Interview

国土交通省 能登半島の被災地早期復興に道路面から全力を尽くす

2025.01.01

国道・技術課 西川 昌宏課長インタビュー

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2025年新春インタビュー 国土交通省
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一般市町村が全体の65%にあたる47万7千橋を管理 ただし橋面積は21%程度

一般市町村が全体の65%にあたる47万7千橋を管理 ただし橋面積は21%程度

建設後、50年を経過した橋梁の割合は10年後には6割を超える

 ――現在の国土交通省管轄の橋梁・トンネルの内訳は

 西川 わが国には約73万橋の橋梁があり、国管理橋梁が約39,000橋、高速道路会社管理が約24,000橋、道路公社管理が約2,000橋の一方、地方公共団体が管理する橋梁は約660,000橋と9割以上を占めています。とりわけ財政力の小さい一般市町村(含む特別区)が管理する橋梁が約477,000橋と65%を占めます。一方で橋面積換算では、国・高速道路会社・道路公社で8,000万㎡と5割弱、地方公共団体は8,500万㎡と5割強でその差は2%程度しかなく、とりわけ一般市町村(含む特別区)の橋梁数は多いものの、面積は3,500万㎡と全体の21%程度しかなく、規模の小さい橋梁が多いことを示しています。


道路管理者別橋梁数及び道路種別橋梁数 / 道路管理者別橋面積および道路種別橋面積



管理機関別の橋梁数と供用年次

管理者別の橋長分布


 建設後、50年を経過した橋梁の割合は現在は39%ですが、10年後には約63%に達します。市区町村が多くを管理する橋長15m未満の橋梁の50年経過割合は、10年後には実に7割を超します。このほかにも、建設年度が不明の道路橋が19.5万橋ほどありますが、大半が市区町村管理橋となっています。


建設後50年を経過した橋梁の割合

建設年度別不明橋梁数19.5万橋の割合内訳。市町村橋が84%を占めるが、ほとんどが15m未満である


 トンネルについては、わが国には約1.2万か所あり、このうち、地方公共団体は0.8万か所と約3分の2を占めています。


道路トンネルの現状(道路管理者別および道路種別)


 建設年度別では建設後50年を経過したトンネルの割合は、現在では27%ですが、これが10年後には41%まで上昇します。とりわけ地方公共団体が多くを管理する延長100m未満のトンネルにおける50年経過割合は。10年後に約76%まで達します。建設年次不明トンネル190箇所も、9割以上が地方公共団体が管理するトンネルです。


建設年度別トンネル数

建設後50年を経過したトンネル数

建設年次不明トンネル(190箇所)の割合、市区町村が92%を占める。ただし延長100m未満が85%となっている

橋梁およびトンネルの建設年度別施設数


 ――点検が二巡目まで完了したわけですが、進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答え下さい。また健全度ⅡがⅢやⅣに遷移している状況はないか教えてください

 西川 国土交通省が直轄管理する道路構造物の2019~23年度の2巡目の累積点検実施率は橋梁が99.77%、トンネル100%、道路附属物99.95%となっています。判定区分の割合は、橋梁が健全度Ⅰ57%、Ⅱ33%、Ⅲ10%、Ⅳ0.1%となっています。トンネルは同Ⅰ4%、Ⅱ70%、Ⅲ26%、道路付属物などはⅠ25%、Ⅱ59%、Ⅲ16%、Ⅳ0.02%となっています。


2巡目の点検実施率

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国交省所管IV判定 残り14橋は修繕や架替が進む

全橋梁2巡目点検 Ⅲ、Ⅳ判定の橋梁は1巡目点検に比較して1万強以上減っている

 ――橋梁のⅣ判定が気になります。21橋の橋梁について、詳しく教えてください

 西川 21橋のうち、7橋は昨年度末までに、修繕または架替が完了しています。残る14橋(下表)については、緊急措置を実施したうえで、修繕や架替の事業を進めているとことです。


 ――これを橋梁全体に広げた場合の状況はいかがですか

 西川 2014~18年の点検では69,051橋あった、Ⅲ、Ⅳ判定の橋梁が、23年度の2巡目点検の最終年度では56,463橋と1万橋以上減っており、50年以上経過した橋梁は増加しているにもかかわらず、全体の健全度は上昇していることが分かります。


 ただし、1巡目にⅠ、Ⅱ判定であった橋梁がⅢ、Ⅳ判定に宣した橋梁の割合は全道路管理者で4%に達しており、とりわけ建設後経過年数に比例して、遷移割合が高くなっていることは否めません。

トンネル 21年以上経過したものが判定区分Ⅲ、Ⅳに遷移する割合が高い

Ⅲ判定以上橋梁 地公体の5年以内対策完了率は66%程度にとどまる

 ――トンネルについてはどうですか

 西川 橋梁と同傾向にあります。1巡目にⅠ、Ⅱ判定であったものの内、2巡目でⅢ、Ⅳ判定に遷移した割合は実に15%に達しています。トンネルについては21年以上が経過したものから判定区分Ⅲ、Ⅳへ遷移する割合が高くなっています。


トンネルの管理者別および経過年数別の健全度遷移状況


 ――Ⅲ以上の構造物は、5年以内の修繕など措置が求められていますが、その進捗状況は

 西川 国土交通省、高速道路会社は全ての対象構造物に着手しています。完了率も橋梁は国土交通省で82%、高速道路会社で85%と着実に対策が完了しています。

 一方で地方公共団体は5年以上経過していても着手できていない橋梁が全体の17%に及んでいます。完了率も66%と全体の2/3しか修繕を行えていません。


橋梁の点検後措置着手状況


 トンネルも地方公共団体は5%の該当トンネルで対策着手できていません。
完了率は国土交通省98%、高速道路会社95%ですが、地方公共団体82%となっています。


トンネルの点検後措置着手状況

道路事業における地域一括発注も推進 2023年度は416の市区町村で活用

樋島大橋で直轄診断 鶴舞橋、伊達崎橋で直轄修繕代行

 ――1万橋以上が未着手で、2万橋以上が修繕など措置が行えていない、現状は、非常に危ういものを感じますが、どのように地方公共団体の橋梁やトンネルの対策の進捗を上げていこうと考えていますか

 西川 予算の確保、維持管理体制の支援、技術的な支援を今まで以上にしっかりと行っていきます。例えばメンテナンス事業補助制度は、構造物の修繕、更新、撤去に55%の国費を投入できる制度です。とりわけ構造物はこれからは集約化も必要になってきます。そのためには撤去を行わなければなりませんが、それには合意形成や地元調整がとても大きな意味を持ってきます。そのため集約・撤去事例集を作って知識を共有し、補助を受けやすくして、事業を進めやすくしています。


道路橋の集約化・撤去への取組み


 また、地方公共団体、とりわけ市区町村は財政力が非常に厳しく独力では構造物の維持管理が困難な自治体もあります。またそうした自治体は押並べて土木技術に専門的な知識を有する技術者がいません。したがって、そのような自治体に対し、研修などの支援を実施しているほか、道路事業における地域一括発注も推進いただいています。例えば、隣接する近しい市町村が共同で点検・診断を発注するに当たって、その発注業務を都道府県などの中間自治体が受委託して実施する手法です。2023年度は416の市区町村で活用されています。


地方への技術支援や道路事業の地域一括発注への取組み


 加えて、市区町村や県が対応しきれない技術的に難しい構造物ついては、国が直轄診断あるいは修繕代行事業を行っています。最近では北海道開発局の白老橋(北海道白老町)、近畿地方整備局の鶴舞橋(奈良市)、東北地整の伊達崎橋(福島県伊達郡桑折町)などで、実施しています。。また、本年度は、九州地方整備局では熊本県上天草市龍ヶ岳町の樋島大橋(橋長290.9m、幅員4.5m、昭和47年供用、鋼単純鈑桁+2ヒンジ補剛鋼トラス吊橋+鋼単純鈑桁2連+鋼4径間連続箱桁)で、直轄診断を行っています。


伊達崎橋の損傷状況と復旧方針

樋島大橋

耐震性能2未対策は国交省管理で2,081橋

盛土の耐震基準の改定を予定

 ――直轄において橋梁など耐震補強の進捗状況(耐震性能2)はどの程度進んでいるのでしょうか。また、熊本地震や今回の能登半島地震に対応した耐震対策についても知見をもとにどのようなことが改めて必要になっていると考えているかお答えください。

 西川 全国の緊急輸送道路に指定されている橋梁は約65,000橋あります。国管理橋梁は15,929橋となっていますが、耐震性能2が完了している橋梁は2022年度末時点で13,848橋となっています。残り2,081橋についても対策を進めていきます。


緊急輸送道路における耐震補強進捗状況


 橋梁については、阪神淡路大震災や熊本地震などの知見から耐震基準が強化されており、そのかいもあって、今次地震でも落橋に至った橋梁はありませんでした。一方で、古い基準で設計された道路橋の中には橋台部の変位による段差や橋台背面部の盛土崩壊などが生じるケースもあったことから、新たな技術基準含めその対策は進めていかなければならないと考えています。

――今回、のと里山道路では先の(平成19年)能登半島地震において、対策を施さなかった盛土部が崩壊してしまった箇所が多く散見されました。とりわけ半島部の幹線道路における盛土が崩壊することは地域の復旧に大きな悪影響を与えることが可視化されたわけですが、今後はこうした盛土の耐震化をどのように考えていきますか

 西川 土工とりわけ盛土構造の耐震補強の進め方については、議論が緒に就いたばかりです。点検は迅速に行っていく方針ですが、橋梁やトンネルと比べても著しく多いので、優先順位の決め方や具体的な補強の進め方などについては、現在検討を進めているところです。

 ――しかし半島部においては幹線となる道路が1本しかないことも少なくありません。盛土構造の耐震対策はまずはそのような地域にこそ優先して行うべきではないのでしょうか

 西川 今回の地震を受けて基準の改定を予定しておりまして、今後新たに作るものについては新しい基準に従って整備を行います。整備済みの盛土箇所については、まずは、緊急輸送道路を対象に、今回被害の大きかった集水地形かつ高盛土(10m)の箇所の点検を実施しておりまして、今後、点検結果を踏まえて、補強材挿入、排水ボーリング、砕石竪排水、ふとんかごの設置、基礎地盤処理といった必要な対策を実施していく予定です。


防災・減災対策例

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