Interview

国土交通省 東北地方整備局 井上圭介道路部長インタビュー

2026.01.28

地域の暮らしや文化を守り続ける道路づくり

Tag
国土交通省
Share
X Facebook LINE
鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー 私たちがもとめるもの それは豊かな未来を支える確かな技術です。 わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です!

DX技術を活用した施工・点検の効率化と安全性向上

橋梁維持管理における補修・防水・劣化対策の実施状況

補修件数・劣化メカニズム・塗替え・耐候性鋼材の健全度を踏まえた対応

 −−上部工の補修・補強実績および2025年度の施工計画、鋼床版の疲労亀裂調査、コンクリート桁・床版の損傷状況について教えてください。

 井上 過去3年間に東北地方整備局管内で実施した上部工の補修・補強は、全体で約70件にのぼります。2025年度(令和7年度)は、約50件の補修・補強を計画しており、引き続き道路ネットワークの安全確保に向けた対策を進めていきます。

 鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および補強対策については、現時点で東北地方整備局が管理する橋梁では該当事例はありません。なお、支間長の確保など構造条件により鋼床版を採用する場合がありますが、疲労亀裂が確認された場合には、亀裂部へのあて板補修が中心的な対策となります。

 一方、コンクリート桁・床版では、うき、ひび割れ、剥離、鉄筋露出などの損傷が見られます。これらについては、断面修復を中心とした補修を実施し、健全性の回復を図っています。

 −−整備局が管理する橋梁の床版防水の施工状況や今後の施工方針、採用工法について教えてください。

 井上 コンクリート床版の保全において、路面水の浸透を防ぐ床版防水は最も重要な対策の一つと位置付けています。そのため、新設橋はもちろん、床版打ち換えや橋面舗装の更新を行う際には必ず防水層を施工する方針としています。

 採用する工法については、塗布系・シート系の選択肢から現場条件や施工性、経済性を踏まえ、最も適した工法を総合的に判断して採用しています。

 −−支承取り換えやジョイントの取り替え、ノージョイント化について、今年度の予定と採用工法を教えてください。

 井上 橋梁点検の結果を踏まえ、必要な箇所から順次更新を進めています。今年度は、支承の取り換え工事を7件、伸縮装置(ジョイント)の取り換え工事を2件実施する予定です。いずれも、損傷状況に応じて適切な工法を選定し、機能の確実な回復を図ります。

 なお、今年度にノージョイント化を行う予定はありません。

 −−塩害やアルカリ骨材反応などによる劣化はありますか。また、劣化の形態や対策工法を具体例とともに教えてください。

 井上 これまでの定期点検の結果、塩害やアルカリ骨材反応による劣化が確認されています。

 まず塩害についてですが、かつては日本海側を中心に飛来塩分による損傷が多く見られ、橋梁の架替えなど大規模な更新を行った事例もあります。現在は同種の塩害が新たに顕在化している状況はありません。一方で、東北地方は積雪寒冷地であり、冬期に散布される凍結抑制剤に含まれる塩分が路面水とともに構造物へ飛散し、コンクリートの損傷部から浸透することで内部鋼材の腐食が進行するケースが見受けられます。

 対策としては、日常管理の段階で排水桝の清掃など、滞水を防ぐ措置を徹底するとともに、劣化の程度に応じてコンクリートの断面補修、鉄筋腐食の除去、水の供給を遮断するための水切りの設置や表面被覆といった対策を講じています。

 アルカリ骨材反応(ASR)については、反応性骨材を含む可能性のある橋梁で発生が確認されています。特に、雨水が当たりやすい橋脚梁部、伸縮装置からの漏水が生じる橋台など、水分供給が多い部位で顕著です。劣化は、網目状のひび割れや白色ゲル状物質の析出として現れます。

 補修の検討にあたっては、これまでの劣化の進行状況や将来の膨張量を調査したうえで補修の必要性を判断し、基本的には水分の浸入を抑える対策を中心に実施しています。

 −−2024年度の鋼橋塗り替え実績及び2025年度の鋼橋塗り替え予定、また金属溶射など新しい重防食の採用状況について教えてください。

 井上 2024年度は 15橋・約16,000m² の塗り替えを実施しました。
2025年度は 14橋・約15,000m² の塗装塗替を予定しており、継続的に維持管理を進めていく方針です。


 塗替えにあたり、桁部の防食性能向上を目的とした金属溶射などの新しい重防食工法については、現時点では採用を予定していません。今後も損傷状況や経済性、施工条件などを踏まえながら、適切な防食手法の選定を行っていきます。

 −−PCBや鉛など有害物質を含む既存塗膜について、国の通達を踏まえどのような処理方策をとっていますか。

 井上 塗り替え工事では、まず既存塗膜に含まれる成分を把握するため、事前に塗膜成分調査を実施しています。その結果を踏まえ、PCBや鉛などの有害物質が確認された場合には、全面に養生シートを設置して塗膜の飛散を防止し、作業員には保護マスクや保護服の着用を義務づけるなど、健康被害を避けるための対策を講じています。施工に伴い発生した塗膜片や剥離剤を含む廃材、ウエス、養生材、保護具などは、環境省が指定する処理施設に搬入し、適切に処分しています。

 既存塗膜の剥離については、事前に試験施工を行い、塗付量や塗布回数の違いによる作業性や経済性を比較検討したうえで、最も適した方法を選定し、本施工に反映しています。

 −−耐候性鋼材を採用した橋梁の採用状況と現在の健全度について教えてください。

井上 東北地方整備局が管理する橋梁では、耐候性鋼材を用いた橋梁が189橋あります。そのうち、主桁や横桁など耐候性鋼材を採用した部材において劣化が進行し、早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)にある橋梁は2橋です。

 耐候性鋼材は、本来、適度な乾湿の繰り返しにより表面に緻密で安定したさび層(保護さび)が形成されることで、その後の腐食進行を抑えることを期待した材料です。しかし、伸縮装置や排水管など排水施設の劣化によって漏水が発生する箇所や、冬期に散布される凍結抑制剤を含んだ路面水が飛散しやすい箇所では、この保護さびが形成されにくく、結果として劣化が進みやすくなる状況が見られます。

 東北地方は積雪寒冷環境にあるため、こうした条件が重なることで耐候性鋼材本来の性能が十分に発揮されないケースがあり、現在も健全度の把握と適切な措置に向けた検討を進めているところです。

鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー ウォータージェット技術が拓く、未来のインフラメンテナンス。 わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です!

異常気象下における道路防災と構造物への取り組み

河積阻害対策、斜面・盛土補強、新技術活用、直轄診断など総合的な防災・保全施策

 −−異常気象による土砂災害が相次ぐ中、河積阻害率の高い橋梁の改良・補修・更新、道路周辺の斜面・法面・盛土などをどのように補強・補修して道路を守っているのか、具体的な事例や計画を教えてください。

 井上 全国的に大規模な豪雨災害が増加するなかで、東北地方整備局では、河川の流下能力を妨げる「河積阻害」を低減しつつ、道路構造物の安全性を高める取り組みを進めています。たとえば、令和元年の台風19号で被災した国道49号の大善寺橋(郡山国道事務所管内)では、復旧の際に橋梁形式を4径間から2径間へ改めることで橋脚数を減らし、河積阻害の解消を図りました。この更新により、洪水時の水位上昇リスクの低減と流下能力の向上が実現しています(令和3年度完成)。

 また、河川に隣接する道路や法面・盛土については、「国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用し、道路流失防止対策や斜面安定対策を計画的に進めています。具体例として、岩手河川国道事務所管内の国道46号では、豪雨災害による土砂崩落の再発を防ぐため、過去に崩落が発生した斜面に対してグラウンドアンカーやモルタル吹付といった斜面安定工を実施し、道路の安全性向上に取り組んでいます。



 こうした防災・減災対策を継続的に行うことで、異常気象下でも道路ネットワークの信頼性を確保し、交通の維持と地域の安全確保を図っています。

 −−具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください。

 井上 東北地方整備局管内の防災・盛土対策の要対策箇所は約460箇所(令和7年4月時点)であり、令和6年度は5か年加速化対策等により37箇所で対策を実施しています。

 −−新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について(具体的なNETIS活用技術の紹介などもお願いできましたら幸いです)

 井上 各施設の点検にあたっては、道路構造物の点検の効率化・高度化を推進するため、点検に活用可能な技術をとりまとめた「点検支援技術性能カタログ」に掲載された技術を活用しています。
また、新技術を活用した補修事例として、支承防錆では、超撥水性で耐候性・耐塩害性に優れ、透明であるため施工後の劣化状況の視認もしやすい工法を採用した例があります(NETIS CB-220023-A)。




 −−特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの修繕事業等について。また、権限代行で自治体が保有する橋梁などの構造物の点検や補修補強もしくは架替を行う事例の進捗中案件などについて教えてください。

 井上 今年度、東北地方整備局が実施する特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの大規模修繕の予定はありません。一方で、国の地方公共団体支援策である「直轄診断」や「修繕代行事業」については、東北地整ではこれまでに4施設での実績があります。



 そのうち、令和4年3月の福島沖地震で被災した福島県管理の「伊達崎橋(だんざきはし)」については、今年度より現地作業に着手する予定です。直轄診断は自治体からの要請にもとづいて対応する仕組みであり、各県の道路メンテナンス会議を通じて制度の周知を続けるとともに、必要時に迅速に対応できるよう技術力の向上にも取り組んでいます。



 また、東北道路メンテナンスセンターでは、これまでに23件(令和7年7月末時点)の技術支援実績があります。相談内容は、補修可否の判断や補修工法に関する技術的助言、点検の進め方に関するものなど、多岐にわたっています。

鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー ウォータージェット技術が拓く、未来のインフラメンテナンス。 わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です!

DXと自動化による施工・点検の効率化と安全性向上

BIM/CIM、ロボット・ドローン点検、データ連携による生産性向上の取り組み

 −−新設・災害復旧・保全を問わず、安全性の向上、業務の効率化やDXの活用事例について教えてください。

 井上 国道47号中山平大橋の上部工工事では、BIM/CIMをはじめとするさまざまなDX技術を活用し、生産性と安全性の向上に取り組んでいます。BIM/CIMでは、鉄筋の干渉確認や作業員への組み立て手順の共有、交差する市道との離隔確認などに活用し、施工性の改善に寄与しています。









 また、DX技術として「WG(ワーゲン)組立ナビゲーションシステム」や「打設前検査の効率化支援システム」による手戻り・不具合防止のほか、「オートレベルによる橋面高さ計測」や「SMCスマートメジャー」など出来形計測の省力化技術も導入し、新たな技術の試行も交えながら生産性向上を図っています。これらの取り組みについては、地域の小中学生を対象とした親子見学会も実施し、次世代への理解促進にもつなげています。

 さらに、三陸縦貫自動車道の気仙沼湾横断橋(海上部:斜張橋)では、ドローンやロボットを活用した点検を行い、効率化、省力化、安全性向上を実現しています。従来は点検車や高所作業車、ロープ作業を用いるため通行止めが必要でしたが、現在は橋梁下面をドローン、主塔を壁面移動ロボットと超望遠カメラ、斜材を専用ロボットで点検することで、通行止めを行わずに日中の点検が可能となりました。



 また、全国道路施設点検データベースとの連携により、過去の点検結果や補修履歴を容易に参照できる環境を整備しており、合理的かつ効率的なメンテナンスの実施にもつながっています。

−−最後に一言お願いいたします。

 井上 東北の道路行政を考えるとき、まず前提として、この地域が日本の中でも非常に広い国土を持ちながら、人口減少が急速に進んでいるという現実があります。農林水産業をはじめとする重要な資源が点在する中で、人や物を効率的につなぎ、地域の機能を維持していく。その基盤となるのが道路ネットワークです。


 一方で、道路は単に「移動のためのインフラ」ではありません。東北では、道路が地域の暮らしや文化を支える公共空間として使われてきました。例えば、青森のねぶた祭や弘前の立ねぷたのように、祭りが道路空間そのものを舞台として行われている地域も多くあります。弘前の立ねぷたでは、高さ20メートルを超える山車を通すために無電柱化が進められ、道路整備が祭りの復活につながりました。道路のあり方が、地域文化の継承や再生に直結する好例だと思います。


 こうした「使われ方」を考える一方で、東北の道路は厳しい自然条件とも向き合わなければなりません。豪雪地帯では除雪が生活を支える生命線となり、寒冷地特有の凍結融解による舗装の劣化も避けられません。さらに近年は、上下水道や農業用排水管など、道路下に埋設された施設に起因する陥没への対応も重要な課題となっています。道路は、人が日常的に使う空間であり、ひとたび支障が生じれば人命にも関わります。だからこそ、地下構造物の情報共有や点検体制の強化など、「見えない部分」も含めた管理を着実に進めていく必要があります。


 東北の道路に求められているのは、単に造ることではなく、広い国土、厳しい自然、そして地域の暮らしや文化を支え続けることです。ネットワークとしての役割と、公共空間としての役割、その両方を意識しながら、使い続け、守り続ける道路づくりに取り組んでいきたいと考えています。


−−ありがとうございました。

鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー ウォータージェット技術が拓く、未来のインフラメンテナンス。 わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です!

pageTop