等を的確に行っています。
 当社管内については、全てのレーザプロファイラー調査は完了しています。同技術によって取得したデータをスクリーニングし、今後はどこを対策すべきか、現地調査も行いながら土石流対策の優先順位を立案し、対策を進めていきたいと考えています。


高山トンネルでのレーザプロファイラー調査実施写真例


 ――こうした土砂災害への対策が必要な箇所はNEXCO西日本全体で何か所ぐらいあるのでしょうか。また優先順位が高い箇所はそのうちの何割ぐらいを占めているのでしょうか

 小笹 必要な箇所数は、高速道路への影響評価が完了していませんのでまだ示すことはできません。優先順位については、高速道路への影響評価が完了した後に優先順位を設定します。

 ――実際にはどのような対策を施すのですか

 小笹 土石流は高速道路管理区域外から来るため、区域外の土地所有者と協議しながら対策を促すことが基本ですが、対象箇所も多く、現実的にはなかなかできなかったわけです。
 これからは管理区域境に防護設備等を設置していく予定です。平成30年の広島呉道路で発生した土石流災害の復旧工事で用いた、高エネルギー吸収タイプの土石流出防止柵をイメージしてもらうと良いかと思います。


大分道の高山トンネル 、高エネルギー吸収タイプの土石流出防止柵で対応


 ――こうした優先順位の計画立案や対策の進捗はどのように進めていきますか

 小笹 優先順位の検討や予算の確保はもう少し時間がかかります。ただ、対策手法としては高エネルギー吸収タイプの土石流出防止柵が、現状ではかなり有効であると考えているため、できるだけ早く対策を進めていきたいと考えています(同タイプの土石流流出防護柵は34箇所、約1300mで設置済み)。

Auto CIMAやJシステムでコンクリート構造物の点検業務を支援

 さらに鋼橋向けに動画撮影した画像で点検・解析する技術も4月から実装

 ――新技術・新材料やコスト縮減策について、またDXの適用について

 小笹 点検支援技術の充実に力を入れています。

 まず、『Auto CIMA』は、橋梁に接近することなく、高解像度画像を得ることで点検業務を支援する技術です。コンクリート平面を対象に、パソコンで撮影範囲を指定することで自動撮影することができます。高解像度カメラで撮影される画像は0.5mm/画素(0.2mm幅のひび割れが自動抽出できる精度)となります。また、最大70m程度まで離れた位置から撮影できます。
 現地では、撮影画像の簡易自動貼り合わせ(約1分)を実施し、撮影漏れがないことを確認できます。さらに、室内では色ムラ、詳細補正を行い、撮影画像を1枚の大きな展開画像に自動貼り合わせして、点検員が作成する変状展開図に相当する成果品を得ることができます。さらに、詳細貼り合わせ画像に対し、ひび割れ等の変状(ひび割れ、鉄筋露出、はく落後、エフロレッセンス)をAIによって自動検出できます。また、検出した変状はCAD図(DXFファイル)に変換することも可能です。

 『Jシステム』は、赤外線カメラを用いて、コンクリート構造物内部の変状(うき・剥離)を自動検出できるシステムです。たたき点検の必要性の可否に関する事前のスクリーニングをしっかりと行うことができます。同システムは、温度差を利用して計測するため、これまでは気温が低い夜間しか使うことができませんでした。しかし、このほど改良版が開発され、偏光フィルターを利用することで、昼間でも計測できるようになりました。


開発カメラの技術詳細

開発カメラによるJシステムの変化


 加えて、可視カメラと赤外線カメラを一体化し、1回の撮影で可視画像・赤外画像を同一画角で同時に取得することができるようにしました。これにより、熱反射除去による的中率の向上に加えて、解析作業の多くが自動化することができます。さらには、AIによる変状自動診断機能を搭載したことにより、解析業務が効率化されます。


点検時間や解析時間の短縮


 さらに鋼橋を点検対象として、ドローン搭載カメラによる撮影動画を用いて床版の変状や、塗膜の劣化やさびや腐食の発生状況の点検が行える手法を確立しました。静止画像による点検は、撮影した写真の貼り合わせ技術の確立が、効率化の課題となっていました。コンクリート橋については目途がついていますが、複雑な形状を有する鋼橋では、なかなか難しかったのですが、動画で撮影し、その結果をもとに室内等で画面を見ながら点検を行い、貼り合わせの手間をなくした画期的な手法です。令和6年4月のNEXCO3社の点検要領改訂にも盛り込みました。



鋼橋を点検対象とした、ドローン搭載カメラによる動画撮影

 これまで足場をつけて点検していましたが、それも不要になり、大幅なコスト縮減や作業の効率化が可能となります。同手法は西日本高速道路エンジニアリング関西㈱が主体となり、他の当社グループエンジニアリング会社の協力も得て確立しました。

 こうした新たな技術を活用しつつ、業務効率化を図りながら、安全・安心な高速道路サービスの提供を行ってまいります。

 ――ありがとうございました

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