沖縄県 県道20号線(泡瀬工区)アクセス橋梁が来年度上部工閉合へ
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耐震補強 対象は102橋、その内37橋の対策を完了
耐震補強 対象は102橋、その内37橋の対策を完了
橋梁 Ⅲ判定は63橋、架替えも含め33橋が着手済み
――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況(全数および実施済み数)および2025,26年度の設置予定についてお答えください
砂川 平成8年道示より前の示方書を適用した橋梁、緊急輸送道路やう回路の無い道路にある橋長15m以上の橋梁、落橋防止構造の省略不可な橋梁に該当する102橋を対象として、耐震補強を進めており、現在は37橋が対策を完了、3橋が架替え中で、残り62橋の対策を進めていく必要があります。ただ、予算の制約がある中で、Ⅲ判定の橋梁の修繕を優先して行っているため、今年度は2橋(県道14号線和泉橋(橋長76m・落橋防止装置橋台2基、橋脚1基)、池間大浦線池間大橋(橋長1,425m・Co巻立橋脚2基))、2026年度は1橋(同前:池間大浦線池間大橋(橋長1,425m・Co巻立橋脚1基))を予定していますが、より多くの橋の対策を進めていくには予算の確保が課題となっています。
上部工のここ3年の補修実績は18橋、今年度は5橋を予定
世渡橋では外ケーブル補強を実施
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と、2025、26年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです
砂川 Ⅲ判定橋梁は63橋ありますが、6橋は完了、架替えも含め33橋は着手済みであり、2026年度はさらに19橋に着手する予定です。
例えば、宮古土木事務所管内(宮古島、池間島、来間島、伊良部島、下地島、多良間島、水納島を所管)の池間大橋、世渡橋(池間大橋の宮古島側に隣接する橋梁)は、海上橋という厳しい塩害環境の中で、供用から30年以上を経過し、塩害やASRに起因したコンクリート部材の損傷が確認されたことから補修を行っています。補修方法は、断面修復、ひび割れ注入を行っており、劣化部分をはつり出した後、ポリマー系の補修材を充填するなどの工法(リハビリシリンダー工法(ASR・塩害対策)、エポキシ樹脂塗装鉄筋+ポリマーセメントモルタル断面修復(塩害対策))を採用しています。
塩害対策として、池間大橋では内部鉄筋に防食電流を供給することで、鉄筋の腐食を防ぐ電気防食工法(PI-Slit工法)を採用しています。
同橋では、耐震補強も実施しています。橋脚巻き立て工および地震時の橋軸直角方向への変位を拘束するためのコンクリートブロック設置工、橋軸方向の振動を軽減するダンパー(KVD 1000kN ±350mm_20基設置済み)取付工を実施しています。

池間大橋、上写真の右側の短い橋が世渡橋、下側の足場が架かっている箇所で橋脚の補強を行っていた(井手迫瑞樹撮影)

池間島側から見た池間大橋(井手迫瑞樹撮影)

塩害の厳しい環境下で沓も少し劣化している(井手迫瑞樹撮影)
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塩害で損傷した池間大橋の橋脚
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様々な塩害対策を施している

池間大橋の耐震補強状況(左上から巻立て完了、変位制限装置工、下写真はダンパー設置工)
これらの耐震補強については、塩害、ASR対策としてフライアッシュコンクリートの使用や、エポキシ樹脂塗装鉄筋の使用などこれまでの沖縄県の離島架橋事業で得られた高耐久化、長寿命化を実現するための技術が採用されています。
ただし、池間大橋についても、先ほどお話しした予算不足から1年に1橋脚程度しか進んでおらず、長大橋であるため、橋長および橋脚の半分程度しか対策が進んでいない状態です。
上部工の補修については、鋼橋は塗装塗替えや高力ボルトの取替えなど、コンクリート橋は断面修復やひび割れの補修などを行っています。2022~24年度の実績は18橋となっています。
25年度は、前年度から継続の2橋を含む5橋を予定しています。そのうち先ほど紹介した世渡橋では、外ケーブルによる桁補強を予定しています。
――世渡橋はなぜ外ケーブル補強が必要になったのですか
砂川 耐荷力が不足(T-20、L-14)していたことが理由です。炭素繊維補強シートによる補強と比較検討した結果、設置時の施工性には劣るもののイニシャルコスト、ライフサイクルコスト共に優位であることから採用しました。

世渡橋の設計条件と耐荷力補強の比較検討

世渡橋(井手迫瑞樹撮影)

宮古島市のもう一つの離島架橋である栗間大橋(井手迫瑞樹撮影)
――来年度以降の予定は
砂川 26年度は前年度から継続の5橋を含む14橋を計画しています。
――床版についてはどのような状況でしょうか
砂川 鋼床版は疲労による損傷事例は確認されていません。コンクリート床版の床版防水については、現在、全ての床版で施工することにしています。床版防水の設置橋梁数は把握できていませんが、供用年次が古い橋梁で防水工が設置されていない橋梁があることは把握しており、橋面舗装の打替え時に合わせて防水工を実施しています。工法についてはシート防水と塗膜系防水のうち、経済性に優れた塗膜系防水を多く採用している状況です。
――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について2025年、2026年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答えください
砂川 2025年度は1橋で支承取替、3橋で伸縮装置取替を行っています。26年度は支承取替は予定しておらず、伸縮装置の取替を3橋で行います。支承取替は鋼→鋼への取替、伸縮装置は突合せ型が2橋、荷重支持型が4橋となっています。
ASR フライアッシュによる対策が必須
亜硝酸リチウムを混合した断面修復工や表面含侵工などの活用事例が増加
――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください
砂川 塩害については、鋼橋で鋼材の腐食や肉厚減少、高力ボルトの腐食、コンクリート橋では鉄筋の腐食膨張によるひび割れや剥離が主な劣化となっています。PC橋においては、PCケーブルを保護するシースやケーブル本体の腐食が見られることもあります。そのうち大宜味村内に架かる大保大橋については損傷が酷く、架け替えを選択しました。
大保大橋損傷状況及び架け替え進捗状況.jpg)
大保大橋の橋梁損傷状況及び架替え進捗状況

大保大橋の新橋と旧橋の比較

旧橋と新橋の図面
鋼橋では西表島に架かる浦内橋の腐食が進んでおり、これについてはPC箱桁に架け替えることを予定しています。

浦内橋の鋼桁損傷状況
ASRについては、以前は海外産の骨材を使用した橋梁で、遅延膨張性のASRによる劣化が見られたことから、県内産の海砂に切り替えたのですが、最近ではこの海砂にも遅延膨張性がある鉱物が確認されており、フライアッシュなどによる対策が必須になっています。
塩害における主な対策としては、鋼橋では塗装塗替えや高力ボルトの取替え、コンクリート橋では電気防食のほか、断面修復工やひび割れ補修、表面含侵工を実施しています。ASRについては、塩害との複合劣化対策として亜硝酸リチウムを混合した断面修復工や表面含侵工など新技術の活用事例が増えています((断面修復)リハビリ断面修復工、(表面含浸工)プロコンガードシステムS)。
――2025、2026年度の鋼橋塗り替え予定および実績(橋数と面積)を教えてください。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
砂川 2025年度は3橋で4,482㎡(国道449号本部大橋、伊計平良川線伊計大橋、石垣港伊原間線下田原橋)を予定しています。26年度は1橋で2,300㎡(浦添西原線大平インター陸橋)を計画しています。塗替え時における溶射などの採用実績はありませんが、新設時の支承や伊良部大橋鋼桁部(溶射+ふっ素樹脂トップコート)などで採用事例があります。

伊計大橋と本部大橋(井手迫瑞樹撮影)
PCBや鉛などの有害物質を含む既存塗膜の除去については、剥離剤の使用を基本としています。さらにブラスト時における飛散防止養生や防護服の着用、ならびに既存塗膜の最終処分処理などについて関係法令に基づいて適切に対応しています。
災害防除事業 該当は120箇所 北部管内が50箇所と突出
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください
砂川 毎年、道路に関する法面などの危険箇所や過去の災害発生個所の状況を把握し、道路防災カルテとして、点検と登録を行う業務を発注しています。その中で、対策が必要な箇所を選定し、設計業務や工事を進めています。
2024年末では120箇所が該当し、北部土木事務所管内が50箇所と突出しています。島尻泥岩や赤土対策が多く、予防保全的な災害防除事業を行っていきます。現在は、北部管内の県道14号線(東村有銘)、国道331号(名護市汀間)、中部管内の那覇北中城線(北中城村安谷屋)、県道146号線(中城村添石)、南部管内の那覇糸満線(八重瀬町外間)、那覇糸満線(糸満市武富)、八重山管内の白浜南風見線(西表島)、富野大川線(石垣市宮良)など21箇所で対策を進めています。

災害防除個所数

令和4年度に対策した南風原知念線(糸数)災害防除工事
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国道505号名護市呉我での斜面対策





