沖縄県 県道20号線(泡瀬工区)アクセス橋梁が来年度上部工閉合へ
INDEX
県道20号線(泡瀬工区)アクセス橋梁ではPC桁製作にショートラインマッチキャストを採用
佐敷・玉城IC橋の上部工が進捗
石垣空港線は244mのバルブT桁である高山橋が進捗
――今年度および来年度着工および施工中・完成予定の橋梁・高架・トンネルは
砂川 南部東道路では佐敷・玉城IC橋の上部工整備に取り組んでいます。橋長84m、幅員7.2mのPC3径間連続ポステン箱桁橋です。
幸地インター線はBランプ橋の上部工に取り組んでいます。同橋は橋長68.6m、幅員6mのPC3径間連続ポステンホロー橋です。なお、そのほかのAランプ橋、Bランプ2号橋とDランプ跨道橋の高速道路直上部は完了しております。
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幸地インター線の整備状況
石垣空港線は、高山橋も上部工整備を進めています。今年度は桁製作を予定しています。同橋は橋長244m、幅員7.5mのPC6径間連結バルブT桁橋です。
高山橋整備状況写真.jpg)
石垣空港線は高山橋の上部工を施工中だ
――設計中、設計済みおよび今後建設予定の橋梁は
砂川 南部東道路では、今後、仲間高架橋と高平高架橋の整備を予定しています。仲間高架橋は橋長310m、幅員7mで、上部工形式はPC4径間連結ポステンホロー(116m)+PC5径間連結ポステンバルブT桁橋(194m)となっています。高平高架橋は橋長393m、幅員7mのPC7径間連結ポステンバルブT桁橋(268m)+PC4径間連続ポステンホロー桁(125m)を予定しています。
県道20号線(泡瀬工区)アクセス橋梁ではPC桁製作にショートラインマッチキャストを採用
ASR、塩害対策にフライアッシュコンクリートを使う
――特徴ある形式あるいは工法適用(基礎、下部、上部、床版問わず)の橋梁・高架橋、トンネルについて(路線名、橋長(延長)、形式、架橋地(施工地)、着工年次、完成年次、進捗状況)、また鋼・コンクリート形式問わず、防食などLCC縮減の手法について(鋼橋の重防食(塗装・溶射・塗装周期延長鋼材やステンレスクラッド鋼、コンクリート橋のプレキャストセグメント化の徹底、エポキシ樹脂塗装鉄筋や表面保護など)
砂川 沖縄は気象条件や海象条件が他県とは異なるため、塩害や紫外線等による塗膜の劣化が著しく、塗装塗替え期間が他県より短いなどの多くの問題を抱えています。国と県が協力して作成した「沖縄地区鋼橋防食マニュアル」に準拠して、内地より手厚く鋼橋の防食を行っています。
また、コンクリート橋についても塩害のほか、海砂に含まれる反応性鉱物による遅延膨張性ASRや石灰岩に混入した安山岩によるASRも確認されていることから、伊良部大橋や泡瀬工区など重要な構造物には、予防措置として劣化抑制に有効であるフライアッシュコンクリートの利用を推進し、耐久性向上を図っています。
例えば、県道20号線(泡瀬工区)アクセス橋梁では、セグメント桁製作設備において、人工島内に2基の桁製作設備を設けて、すでに製作されたセグメントの桁の妻部を型枠として新セグメント桁を1ブロックずつ製作するショートラインマッチキャスト工法を採用しています。


ショートラインマッチキャスト工法
PC12径間連続箱桁においては、トラス構造の架設桁により、橋脚(柱頭部)から左右ににバランスを取りながら架設するバランスドカンチレバー工法を採用しました。
さらにPCポステンホロー桁部につきましては、架設径間に予め架設桁を据え付けて。引き出し軌道でPC桁を架設するダブルガーダー工法を採用しています。


ダブルガーダー工法
PC橋や下部工の防食については、エポキシ樹脂塗装鉄筋やエポキシ樹脂被覆PC鋼材の採用、コンクリートの緻密化、ASR抑制、打設時のワーカビリティ―の向上を期待して、Jパワーの石川火力発電所で産出されたフライアッシュを用いたコンクリートを採用しています。また、PC箱桁の下床版部については、ひび割れ抑制対策として、炭素繊維ケーブル補強筋を採用しました。
現在上部工の工事を進めており、桁架設後に支点上で上下線の桁相互をRC構造で剛結して耐震性を確保し、上部工の施工が完了となります。



エポキシ樹脂被覆PC鋼材(上)やエポキシ樹脂塗装鉄筋(下)の採用
――これらはいずれも砂川さんも担当された伊良部大橋の知見を援用したと言えますね。伊良部大橋は、ポストスライドでまだ調整を続けているそうですね
砂川 伊良部大橋でポストスライド方式を採用したのは、支承や下部構造に作用する水平力の低減に加え、支承の面積・高さを抑えコスト縮減を図ったものです。ただし、何しろ長大な橋梁ですので、計画どおり完全にポストスライドすることはできず、今でも調整を行っています。ただし、橋の機能に影響を及ぼしているわけではありません。

スライド前とスライド後の沓

ポストスライドを行うためのジャッキの取付状況
――泡瀬工区は、干潟などもあり、環境にも配慮しなくてはならない現場ですが
砂川 仰るとおり、事業箇所の周辺には干潟や藻場が分布しています。干潟にはクビレミドロ(海藻、環境省RL絶滅危惧ⅠA類)やトカゲハゼ(魚類、同絶滅危惧ⅠA類)などが生息しており、トカゲハゼの行動が活発となる産卵期の4~7月には海上での工事を行わない事、浮遊物質量SS=7、11㎎/Lを水質基準とするなどの環境監視調査を実施しながら施工を進めています。
型枠セットに3DTS、コンクリート締固めに特殊バイブレータを採用
――泡瀬工区のPC橋で技術的に工夫した点をもう少しお話しください
砂川 同橋梁は総合評価方式による入札を行っており、技術提案により新技術・新材料を採用しています。
例えば、セグメント桁製作時の型枠セットに当たって、3Dトータルステーションを活用しています。また、粘度の高い高強度フライアッシュコンクリートを締め固めるために、特殊なバイブレーター(スパイラル型内部振動機)を採用し、打設時の充填管理のために、充填検知センサーを用いました。


3Dトータルステーションを用いて型枠位置を計測・管理

粘度の高い高強度フライアッシュコンクリートを締め固めるために、特殊なバイブレーター(スパイラル型内部振動機)を採用
セグメントは、保水養生マット、テープを用いて養生しています。
さらにセグメントは3Dレーザースキャナーによる高精度で立体的なセグメント桁の出来形計測、3D形状管理システムによるセグメント桁接合後の全体形状のシミュレートを実施し、品質の向上に努めました。加えてセグメント桁架設時には、橋梁桁変位自動計測システム(編注:計測ネットサービス)を用いたリアルタイムな位置の計測、管理を実施しています。



セグメントは3Dレーザースキャナーによる高精度で立体的なセグメント桁の出来形計測、
3D形状管理システムによるセグメント桁接合後の全体形状のシミュレートを実施
――トンネルの建設の予定はないのですか
砂川 国道331号の大宜味村内で予定していますが、小規模なものとなっています。
県内全体で698橋、23トンネルを管理
Ⅲ判定の橋梁は63橋
――次に保全について聞きます。現在の管内橋梁・トンネルの内訳は
砂川 沖縄県では、2024年度末で698橋を管理しています。橋種別では鋼橋が115橋、PC橋が273橋、RC橋が77橋、ボックスカルバート(以降、BC)が233橋となっています。
建設年次別では20年未満120橋、20年以上30年未満147橋、以後10年ごとに152橋、168橋、50年以上が103橋、不明橋が7橋と30年以上が400橋を超える構成となっています。
延長別は15m未満が336橋と多く、15m以上100m未満が272橋、100m以上の長大橋も90橋あります。伊良部大橋、来間大橋、池間大橋の宮古島3長大橋や瀬底大橋、浜比嘉大橋、ワルミ大橋など離島架橋が多いのも特徴です。都市部では那覇大橋などの架け替えを行わなくてはならない長大橋も存在します。最長は宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋で橋長は3,540mに及びます。同橋は無料通行できる橋梁としては日本最長を誇ります。

浜比嘉大橋 / 瀬底大橋(いずれも井手迫瑞樹撮影)

古宇利大橋(井手迫瑞樹撮影)
トンネルは、23箇所管理しています。工法別では在来矢板工法が1箇所、NATMが21箇所、開削工法が1箇所です。建設年次別は20年未満が12箇所、20年以上30年未満が6箇所、30年以上40年未満が5箇所と比較的建設年次は若くなっています。
延長別は100m未満が3箇所、100m以上500m未満が15箇所、500m以上が5箇所で、最長は於茂登トンネルの1,174mです。
――点検を進めてみての管内各路線の橋梁の劣化状況について詳しくお答えくだ下さい(橋種(鋼、PC、RC)、部位(桁、床版、橋脚、地覆、高欄など)ごとの損傷傾向とその理由についてお答えください。
砂川 県管理橋梁698橋のうち、架け替え中の1橋を除いた697橋で点検を行った結果、緊急措置が必要なIV判定の橋梁はありませんでしたが、早期の措置が必要なⅢ判定の橋梁は63橋、予防保全の措置が望まれるⅡ判定の橋梁が300橋ありました。
橋種別の劣化状況は、鋼橋は塗膜の防食機能の劣化や鋼材の腐食、コンクリート橋はうき、ひび割れ、はく離による鉄筋露出が主な損傷となっています。
部位別では、桁はうき、ひび割れ、はく離による鉄筋露出、床版の剥離による鉄筋露出、うき、変色劣化、橋脚はひび割れやうき、支承は腐食や機能障害が損傷種類の半数以上を占めています。本県は四方を海に囲まれており、高温多湿で台風の常襲地帯であることから、塩害を受けやすい厳しい自然環境であり、それがこうした劣化・損傷を助長していると考えております。
――同様にトンネルについては
砂川 トンネルは県管理23箇所の内、Ⅳ判定は無く、Ⅲ判定が4箇所、Ⅱ判定が16箇所、Ⅰ判定が3箇所となっています。
どの工法でもひび割れが主な損傷となっており、在来矢板工法やNATM工法で作られたトンネルでは漏水も確認されています。
部位別では、覆工コンクリートはひび割れや目地からの漏水、坑門はひび割れが主な損傷となっています。外力によるものが要因と考えています。





