Interview

進化2025は最終段階 増大する事業量にいかに対応するか

2024.04.22

NEXCO西日本 前川社長インタビュー

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NEXCO西日本
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地に足のついたDX

中堅層の人員が非常に薄い

5本柱からなるDX戦略「NEW ACE DXs」

 ――さて、これからも事業量は高い水準で続きそうですが、それに対応する人材をどのように育てていきますか

 前川 民営化前後に採用が減少した時期があり、30代後半から40代前半の中堅層の人員が非常に薄くなっています。過ぎ去ってしまったものはどうしようもないので、若い人を採用して一刻も早く一人前に育てるしかありません。
当社は、平成30年から年130人の大幅な採用を行いました。それまでの採用人数の倍にしたわけです。それを6年間行いました。それでようやく民営化当初と同程度の人員を維持できている状況です。しかし、今度はどうやって早く一人前にするか、また技術者においては各種の構造や技術について専門的知識をどうやって身に着けさせるか、という育成の問題が出てきます。
 これは大学教育の影響もあると思います。土木工学を学ぶ学生の数がそもそも減っていますし、履修科目において構造力学が必須ではない大学もあります。土木系の大学を出てきても、構造をあまり知らない人もいます。そういう人たちには一から教えるしかありません。
 その一環として、入社後間もない若い技術者を対象に、コンクリートや構造力学などの工学的基礎知識を早期に習得できるオンライン研修の社内システムを作り上げています。また、技術研修は1度で終わるのではなく、中堅層までの間に何度も行っており、その内容はかなり充実しています。
橋梁に関する技術力向上策については、Nコンの技術力の高さを生かして、実務研修のような形でNコンに出向させるなどしています。こうして卓越した技術者を何年かに1人でも作り出していかないといけないと考えています。確かに新設事業は少なくなっていますが、大規模更新や大規模修繕事業は今後増えていきます。橋梁を中心とした構造物が対象になるため、技術者の教育が非常に大事であると考えています。


研修実施状況


 DXの導入においては、遠隔立会について令和2年に実施要領を定めており、現場ではほぼ定着しつつあります。
具体的には、膨大な事業量に対応するため、令和3年にDX戦略推進会議を立ち上げ、「マインド醸成」「基盤整備」「人財育成」「業務処理の効率化」「業務・サービスの高度化」の5本柱からなるDX戦略「NEW ACE DXs※」を定め、発展著しい情報技術を日常業務等に活用するための様々な取組みを進めています。
 ※ NEXCO-WEST Advanced Challenge and Evolution will be DX strategy


NEW ACE DXsのイメージ


 このNEW ACE DXsでは、「地に足のついたDX」として、書類の電子化や手続き業務のワークフロー化など、すぐに負担軽減が実感できる日常業務の効率化・自動化に資する取り組みを特に最優先すべき事項として、2022年度から約330のメニューに対して取り組みをすすめ、順次、業務手順の改善を図っているところです。
 また、設計等の業務において、BIM/CIMの取組みも行っております。
国交省の活用状況を注視しつつ、BIM/CIMの活用浸透を推進するため、各支社にBIM/CIM全面活用を義務付けるモデル事務所を設置しております。具体的には、関西支社では和歌山工事事務所、中国支社では千代田高速道路事務所、四国支社では愛媛工事事務所、九州支社では宮崎高速道路事務所です。これらのモデル事務所では、測量・設計・工事の一連においてBIM/CIMを活用に取り組んでいるところです。今後、技術社員のBIM/CIMに係わる機会を拡大し、全社への浸透を図る方針です。

鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 パシフィックコンサルタンツ株式会社 橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版

立会だけでなく、打ち合わせなどもウェブ会議を活用

人財への投資、NEXCOにかかわる事業への機械や材料の投資は大丈夫

 ――遠隔立会で浮いた時間をどのように生かそうとしていますか

 前川 立会だけでなく、打ち合わせなどもウェブ会議を活用することで、省力化しています。また、様々な日程調整についても工事管理支援システム(Kcube2)を用いることで調整できるようにし、業務の効率化を行っています。ただし、こうした施策で余剰時間ができ、その時間を別に回せるかというと、そういう状況ではありません。受注者も、発注者も2024年問題を考慮すれば、それでも時間が足りないのが実情です。

 ――最後に付言して

 前川 ゼネコンの皆様含め、いつも言っているのは、仕事がなくなるということはないので安心してくださいということです。だから人財への投資、NEXCOにかかわる事業への機械や材料の投資をしていただいても大丈夫ですよ、と言っています。リニューアル工事だけでなく、今年元日に発生した能登半島地震でも痛感したように、国土強靭化の観点から、高速道路のさらなる機能アップ、耐久性の向上は必須であり、建設業界の皆様と一丸となって、業界を盛り立てていければと考えております。

 ――ありがとうございました

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