Interview

国土交通省 東北地方整備局 井上圭介道路部長インタビュー

2026.01.28

地域の暮らしや文化を守り続ける道路づくり

Tag
国土交通省
Share
X Facebook LINE
わたしたちは 橋梁・コンクリート構造の専門家です! 各種コンクリート試験 構造物の調査・診断 カーボンニュートラル 私たちがもとめるもの それは豊かな未来を支える確かな技術です。

橋梁・トンネルの耐震補強と長寿命化に向けた維持管理施策

新設構造物の耐久性向上に向けた新技術・新材料の導入

高耐久フライアッシュコンクリート舗装とRC床版の多重防護による品質確保

 −−新設における新技術・新材料の導入事例について教えてください。

井上 新設構造物の品質向上と長寿命化に向けて、東北地方整備局でも新技術・新材料の導入を積極的に進めています。

 まず、舗装分野では、学識経験者と連携して進めている「データ同化をベースとした高耐久フライアッシュコンクリート舗装の技術研究開発」の一環として、日本海沿岸東北自動車道・二ツ井今泉道路において、フライアッシュを用いた高耐久コンクリート舗装の試験的導入を行っています。フライアッシュを活用することで、ひび割れ抵抗性や耐久性の向上が期待されており、寒冷地特有の凍害対策としても有効と考えられます。

 さらに、管内のRC床版においては、塩害・凍害・ASR・疲労といった複合劣化に対応するため、多重防護の考え方を取り入れた対策を推進しています。具体的には、コンクリート自体の緻密化や空気量の適正確保、鉄筋への防錆処理、そして施工段階における基本事項の徹底と丁寧な作業により、構造物の耐久性・品質のさらなる向上を図っています。

 これらの取り組みを通じて、厳しい気候条件にさらされる東北地域においても、長期間にわたり安全・安心な道路インフラを維持できるよう、技術開発と新技術の現場適用を進めているところです。

スーパーブラスター工法 品質・施工性に優れた止水材 伸縮目地補修工法 Exリライフ工法 鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー

「橋の計画と形式選定の手引」を活用した予備設計の検討

予備設計の透明性向上と次工程への確実な引継ぎ

−−土木学会では2023年5月に「橋の計画と形式選定の手引」を発刊しました。新設橋の予備設計や道路計画段階時点で様々な形式選定や、リスク管理、新技術の導入などを検討し、しかもプロセスの過程を残しておくことで、後工程に資する橋梁計画や予備設計となることを目指したものです。予備設計段階では、地質や住民との合意形成など不確定要素があり、かつ同時点での新技術についても有望ながら信頼性の点で断念することもありました。しかし、予備設計段階から実際の工事に入るまでは通常でも3~5年程度かかり、その間で所与の条件やより詳細な情報、新技術の信頼性も向上することから、議論の過程を残し、予備設計の最適案も無理に1つにしないことで、後工程の選択の幅を広げるようにしたことが最大のメリットです。同手引きの活用についても今後行っていくか教えてください。


 井上 東北地方整備局では、橋梁の予備設計を進める際、橋梁の重要度に応じてコンセプト段階から複数の職員が関わり、形式選定や技術課題、リスク要因などを丁寧に議論しながら検討を進めています。

 「橋の計画と形式選定の手引」で示されているように、予備設計段階で検討した選択肢や議論のプロセスを記録として残すことは、後工程の選択肢を確保し、より確実で質の高い橋梁整備につながると考えています。特に、地質条件や地域との調整、新技術の信頼性などは、時間の経過とともに情報が更新される場合が多く、複数案を保持しておくことの意義は大きいと感じています。

 今後は本手引きを参考にしながら、100年後も安定した性能を発揮できる橋梁を実現するため、設計段階での検討プロセスの質をさらに高め、次工程に確実に引き継げるような形で活用していきたいと考えています。

スーパーブラスター工法 品質・施工性に優れた止水材 伸縮目地補修工法 Exリライフ工法 鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー

点検結果から見える劣化傾向と維持管理上の課題

桁端部腐食・床版疲労・覆工剥離など主要損傷の進行と予防保全の必要性

 −−次は維持管理についてお聞きします。現在の管内橋梁・トンネルの内訳について教えてください。

井上 まず橋梁についてですが、東北地方整備局が管理する橋梁(溝橋を除く)は 3,110橋 あります。構造別に見ると、鋼橋が1,440橋(約5割) と最も多く、次いで PC橋が1,364橋(約4割)、RC橋が274橋(約1割) となっています。また、供用後50年以上が経過した橋梁は 1,206橋 に達しており、老朽化対策の重要性が高まっています。

 規模別では、橋長100m以上の長大橋が588橋 を占め、全国的に見ても長大橋が多い地域的特徴があります。路線別では、東北地方の大動脈である 国道4号に587橋 が集中しており、全体の約2割を占めています。

 トンネルについては、285トンネル を管理しています。工法別では、NATM工法が172トンネル(約6割)、従来の矢板工法が 99トンネル(約4割) です。供用後50年以上経過したトンネルは 70トンネル あり、橋梁と同様に高い比率で老朽化が進んでいます。

 規模の大きいトンネルとしては、延長3,000m以上の長大トンネルが6トンネル あります。路線では、三陸沿岸道路を含む 国道45号に122トンネル が位置しており、東北全体の約4割を占めるなど、この地域特有の地形条件を反映した構造となっています。

−−点検を進めてみて分かった管内各路線の劣化状況について教えてください。

 井上 東北地方整備局管内の橋梁では、橋種や部位によって特徴的な劣化傾向が確認されています。まず鋼橋では、主桁端部の腐食が多く見られます。伸縮装置の非排水機能が低下すると、路面水が桁端部へ流入しやすくなるためです。特に東北地方では冬期に凍結抑制剤を散布するため、薬剤の影響によって腐食が加速しやすい傾向があります。



 コンクリート橋(PC・RC)では、同じく主桁端部で内部鋼材の腐食膨張に伴うコンクリートの剥離や鉄筋露出が生じています。これも鋼橋と同様に、伸縮装置の非排水機能劣化によって路面水が侵入することが原因として挙げられます。





 伸縮装置の遊間への土砂の堆積や冬期の積雪が車両通行によって押し込まれることで損傷する例が多く見られます。非排水構造を採用していても、止水材・排水樋が本来の機能を果たさなくなるケースが確認されています。

 部材別では、床版にひび割れ・浮き、漏水、遊離石灰などの症状が目立ちます。舗装のひび割れから水が浸入し、車両の繰り返し荷重によって疲労が蓄積することが主な原因で、経年的に劣化が進行する傾向があります。

 点検結果の推移を見ると、2巡目の点検では新たに早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)となった橋梁が全体の約1割に達しており、前回点検以降の老朽化が確実に進行していることが分かります。また、Ⅲ判定の橋梁を補修した場合でも、補修対象外の部材の老朽化が進行し、次回点検で同じ橋が別の部位・部材で再びⅢ判定となるケースもあります。こうした状況を踏まえ、限られた予算の中でも可能な限り「予防保全」への移行を進め、早期措置により損傷の深刻化を抑えることが重要だと考えています。

 トンネルについても、覆工コンクリートの浮き・剥離、漏水などが多く見られ、こちらも経年劣化の影響が大きくなっています。2巡目の点検では、新たに早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)となったトンネルが全体の約2割を占めており、橋梁と同様に劣化が進んでいる状況が明らかになっています。

スーパーブラスター工法 品質・施工性に優れた止水材 伸縮目地補修工法 Exリライフ工法 鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー

長寿命化修繕計画に基づく補修・補強の進捗

Ⅲ判定橋梁の措置状況と鋼・コンクリート橋の代表的損傷と補修内容

−−橋梁の耐震補強の進捗状況(耐震性能2)、落橋防止装置の整備状況、そして2025年度の予定について教えてください。

 井上 東北地方整備局では、今後発生が懸念される日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に備え、「東北道路啓開計画」を策定し、発災後72時間以内に道路啓開を行うための緊急輸送ルートの確保を進めています。この取り組みの中核となる緊急輸送道路上の橋梁については、耐震補強の進捗率が昨年度末時点で約9割に達しており、着実に対策が進んでいます。

 未対策の橋梁についても、橋脚補強、落橋防止装置の設置、支承部の補強・交換など、橋としての機能を早期に回復させるための対策を進めています。現在は4橋で工事を実施しており、残る区間についても引き続き重点的に整備を進めていく予定です。

−−熊本地震や能登半島地震を踏まえ、どのような耐震対策が改めて必要だと考えていますか。

 井上 過去の地震災害から得られた知見を確実に対策へ反映し、同様の被害を繰り返さないことが重要です。そのためには、被災メカニズムの丁寧な検証と、それに基づく計画的な補強・改良が不可欠だと考えています。

 まず、熊本地震で落橋したロッキングピア形式の橋梁については、東北地方整備局管内でも2橋が該当していましたが、いずれも対策済みです。1橋は平成29年度に補強を実施、もう1橋は令和3年度に架け替えを完了しています。

 また、能登半島地震では「のと里山海道」の土工部が多数崩落したことから、高盛土や集水地形に位置する道路が大きなリスクを抱えていることが改めて明らかになりました。この教訓を踏まえ、東北地方整備局では「高さ概ね10m以上、集水地形にある盛土」を対象に、令和6年11月までに緊急点検を実施しています。

 点検の結果、約50箇所において対策が必要と判断され、現在、盛土内の地下水を迅速に排出するための排水ボーリングや、法尻部へのふとんかご設置など、地盤の安定性を高める工事や設計を進めているところです。



 −−橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況について教えてください。また、具体的な損傷状況や補修内容の事例があればお聞かせください。

 井上 東北地方整備局では、橋梁ごとに個別施設計画を策定し、長寿命化に向けた修繕を計画的に進めています。
2巡目点検(2019~2023年度)で「早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)」と診断された461橋のうち、2023年度末時点で301橋(65%)で修繕等の措置に着手しています。また、措置が完了した橋梁は113橋、全体の25%に達しています。


 損傷の特徴として、鋼橋では桁端部などに腐食が見られ、あて板補修や床版の打ち換え、補強シートの接着による補強などを行っています。


一方、コンクリート橋では、剥離や鉄筋露出といった損傷が多く、これらに対しては断面修復工を中心とした補修を実施しています。




 

−−トンネルの点検状況や、長寿命化修繕計画に基づく補修・補強の進捗について教えてください。

 井上 トンネルについては、覆工コンクリートの剥落防止対策や漏水対策、ひび割れ補修、断面修復など、点検結果に基づき必要な補修・補強を実施しています。劣化や漏水により低下した機能の回復を目的とした補修に加え、トンネルの構造的安定性を確保するための補強も行っており、変状の程度や原因を丁寧に把握したうえで、経済性も考慮しつつ対策を進めています。

 長寿命化修繕計画の進捗状況としては、2巡目点検(2019~2023年度)で「早期に措置を講ずべき状態(判定区分Ⅲ)」と診断された76トンネルのうち、2023年度末時点で53トンネル(70%)で修繕等に着手しており、そのうち23トンネル(30%)で措置が完了しています。



 今後も、安全性・信頼性の維持を図りつつ、橋梁・トンネルの健全度に応じた計画的な修繕・補強を継続していく方針です。

スーパーブラスター工法 品質・施工性に優れた止水材 伸縮目地補修工法 Exリライフ工法 鉄筋コンクリートを塩害からがっちり守り抜くAG-エポキシバー

pageTop