Interview

沖縄県 県道20号線(泡瀬工区)アクセス橋梁が来年度上部工閉合へ

2025.10.31

那覇大橋、大保大橋、浦内橋の3長大橋を架替えへ

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浦内橋は仮橋を施工中、那覇大橋は上流側の架替えが進む

下水道 比較的健全、大口径の幹線はない

圧送管の点検手法を検討

 ――地下埋設物、とりわけ下水道の水管劣化を起因とした道路陥没が全国で生じているが、管内の点検状況と維持管理状況を定量的にお答えください。また、1.5~2m程度の深さであれば電磁波レーダーによる点検は十分行えますが、それより深い箇所はどのように点検、維持管理していくのでしょうか。管内の取り組みを教えてくだ下さい

 砂川 県管理の下水道では、計画的かつ効率的に施設を管理していくために「ストックマネジメント計画」を策定しており、本計画に基づいて下水道施設全体の点検・調査・修繕・改築の内容や実施時期を定めています。

 管路の点検では老朽化状況から緊急度を3段階で判定しており、緊急度Ⅰは速やかな措置が必要、同Ⅱはできるだけ早期に対策が必要、同Ⅲは劣化状況を確認し、対策時期を検討、に区分しています。Ⅰはなく、Ⅱに該当する管路は約670mと全体の0.6%程度となっています。

 ――比較的健全といえますね

 砂川 県内には八潮市で崩落を起こしたような大口径の下水道幹線はありません。また、道路と下水道部局でどの道路と下水管がかぶっているか、ということは既に把握を済ませております。その情報に基づき、両者が日々の維持管理の中で注視しつつ、計画的に改築を進めていきたいと考えています。


下水道管路内部点検状況


 ――下水道管路の点検手法はどのような方法で行っていますか

 砂川 主にマンホールから管路内にカメラを入れて点検する手法を採用しています。埋設深さに関わらず管路の点検を行っている状況です。但し、圧送管については、管内カメラによる点検ができないため未実施であり、最新技術の聞き取りなどを行い、点検方法を検討中です

 ――NETIS登録技術、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について

 砂川 南部土木事務所管内の南部東道路佐敷・玉城IC橋では、現場からの提案により、コンクリート打設初期の被膜養生による養生材『フェアリート』を天端面に散布し、フィニッシャビリティの改善や乾燥収縮ひび割れの発生を抑制しています。

 また、建設現場の生産性向上に向けた取り組みとして、2017年からICT工事活用の推進に取り組んでいる他、21年度からは遠隔臨場にも取り組み、現場臨場での手待ち時間の削減や効率的な時間の活用などが図られ、特に離島の現場での立会などで有効性が確認されています。

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浦内橋は仮橋を施工中、那覇大橋は上流側の架替えが進む

大保大橋は下部工を施工中

 ――橋梁の架替や大規模修繕、トンネルの点検状況、トンネルやのり面について橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください。また県や市からの点検・修繕代行の事例があれば詳しく言及してください

 砂川 現在、先ほどお話しした2橋に加えて、那覇大橋の架替えが進んでいます。

 まず西表島の浦内橋は、西表島を走る県道215号白浜南風見線の浦内川渡河部に架かる鋼橋の架替えです。旧橋は8径間単純合成鈑桁橋ですが、RC床版が塩害で大きく損傷し、さらに鋼桁の腐食も進んでいることから、橋長274.8mのPC5径間連続箱桁橋に架け替えるものです。西表島の豊かで希少な動植物の生息する自然に配慮する必要があることから、新橋は旧橋を撤去した後、同位置に新設する計画です。現在は一般交通や架設・撤去のヤードとして使う仮橋を施工中です。仮橋は、河積阻害率を抑えるため、スパンを長くとれるプレガーダー橋を採用しています。


浦内橋は床版や舗装の損傷も進行している

浦内橋の仮橋架設状況(編注:南海土木が架設している)

浦内橋の新橋諸元


 ――那覇内環状線における那覇大橋の架け替えは

 砂川 現橋は昭和45年に供用してから既に50年が経過しており、4車線ではあるものの、車線ごとの幅員が狭小で日交通量46,651台を支えるには辛くなっています。また、平成18年度に行った補修検討調査では床版の応力度不足、耐震性能不足、鋼材の腐食など老朽化の進行が確認されたことから大幅に幅員を広げた新橋に架け替えることにしたものです。

 ――新橋の概要と進捗状況は

 砂川 橋長147.6m、幅員27.5mの鋼5径間連続非合成少数I桁橋です。上部工の鋼重は合計524.711tとなっています。下部工は逆T式橋台、RC張出式橋脚を採用しています。

 同橋は河川右岸側に国道329号、左岸側には那覇市道が近接し、さらに下流側にはゆいレールが近接しています。また、1日当たりの交通量は46,000台を超えます。施工時に工事渋滞をできるだけ引き起こさず、さらには供用している既設構造物への影響を防がなくてはなりません。

 那覇大橋の架替えは8段階に分けて施工しています。1~5段階は上流側を施工しています。第1段階として上流側新桁設置予定のさらに上流側に作業ヤードとして仮橋を設置します。次いで第2段階で上流側の張出し部を除く下部工をつくり、第3段階として上流側3主桁の内2主桁の架設とその部分の合成床版の施工を行います。桁は四国の川田工業多度津工場で製作したものを運んで架設しています(編注:上流側鋼上部工の製作架設元請は川田工業・仲本工業JVが担っている)


那覇大橋全景と桁架設状況


 第4段階として既設橋の奥武山向け2車線を、作業ヤードして用いた仮橋に切り回し、第5段階として既設橋上流側の上部工および同下部工(幅員4.1m部分)を撤去します。その撤去した空間に新設上流側の下部工張出部を追加施工し、3主桁の残り1本を架設し、残部の合成床版を施工、舗装や付属工を施工したうえで、交通を完全に仮橋と上流側新設橋に流します。

 第6段階以降は下流側新橋を施工します。下流側はモノレールが近接しており、下流側の右岸に仮橋を設置して既設上部工を撤去し、その空間に既設橋脚を囲む形で作業構台を設置して下部工を撤去します。その後、旧下流側橋梁のラインに上下部工を設置し、交通をすべて新橋に振り替えます。下流側の橋梁は分割施工ではなく3主桁を一発で架ける予定です。

 また、防食も工夫しています。旧橋が塩害により大きく損傷したことを受け、防食性の高いチタンを用いた『NSカバープレート』を防塩板として桁を囲う形で設置する予定です。外部からの塩分の侵入を阻止すると共に検査路としても使っていきます。支承についても工夫を施す予定です。

 ――現在の進捗状況はどの段階ですか。また架け替えの完了見通しは

 砂川 現状は第2段階と第3段階が進んでいるところです。旧橋を維持しつつすぐ横に新橋をつくるということができず、現橋と同じ場所に造らなくてはいけない場所ですから、費用も時間もかかります。

 ――大保大橋は

 砂川 大保大橋は旧橋が橋長172.85mの5径間連続ポステンT桁橋です。これを橋長179mの5径間連続非合成箱桁橋に架け替えます。橋台は逆T式橋台、橋脚は張り出し式橋橋脚、基礎は既存の杭(φ1,000)より大きいφ1,500の場所打ち杭を採用しています。現在は下部工を施工中で、来年度には下部工を完了予定です。

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そもそも新規採用が少ない状況

 ――最後に県庁の土木職の技術継承、人材育成について

 砂川 これが本当に厳しい情勢です。そもそも新規採用が少ない状況で、職員の欠員も30人ほど生じています。研修などはかなり充実させているのですが……。それに加えて最近は転職も見られるようになっています。減員による負担を少しでも改善するため、仕事の簡素化やDXの導入も行っていますが、大きく改善はしていない状況です。

 技術継承という点では、長大橋の補修補強などにも響いていきます。長大橋を施工してきた我々の世代がきちんと技術を継承できずにリタイアしてしまえば、維持管理も回らなくなります。

 ――データとしては残すでしょうが、暗黙知が無くなるのが本当に怖いですね

 砂川 OB,OGが健在であれば聞くことはできますが、2、30年経つとそれも厳しくなります。人材の確保は本当に死活的な問題です。

 ――ありがとうございました

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