Interview

NEXCO東日本北海道支社 大規模更新工事や4車線化が続々と進む

2025.02.13

長大橋の耐震補強も着々と。4車線化は小樽JCT部の長大橋施工に加え、長大トンネルの工事が今後続く

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WJ 大規模更新 床版 NEXCO東日本 耐震補強 防食
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全くの防水工未設置は68橋で、札樽道、道央道の古い時期に供用された橋梁に集中

床版取替 今年度で23橋を完了

床版取替工事の発注方式には、「継続契約方式」を採用

 ――大規模更新・大規模修繕事業のここ数年の実績と、今後の予定について詳細に述べてください。また、発注の工夫、施工上の対策、同事業における新技術・新工法の活用などについて、現場ごとに行っている対策を詳細に述べて下さい。

 池田 平成30年度から道央道島松川橋を端緒に床版取替を実施しており、今年度で23橋が完了予定となっています。

 直近の施工実績としては、令和4年度に2橋約6,000㎡、5年度に8橋約8,000㎡、6年度に7橋約5,000㎡で実施しています。


床版取替の進捗状況


大規模更新の直近の施工状況


 ――今後の予定は

 池田 今年度は札幌管理事務所管内の道央道市来知川(いちきしりがわ)橋床版取替工事、北広島管理事務所管内の道央道茂漁(もいざり)川橋床版取替工事、道央道苫小牧川橋床版取替工事を(下表)発注予定としています。いずれも既設RC床版をプレキャストPC床版へ取替える工事です。

今年度の発注予定


 ――発注時の工夫について

 池田 床版取替工事の発注方式には、事業計画を鑑み「継続契約方式」を採用しています。本方式を採用することにより、当初発注工事におけるノウハウを後発工事に活用することができ、安全面や品質面の向上、調達手続きの効率化による受発注者双方の負担軽減を期待しています。


継続契約方式を採用


 ――施工上の対策などで特筆すべき点はありませんか

 池田 道央道の大規模更新工事において、重交通区間でロードジッパーを活用した車線運用を実施しています。上下4車線のうち3車線を常時確保するもので、午前中は旭川方面を2車線確保、午後は札幌方面を2車線確保する運用を行うことで、朝夕の渋滞特性に応じた規制ができ、渋滞を回避しています。


ロードジッパーを活用した車線運用を実施


 実績としては、令和4~6年度において、秋期の渋滞発生が見込まれる時間帯に対して時間帯別車線切替規制を実施しながら大規模更新工事(床版取替)を実施しました。

 また、ロードジッパーを活用した車線運用でも、交通量が多く渋滞が予想される区間におきましては、常時、上下4車線(片側2車線)を確保した半断面での床版取替を検討しています。


半断面での床版取替工を検討

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千歳川大橋(下り線)床版取替工事などで「すいすいC&T工法」を採用

BLG採用を検討も課題は道内にクッカー車がないこと

 ――床版取替における施工上の新技術は

 池田 高度技術提案を求めた千歳川大橋(下り線)床版取替工事およびママチ川橋床版取替工事(下表)においては、耐久性向上および工程短縮を図るべく、プレキャストPC床版の継手工法に新技術である「すいすいC&T工法」を採用しています。同工法を採用することで間詰幅を狭くすることができ、プレキャストPC床版パネルの枚数と間詰めコンクリート打設量を減らし、施工日数を短縮することができました。



すいすいC&T工法

 ――道央道では、RC中空床版橋の床版打換えも行ったと聞きます

 池田 道央道と国道337号が交差する江別東IC付近の337号橋で損傷したRC中空床版橋の床版打換えを今秋行いました。張出床版はワイヤーソーで切断し、床版上面(はつり厚さは120~150mm)はWJなどではつり、現場打ちコンクリートで打換えました。壁高欄にはプレキャスト壁高欄を用いました。


337号橋 床版上面のコンクリートはつりにはWJ(コリジョンジェット)を採用した。


 床版上面はつり時における円筒型枠の損傷を最大限抑制するため、WJはキャリブレーションに優れたコリジョンジェット工法を採用しました。それでも損傷した箇所については、R加工した鋼板で当板補修を行い、場所打コンクリートを打設しました。(編注:詳しくは「たのしい土木」で報じます)。

 ――次に大規模修繕についてお聞きします。高性能床版防水いわゆるグレードⅡ相当の設置状況はどのようになっていますか

 池田 811橋中、建設時に施工済みは34橋(4%)、供用後に防水工の施工を行った橋梁は159橋(20%)で、そのうち床版取替工で21橋を施工しています。未施工は618橋に上りますが、グレードⅠ相当の防水工は550橋で実施しています。全くの防水工未設置は68橋で、札樽道、道央道の古い時期に供用された橋梁に集中しています。

 直近の施工実績は、令和4年度が13橋約4,500㎡、5年度が7橋約600㎡、6年度が7橋約400㎡となっています。

 ――比較的残数に比して規模が少ないように思えますが、今後の施工方針をどのように考えていますか

 池田 未施工箇所に対しては、舗装補修計画に合わせて高性能床版防水工を随時実施していきます。昼夜連続車線規制の確保が困難な箇所にある橋梁については、BLG(Bridge Levelling Guss asphalt)による床版防水を検討中です。ただ、道内にはグースアスファルト用のクッカー車が1台もない状況であるため、機材調達が課題となっています。

 ――クッカー車の導入費用は安くありません。北海道支社や北海道開発局など関係諸機関が規模感を提示しなければ、なかなか新規導入や、本州からの移動に踏み切るのは難しいでしょうね

 池田 その点は認識しています。何らかの形で示せれば、と考えております。

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トンネル大規模修繕 覆工の補修などに着手

のり面対策 道央道丸加山地区で排土工を実施 盛り土対策は来年度からの3か年で約50箇所を発注予定

 ――トンネルの大規模修繕は

 池田 覆工の補修については、背面空洞の補修材注入や、断面修復、剥落防止対策、漏水防止板設置などの補修工事に着手しています。

トンネルの大規模修繕


 インバートの設置については、現時点において路盤の隆起が発生していないため、経過観察中です。直近では令和4年度に2チューブ、5、6年度にそれぞれ1チューブずつ施工しています。

 ――グラウンドアンカー対策やのり面などへの大規模更新事業については、どのように進捗していますか

 池田 のり面のグラウンドアンカーのうち、耐久性に劣る旧タイプであり、かつ機能低下がみられる箇所においてはモニタリングなどを行ったうえで、必要な箇所には対策工を実施していきます。


リフトオフ試験概要図


 なお、リフトオフ試験については、全アンカー本数のうち、約20%を抽出して確認する試験を実施済みです。

 令和6年度から道央道滝川IC~深川IC間ののり面1地区(道央道丸加山地区)において施工を行っています。複数工法を比較検討したうえで、アンカー上部の土を排除して荷重を低減する「排土工」を採用しています。


道央道丸加山地区における排土工施工状況


 今後も旧タイプアンカーの機能低下がみられるのり面に対して、新タイプのアンカーを増打ちするなどの対策を計画中です。現時点では2件の設計業務を進めています。

土構造物の大規模修繕


 ――切盛り土などへの大規模修繕については、どのように進捗していますか

 池田 盛土脆弱岩対策としては、盛土のり面が3段以上で盛土内に被圧水が確認された箇所において対策を進めています。令和3年度から盛土内排水対策として水抜きボーリングなどを順次施工しており、5年度までの3年間で約50箇所、今年度は約20箇所で対策を完了する予定です。また、来年度からの3年間で、新たに約50箇所を発注する予定です。

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今年度、支承取替42基、伸縮装置取替70箇所を実施

伸縮装置は損傷が比較的進行している

 ――支承取替や伸縮装置の取替について、今年度の施工予定箇所数と取替える際の工法・種類を教えてください

 池田 支承取替は42基、伸縮装置取替は70箇所で行います。支承取替は既設鋼製支承をゴム支承に取替えています。伸縮装置は既設各種(埋設、製品、フィンガー)ジョイントを同タイプの新設伸縮装置に取替えています。

 ――伸縮装置については、最近、劣化した止水部だけを取替えるといった手法も主にNEXCO西日本を中心に行われていますが、北海道支社はどうですか

 池田 損傷している伸縮装置は伸縮装置本体の鋼材部が完全に錆びてしまっているなど、比較的進行した損傷となっており、全体を取替える必要があります。今後、予防保全にシフトしていければ、そうした止水部だけを取替えるといったようなこともできるかもしれません。

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