Interview
NEXCO東日本北海道支社 大規模更新工事や4車線化が続々と進む
INDEX
塗替え 23年度は106,000㎡、24年度は39,000㎡で実施
塗替え 23年度は106,000㎡、24年度は39,000㎡で実施
耐候性鋼材は40橋で採用、ボクサタナイ橋で主桁端部の腐食減肉が見られる
――2023年度の鋼橋塗替え実績と24年度の予定を教えてください。
池田 23年度の実績は13橋約106,000㎡、24年度予定は11橋約39,000㎡となっています。
鋼橋塗替え工事状況
とりわけ札樽道の札幌西ICから札幌JCT間は供用開始から30年経過しており、塗替え塗装の時期に入っています。旧塗装には鉛が含まれており、旧塗装の剥離および下地処理に留意が必要で、塗膜剥離剤などを使用していきます。
鈑桁の塗膜劣化状況
剥離剤に含まれる化学物質への引火による火災や吸入による中毒リスクに関しては、厚労省の通達に基づく対策を徹底しています。すなわち、施工計画立案時や現場における注意・留意事項をチェックシート化し、受発注者双方で確認することで、対策の確実性を高めています。
塗膜処理時の安全対策(防護服の着用)
さらに国道の規制があって夜間にしか施工ができない箇所や、冬期間などに塗膜剥離剤では除去が難しい箇所についてはIH式塗膜剥離を用いて塗膜剥離を行っています。例えば創成川東高架橋では、移動足場を使用しながら規制箇所を盛替え、IH式塗膜剥離工法による塗膜剥離を実施しました。
創成川東高架橋の足場架設状況
創成川東高架橋の既設塗膜剥離状況
メップ川橋
メップ川橋(東工区)の施工状況。水洗いによる除塩(写真左)やIHでの塗膜剥離(写真中)を行った上で塗替えた。
メップ川橋(西工区)の塗膜塗替えは、循環式ブラストで施工し、耐塩性の高い下地塗料を用いたうえで、塗替えた
また、メップ川橋A1~P3では、当初、水洗いによる除塩(P3~A2では実際に行った)を計画しましたが、河川管理者と施工に関する協議を実施した結果、メップ川は鮭及び鱒の遡上流域であることから、河川への工事廃液の流入が考えられる手法は採用不可となりました。
そこで、工事用排水+粉塵の発生量が少ない循環式ブラスト工法を採用しました。同工法では鋼材表面の塩分を完全に除去することが難しいため、耐塩性の高い下地塗料を用いています。
塗装仕様はC5塗装を基本としています。建設時にランプ橋などの高速道路を横架する橋梁(千歳恵庭JCT-Cランプ、小樽JCT-Bランプ橋)については、交差部に金属溶射を実施しています。
――耐候性鋼材の使用事例と損傷事例はありませんか
池田 北海道支社管内では、40橋で耐候性鋼材を採用しています。経年的には20~40年程度経た橋梁で使われていますが、それほど大きな損傷は見られていません。ただし、道央道長万部IC~黒松内JCTに位置するボクサタナイ橋(62m,鋼3径間連結合成H型桁橋)で健全性Ⅲを示す変状である主桁端部の腐食減肉が見られており、対策を検討中です。
耐候性鋼材の採用状況
耐候性鋼材橋の損傷状況
――どのような対策を考えておいでですか
池田 水洗いで塩分を除去した上でブラストによる素地調整を行い、塗装や補強することを視野に入れています。
その他、健全性Ⅲに至っていない橋梁についても、伸縮装置等から漏水が接触する箇所は安定錆が出ておらず、発錆していることから、何らかの対策を行う必要があります。
対策済みののり面の一部で変位量や地下水位を計測する動態観測を行う
通水に阻害が起きないよう、支社内の排水施設の維持管理を3~4年間で一周
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、NEXCO東日本でも道路に面する斜面や古いのり面、盛土構造などをどのように守っていこうと考えておいでですか
池田 高速道路における安全・安心実施計画(令和元年)において、のり面や排水機能の強化による耐災害性の向上を掲げ対策を進めています。
道路に面する斜面については、道路区域外からの土砂流対策について、航空レーザー測量などにより、高速道路区域外の危険箇所の抽出を行っています。
とりわけ土石流に対するリスクを減らすためには、河川管理者と深く議論を進め、渓流などへの対策を行っていく必要があります。
風水害対策の機能強化
古いのり面や盛土構造については、過去に地滑りや崩落などの対策を講じたのり面に対し、変位量や地下水位を計測する動態観測を行っています。のり面排水施設から雨水などが溢水し、のり面へ浸透することを阻止するため、年間計画を立てて、排水施設の清掃作業を行っています。これは実働としてはネクスコ・メンテナンス北海道が行っており、支社内の排水施設の維持管理を3~4年間で一周できるようにして、通水に阻害が起きないようにする方針としています。
その他、外部機関との合同防災訓練を実施し、災害時の連携強化を図っています。
昨年5月には『NTT東日本 北海道グループ・陸自北部方面隊共同防災演習』に参画し、災害通行止め時のNTT緊急車両の通行における連携について演習を行いました。
各種防災訓練も行い、災害時に備えている
9月には『区画柵の開口部設置・復旧模擬訓練』を行い、橋梁に施工設置している新型車線区画柵の事故復旧訓練を地元消防などとも関係機関と共同で実施しました。
また同月には、『大夕張トンネル合同事故対策訓練』を行いました。トンネル内での衝突事故および火災発生を想定した総合防災訓練です。消防など関係機関と合同で実施しました。