Interview

NEXCO東日本北海道支社 大規模更新工事や4車線化が続々と進む

2025.02.13

長大橋の耐震補強も着々と。4車線化は小樽JCT部の長大橋施工に加え、長大トンネルの工事が今後続く

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床版 NEXCO東日本 耐震補強 防食 WJ 大規模更新
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>池田 修氏

東日本高速道路株式会社
北海道支社
道路事業部長

池田 修

 NEXCO東日本北海道支社は、6路線約720kmの管理延長を有している。橋梁は811橋、トンネルも63チューブを管理しており、橋梁が30年以上を経過した数が483橋、トンネルも34チューブに達している。凍結防止剤の影響によるものであろうか、塩分による鉄筋のさび、膨張によるコンクリート部材の損傷が多く、凍害や凍結融解による損傷も見られている。そうした構造物の補修補強や大規模更新・大規模修繕の具体的な内容について聞くと共に、4車線化工事など新設分野の詳細なども含めて、池田修道路事業部長にインタビューした。(井手迫瑞樹)

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811橋を管理、50年以上経過した橋梁は69橋

811橋を管理、50年以上経過した橋梁は69橋

トンネルは63チューブを管理、30年以上経過したトンネルは34チューブ

 ――現在の管内の橋梁・トンネルの内訳は

 池田部長 橋梁については、811橋を管理しており、RC橋が437連、PC橋が671連、鋼橋が561連です。延長別では50m未満が638連、50~100m未満が422連、100~500m未満が603連、500m以上が6連となっています。また、供用年次別では、30年以上~40年未満を経過した橋梁が252橋で、全体の約3割を占めています。また、40年以上~50年未満経過橋梁が162橋、50年以上経過している橋梁が69橋となっています。50年以上経過した橋梁は札樽自動車道(以降、「札樽道」)の小樽IC~札幌西ICと道央自動車道(以降、「道央道」)の北広島IC~千歳IC間にあるもので、1972年の札幌五輪に間に合わせるために建設された橋梁です。

 路線別では道央道が540橋(66.6%)と約3分の2を占めており、次いで道東自動車道(以降、「道東道」)が154橋(19.0%)と続いています。


 トンネルについては、63チューブを管理しています。そのうち、NATM工法が44チューブ、在来工法が16チューブ、BOX構造が3チューブです。延長別では、100m未満が1チューブ、100m以上500m未満が19チューブ、500m以上1,000m未満が18チューブ、1,000m以上が25チューブです。

 供用年次別では、10~20年が18チューブ(28.6%)と最も多く、30年以上経過したトンネルは34チューブで約4割となっています。路線別では、道央道が32チューブと約半数を占めています。

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1巡目の点検では健全性Ⅲの橋梁は136橋を確認、札樽道の39橋は同道全体の4割超

健全性Ⅲのトンネルは5割を超える、道央道では同道全体の約3分の2が健全性Ⅲ

 ――管内の所管地域の構造物の管理状況について、点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答えください。まずは橋梁からお願いします

 池田 診断の結果、健全性Ⅲ(早期措置段階)の橋梁136橋(16.8%)が確認されています。高速道路会社が管理する橋梁全体と比較すると、健全性Ⅲを占める割合が多くなっています。

管理橋梁の健全性判定区分


 路線別に見ると、札樽道において、健全性Ⅲが39橋(札樽道の橋梁の43.8%)確認されており、北海道内平均や全国平均と比較して、損傷が進行している傾向が特に高くなっています。札樽道の供用年次が古く、塩化物イオン総量が多く、床版防水が長く未設置であった橋梁で損傷度合いが速くなる傾向があります。凍結融解も要因としてはありますが、やはり塩分が浸透し、鉄筋がさび、膨張することでコンクリートが損傷しています。

路線ごとの橋梁の健全性


 損傷の傾向としては、橋梁排水施設や床版、伸縮装置、下部構造の損傷が多くなっています。下部構造では、コンクリートの剥落、および鉄筋腐食が見られています。橋梁床版下面にはひび割れやエフロレッセンスも生じています。

 ――同様にトンネルは

 池田 診断の結果、健全性Ⅲ(早期措置段階)のトンネルが34チューブ(54%)、確認されています。高速道路会社が管理するトンネル全体と比較すると、健全性Ⅲの占める割合は多くなっています。

トンネルの健全性判定区分


 路線別では、道央道において、健全性Ⅲが21チューブ確認されました。これは道央道の実に65.6%にあたります。札樽道は6チューブ全てが健全性Ⅲとなっています。以上、2路線は北海道内平均や全国平均と比較して損傷が進行している傾向が特に高くなっています。

トンネルの路線ごとの健全性


 損傷の傾向としては、覆工・側壁におけるコンクリート剥離や剥落、鋼材腐食が多くなっています。


トンネルの損傷状況


 ――道路軸方向にひび割れが生じるなどの比較的シリアスな損傷はありますか。

 池田 それはありません。クラウン部の継ぎ目の剥離などがほとんどです。ただ、在来矢板工法で作られたトンネルだけでなく、NATMで建設されたトンネルでも損傷が起きています。在来矢板工法で作られたトンネルでは、鉄筋が腐食している箇所も見つかっています。

 ――以前、NEXCO中日本の敦賀保全サービスセンターを取材した際、印象に残ったのは、冬季はいつも朝方に氷柱を落とすことから始まると言っていた言葉でした。北海道支社でも同様なことが起きていますか

 池田 起きています。道央道の深川IC~旭川鷹栖IC間にある江丹別トンネルの1期線は地山の水がトンネル覆工の打継ぎ目から入りやすく、氷柱ができやすくなっています。打継ぎ目部に導水板などを設置していますが、導水板が損傷することがままあります。また、各トンネル坑口の氷柱はもちろん、高架橋の氷柱を落とすことも冬の大事な仕事です。

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耐震補強対象橋梁は420橋、55%が完了

ロッキング橋脚は全数で耐震補強を完了、桜森橋ではSTマイクロパイルで基礎を補強

 ――橋梁等耐震補強の進捗状況および、落橋防止装置の設置状況、2024年度の設置予定について教えてください

 池田 北海道支社の橋脚耐震補強対象橋梁は420橋あり、55%にあたる230橋の補強が完了しています。ロッキング橋脚については6橋ありましたが全て完了しています。

耐震補強の進捗状況


 また、残り半数はいずれも更なる耐震が必要な橋梁で190橋程度が残っています。現在契約中の工事は4件あり、21橋梁の耐震補強を実施しています。落橋防止対策は北海道支社管内全橋(811橋)で対応を完了しています。

 ――残りの更なる耐震対象である190橋についてはどのように対応していく考えですか

 池田 大規模地震発生確率が26%以上の地域の耐震補強が優先されており、残り190橋については、その後、順次対策を進めていく方針です。

更なる耐震対象工事実施状況(上)と契約中の工事の詳細(下)



 ――ロッキング橋脚とロッカー橋脚についてどのように対策を行っているか教えてください

 池田 北海道支社のロッキング橋脚は6橋あり、全ての橋脚で補強が完了しています。ロッカー橋脚はありません。対策工法としては、RCおよび繊維シートによる橋脚巻立てを主とし、一部基礎の補強も行っています。


ロッキング橋脚の補強事例


 道央道の恵庭IC~北広島IC間に架かる桜森橋では、低空頭で狭小部でも施工できるマイクロパイル(STマイクロパイル工法)を用いて基礎を補強しフーチングを増厚しました。また、橋脚柱部はRCで巻立て、さらに炭素繊維シートで巻立て補強しました。これは、交差する国道の建築限界に配慮し、できるだけ薄く補強するためです。他の4橋はラーメン構造にしていますが、桜森橋は、鋼鈑桁橋のため支承構造としました。

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長大特殊橋は12橋 8橋が耐震補強を完了、4橋が更なる耐震の対象

橋梁の長寿命化修繕計画 188橋が健全性Ⅲと判定され、126橋が補修に着手済

 ――長大特殊橋の耐震補強の進捗状況を教えてください

 池田 長大特殊橋は12橋あり、内訳は連続トラス橋が10橋、単純トラス橋が1橋、単弦ローゼ橋が1橋です。更なる耐震事業の対象4橋を除く8橋が耐震補強を完了しています。

長大特殊橋の耐震補強進捗状況


 更なる耐震事業の対象4橋はいずれも道央道深川IC~旭川鷹栖IC間の幌内橋(上り線橋長114m、下り線122m、上下線とも鋼2径間連続トラス)と幌内二の沢橋(上り線橋長166.15m、下り線166.15m、上下線とも鋼2径間連続トラス)で、いずれも下り線を優先して補強する方針です。

――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。

 池田 『インフラ長寿命化計画(行動計画)』に基づき、橋梁の修繕計画を立てて順次実施しています。

 省令点検一巡目にて健全性Ⅲと判定した橋梁は138橋あり、令和5年度までに116橋が補修に着手済みで、その内52橋が二巡目点検で健全性Ⅱ以下に再判定済です。さらに、省令点検二巡目にて健全性Ⅲと判定した橋梁が新たに50橋あり、令和5年度までに10橋が補修に着手済です。


 以上の合計で188橋が健全性Ⅲと判定され、126橋が補修に着手済です。また、188橋のうち再判定済の52橋を除いた136橋が、現在も健全性Ⅲ判定として残っています。

 なお、損傷の主な要因は伸縮装置や排水装置からの漏水で、それによって下部工の損傷、支承や桁端部の損傷などが発生する事例が多く見受けられています。

現在施工中の補修補強工事一覧


 --一巡目の残り22橋については

 池田 来年度以降に着手します。支承高が高い箇所はゴム支承に変えて、橋台の前面や桁端部はコンクリート保護塗装を行うなど、長期耐久性を強化する対策を施していきます。

 ――塩害やASRなどによる劣化の有無を教えてください。また、その損傷状況や対策手法などについても教えてください

 池田 橋梁下部工やコンクリート橋上部工においては塩害による劣化が見られます。伸縮装置の止水材劣化や橋梁排水装置の損傷により漏水が発生し、凍結防止剤に由来する塩分を含んだ水が桁や下部工に到達し、構造物の損傷原因になっています。一方で、ASRによる劣化は確認されていません。


コンクリート桁の塩害による損傷状況


 コンクリート構造物で塩害が疑われる変状に対しては、影響範囲を塩分調査やたたき点検で特定し、劣化部分のはつり、鉄筋防錆、断面修復、剥落対策を実施しています。塩分含有量が多い場合は、防錆剤(亜硝酸リチウム)を添加した断面修復材を使用して補修します。

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