Interview

国土交通省 東北地方整備局 井上圭介道路部長インタビュー

2026.01.28

地域の暮らしや文化を守り続ける道路づくり

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国土交通省
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>井上 圭介氏

国土交通省
東北地方整備局
道路部長

井上 圭介

概要動画Overview Video

 国土交通省東北地方整備局は、直轄国道3,270km、3,110橋、285トンネルを管理している。東北地方は、豪雪や寒冷といった厳しい自然条件に加え、日本海側・太平洋側の双方で洪水・高波・地震など多様な災害リスクを抱える地域である。また、人口減少が全国より速いペースで進む中、広域に及ぶ道路ネットワークの維持管理と更新は、より高度で効率的な取り組みが求められている。こうした環境のもと、老朽化対策、防災・減災、道路ネットワークの信頼性確保、DX活用による業務効率化など、道路行政には多様な課題が突きつけられている。東北地方整備局がこれらにどのような方針で取り組んでいるのか。井上圭介道路部長に話を伺った。(インタビューは令和7年9月に実施)

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東北地域の道路・橋梁・トンネル事業の進捗と2025年度の重点施策

道路防災・減災対策の強化

被災事例の検証を設計・施工へ反映し、強靱な道路ネットワークを構築

 −−大規模な風水害や地震などが全国で生じています。そうした洪水や斜面崩壊に対して橋や道路が損傷しないため、施している構造上および工事上の工夫について教えてください。

 井上圭介道路部長 東北地方整備局では、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」(令和2年12月閣議決定)に基づき、橋梁の耐震補強や法面防災対策など、地域特性と被災履歴を踏まえた災害対策を重点的に進めています。近年は、洪水時に橋台背面の盛土が流出したり、橋脚が洗掘される事例が全国で多発しているため、新設橋の計画段階から、橋台を河川側に張り出しすぎないレイアウトとするほか、橋脚の位置や本数についても安全側の設定としています。これにより、異常出水に伴う流木滞留や局所的な流速増大による損傷・逸失を避けるよう配慮しています。

 また、東北地方では令和元年東日本台風(台風19号)、令和4年3月の福島県沖地震など、大規模な自然災害が連続して発生しました。これらの災害の知見は、復旧事業だけでなく、新たな道路計画や防災対策にも反映されています。

 たとえば、宮城県丸森町の国道349号(宮城県管理)では、台風19号で甚大な被害を受けました。特に被災の大きかった約8kmの区間では現位置での安全な復旧が困難と判断され、有識者を交えた「丸森地区防災対策技術検討会」での議論を踏まえ、山側への別ルート整備が最適と結論づけられました。山側への別ルートは令和8年1月31日に開通します。



 福島県伊達市の阿武隈川を渡る国道399号・伊達橋(福島県管理)では、福島県沖地震により上部工が変形する重大な被害が生じ、通行止めを余儀なくされました。復旧には高度な専門技術を要することから、国が権限代行により復旧を担っており、再度の被災を防止するため、上部工の架替えと下部工の補強を組み合わせた復旧工事を実施しております。



 過去の災害事例を確実に検証し、設計・施工段階へフィードバックすることで、風水害・土砂災害・地震といった多様な脅威に対して強靱な道路ネットワークの構築を進めています。

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格子状骨格ネットワーク形成に向けた高規格道路整備の進展

縦軸の最終区間と横軸の重点区間、2025年度新規事業の動向

 −−2025年度の重点道路事業建設の計画と進捗状況、また新規事業化区間について教えてください。

 井上 東北地方は国土が広く、起伏に富んだ地形のなかに主要都市が分散していることから、都市間距離が長く、さらに人口減少も全国を上回るペースで進んでいます。こうした地域特性を踏まえ、東北地方整備局では、南北方向の4つの縦貫軸と、7つの東西横断軸で構成する「格子状骨格道路ネットワーク」の整備を進めています。日本海側と太平洋側を結ぶ“二面活用”型の物流ネットワークを強化し、ミッシングリンクを解消していくことが大きな目的です。



 縦軸については、すでに約9割が供用済みで、残る区間として、日本海沿岸東北自動車道の新潟・山形県境および山形・秋田県境の2区間(延長58.6km)、さらに東北中央自動車道の山形・秋田県境4区間(延長20.2km)で工事を進めています。これらが開通することで、縦軸の高規格道路ネットワークは概ね完成する見通しです。

 一方、横軸では、新庄酒田道路、新潟山形南部連絡道路、宮古盛岡横断道路などにおいて、現道の課題が特に大きい箇所から優先的に整備を進めているものの、まだ未着手区間が多く残っています。今後も地域の交通実態や物流需要を踏まえながら、段階的に事業を進めていく必要があります。

 2025年度の新規事業化区間としては、秋田県の国道13号横手北道路、山形県の国道112号山形南道路の2区間で事業に着手しました。
横手北道路は、冬期交通環境の改善や、市内に立地する高次救急医療機関への搬送時間短縮、さらに秋田県央・県南地域をつなぐ物流ルートの安全性と円滑性の向上を目的とした延長5.9kmの現道拡幅・一部バイパス事業です。現在は測量や地質調査を進めています(橋梁延長0.2km、構造物比率3%)。






 山形南道路は、山形市街地を通過する交通をバイパスに転換するとともに、市街地に流入する車両を適切に分散させることで、複数立地する高次救急医療機関へのアクセス性を高め、山形中央IC周辺の物流拠点と市街地を結ぶ道路ネットワークを強化する延長9.0kmのバイパス事業です。こちらも測量・地質調査を進めており、橋梁延長0.8km(構造物比率9%)を予定しています。



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主要橋梁・トンネル事業の設計進捗と防災機能強化の取り組み

国道4号仙台拡幅の橋梁設計と大覚野峠トンネルの詳細設計を推進

 −−2025年度の主要橋梁・トンネル事業の計画と進捗状況を教えてください。

 井上 2025年度における主要橋梁・トンネル事業は、現在、橋梁4橋とトンネル1箇所で設計が進んでいます。橋梁については、詳細設計段階のものが1橋、予備設計段階のものが3橋となっており、事業の特性や地域の交通課題を踏まえながら順次内容を具体化しているところです。トンネルについては、1箇所で詳細設計を進めています。

 橋梁事業の代表的なものとして、仙台市内で実施している国道4号仙台拡幅(篭ノ瀬~鹿の又)があります。国道4号の慢性的な混雑の解消と交通安全性の向上を目的とした延長1.6kmの立体化事業で、今年度は橋長約1.4kmとなる橋梁の予備設計を実施しています。東北地方の重要な幹線道路である国道4号の機能強化に寄与するプロジェクトで、将来的な都市交通の円滑化を目指しています。





 トンネル事業では、国道105号大覚野峠防災事業を進めています。仙北市と北秋田市を結ぶ区間では、地すべり、雪崩、落石などにより通行止めが発生しやすく、従来から交通の信頼性確保が課題となってきました。このため、災害に強い道路ネットワークを構築することを目的に、防災機能の強化を図る取り組みを進めています。今年度は、延長約2.8kmの2号トンネルについて詳細設計を行っており、安全性と防災性の高いルートの確保に向けて、設計内容の精度を高めているところです。

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施工中の橋梁上部工は14橋(鋼橋8橋、PC橋6橋)

トンネル工事は13箇所

 −−施工中の主要橋梁・トンネルの概要を教えてください。

 井上 現在、東北地方整備局管内では、鋼橋8橋(11工事)、PC橋6橋、そしてトンネル13箇所の施工が進んでいます。それぞれの橋梁やトンネルで、構造形式や地形条件に応じた工法を採用しながら、順調に工事を進めているところです。





 代表的な橋梁として、まず国道7号に位置する吹浦高架橋(鋼多径間連続箱桁、橋長1,741m)があります。この橋梁は6つのブロックに分割して施工しており、現在は4ブロックで上部工工事、残る2ブロックで床版工事を進めています。長大橋であることから、工程管理や安全管理を徹底しながら計画的に施工を進めています。



 また、刺巻こ線橋(鋼3径間連続箱桁、橋長122m)では、鋼上部工の架設工事を進めているところです。線形条件が厳しい区間であるため、精度の高い施工が求められる橋梁です。



 PC橋の事例としては、中山平大橋(PC2径間連続Tラーメン箱桁、橋長159m)が挙げられます。こちらも現在、上部工工事の施工段階にあり、PC構造特有の長支間を活かした橋梁形式の特徴を踏まえつつ、安全性と品質確保に注力しながら施工を進めています。



 これらの橋梁に加え、全国的に地形が厳しい東北地域ではトンネル事業も重要であり、13箇所で工事が進行中です。いずれの工事においても、地域の交通の信頼性向上と防災力強化に資することを目標に、適切な工法を選択しながら着実に事業を推進しています。

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