国土交通省 能登半島の被災地早期復興に道路面から全力を尽くす
INDEX
国道357号の荒川河口橋など9橋で鋼床版の疲労亀裂を補修補強
国道357号の荒川河口橋など9橋で鋼床版の疲労亀裂を補修補強
2023年度は全国で約149千㎡の塗替えを実施 耐候性鋼材の健全度Ⅲは61橋
――NEXCOや阪神高速、首都高速などでは、大規模リニューアル事業が進んでいます。国交省においても交通量の激しい箇所などにおいて床版取替を行う事例は出ていますが、高速道路各社のようにこうしたリニューアル事業を進めていくお考えはありますでしょうか。また、取替までは至らないまでも、大規模な修繕を行うお考えはありませんでしょうか
西川 国土交通省でも必要であれば、そうした工事を行っています。関東地方整備局では国道357号の荒川河口橋など9橋で鋼床版の疲労亀裂が見つかったためSFRC舗装や当て板による補強などを実施しています。
また、東北地方整備局では仙台西道路の郷六橋で既設RC床版のプレキャストPC床版への取替を行いました。
――2023年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)を教えてください。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から出ている2014年5月30日に出た文書をはじめとした一連の文書・通達を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。
加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください。
西川 2023年度は全国で約149千m2の塗り替えを行いました。(内訳は北海道開発局:約25千m2、東北地整:約12千m2、関東地整:約21千m2、北陸地整:約17千m2、中部地整:約16千m2、近畿地整:約8千m2、中国地整:約14千m2、四国地整:約13千m2、九州地整:約23千m2)
新しい防食技術として、桁部分だけではなく支承部分の若返りの工法などにも使用されている金属溶射の工法も採用しており、国道8号御幸橋などで採用しています。短期間での施工が可能なことと、複雑な形状にも対応できる技術で金属とエポキシ樹脂の二重被膜で防錆効果が高くなっています。
御幸橋における溶射(ショーボンド建設の支承若返り工法を採用)
直轄橋梁では耐候性鋼材を採用した橋梁は1,259橋あり、健全度Ⅲは61橋となっています。
耐候性鋼材使用橋梁数
耐候性鋼材を用いた国道158号油坂第8橋で腐食・層状はく離
1種ケレン、当て板による腐食箇所の補強、C系塗装による塗装を実施
――耐候性鋼材で腐食などが生じている橋梁は非常にブラストが難しく、対応が困難ですが、具体的にどのように補修補強を行っていますか?
西川 耐候性鋼材でも基本的には損傷状況に応じて、部分的にブラストをかけて再塗装する対応としています。国道158号油坂第8橋の事例では、耐候性鋼材の腐食・層状剥離を支点部下フランジで確認され、腐食箇所のブラスト処理による1種ケレン、当て板による腐食箇所の補強、C系塗装による塗装を実施する対応をしました。
国道158号油坂第8橋での耐候性鋼材の損傷対策事例
線状降水帯の発生頻度が近年、あまりにも高くなっている
道路橋などの洗堀対策を一層進める 橋梁の集約・撤去、架替も
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいます。平成30年7月の西日本豪雨など、水害による被災は記憶に新しいと思います。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修もしくは更新(架替)、道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な計画などがございましたら教えてください。また直轄において把握しておられる具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください。
西川 線状降水帯の発生頻度が近年、あまりにも高くなっていると感じます。私は大分県の道路課長や福岡県の県土整備部長として、九州地方の水害にも直面しましたが、「今まで大丈夫」と言われてきたところで、破堤や越水などが生じ、流域に大きな被害を齎すことが多くなっています。道路橋や河川沿いの道路も、台風や豪雨の影響により、大きく被害を受け、道路の崩壊や、橋梁の洗堀などによる流失が生じています。これらは河川部局とも協力しながら、豪雨災害へのハードウェア的な対策を進めていかなければいけないと感じています。
一方で、水害対策を行った箇所では、同様の豪雨が生じても、明らかに被害が生じない、もしくは軽減できています。過去に災害が発生して、対策を行った福岡県の筑後川沿い(上流も含めた)でも、再度の豪雨が生じた際に、被災がかなり軽減されたと感じました。大分の山国川沿いでも復興の際の河川改修や橋梁の堤外橋脚の極小化により河積阻害率の減少などの施策の効果が出ています。また、私が県土整備部長を務めていた2021年にも福岡県久留米市内では大きな水害が生じましたが、国交省、県、市で連携して、池町川地下調節池、地下放水路などの対策を総合的に行って、浸水などの被害を劇的に減らそうと取り組んでいます。こうした対策を進めることで、市民生活を守っていければと考えていますし、国土交通省もそうした施策を一層進めていきます。
道路においては、道路橋などの洗堀対策を一層進めると共に、河積阻害率の高い古い橋梁については、アセットマネジメント面なども考慮して、橋梁の集約・撤去、必要なところは架替えを行い、強靭な道路ネットワークを維持しつつ、豪雨などにおいて、橋梁が災害を助長しないように努めていきます。
働き方改革 工事関係の書類の減少や遠隔臨場を実施
技術力の継承 若手にはできるだけ現場を直接見てもらう
――最後に2024年問題、働き方改革、技術継承について
西川 誰もが働きやすい環境にしないと、この業界に若い人は入って来なくなると思います。国だけでなく地方公共団体や高速道路会社などと一緒になって働きやすい環境を作っていきたいと思っています。私は前職では関東地整の企画部におりまして、いろいろ悩みながら、2024年問題への対応について取り組んだことがあります時間外労働がなぜ生じるか、何が問題なのか、などをきちんと把握して改善に努めてきました。その中で工事関係の書類の減少や遠隔臨場の実施など、は具体的に取り組むことが出来ました。また、女性にとってもなお一層働きやすい現場、業界環境を実現していく必要があります。
一方で、遠隔臨場などを進めるあまり、若手が逆に現場を見なくなっているというご指摘を受けることもあります。業務を効率化して空いた時間に何をするかは、各々の判断となりますが、若手にはできるだけ現場を直接見てもらって、技術力を磨いてもらわなければ技術継承はできませんし、施工会社や設計会社などからの発注者・管理者としての信頼も持たれなくなってしまいます。こうした点も意識しながら、何らかの形で取り組んでいかねばならないと感じています。
――ありがとうございました