Interview

NEXCO東日本北海道支社 大規模更新工事や4車線化が続々と進む

2025.02.13

長大橋の耐震補強も着々と。4車線化は小樽JCT部の長大橋施工に加え、長大トンネルの工事が今後続く

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WJ 大規模更新 床版 NEXCO東日本 耐震補強 防食
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小樽JCTフル化事業 橋長641mの11径間連続鋼・コンクリート混合箱桁橋を施工

小樽JCTフル化事業 橋長641mの11径間連続鋼・コンクリート混合箱桁橋を施工

PC部は押出架設、鋼桁部は一括架設とクレーン架設

 ――さて、話は変わりますが、北海道支社における4車線化、付加車線設置事業、新設延伸事業などの管内の状況と、各路線の構造物比率、特殊橋や長大橋、長大トンネルなどについて具体的構造物を交えて、進捗状況や技術的な工夫を具体的に教えてください

 池田 北海道支社における主な事業中のプロジェクトは、新設が①小樽ジャンクション(以降、JCT)フル化事業、②道東道4車線化事業、③スマートインターチェンジ(以降、SIC)事業です。また改築リニューアル事業が、④札幌市内連続高架区間橋梁リニューアル事業、⑤高速道路リニューアルプロジェクト、⑥橋梁耐震補強事業となっています。

小樽JCTCランプ橋


 まず①小樽JCTフル化事業は、後志道と札樽道をつなぐ小樽JCTCランプ橋の建設により小樽JCTをフル化するものです。

 橋梁形式は11径間連続鋼・コンクリート混合箱桁となっています。また下部工は、橋台がA1、A2ともに逆T式で直接基礎、橋脚がP1~P10すべて単柱式橋脚(一部で張出あり)で大口径深礎杭としています。橋長641m(PC449.5m、鋼191.5m)の混合橋で、五洋建設(株)・(株)ピーエス・コンストラクション・(株)横河ブリッジJVが施工しています。


小樽JCTCランプ橋


 鋼橋の架設方法は、札樽道上空のA1~P1(77.0m)を夜間通行止めを行って多軸台車による一括架設、P1~P3(PC橋との境目まで114.5m)をクレーン架設で行います。PC橋の施工は、P2・P3間の鋼橋との境目~P4(68.5m)を固定支保工による現場打ち施工、P4~A2(381.0m)を押出架設で施工を行います。押出架設は、A2背面の建屋内で約13mのPC桁を製作し、順次押出ししていくものです。

 現在は、下部工が橋台2基と橋脚4基を完成させており、上部工はPC桁の押出架設中で、鋼桁は桁地組を進めています。鋼橋の架設は令和7年度を予定しています。

コンクリートを”はつる” コッター床版工法 価値ある環境を未来に

道東道の4車線化事業 橋梁は3橋の上部工で施工が進む

狩勝第一、第二、ホロカトマム、東占冠など長大トンネルの工事も進む

 ――道東道の4車線化事業は

 池田 占冠IC~トマムIC間約19.9kmとトマムIC~十勝清水IC間約18.6km、追分町IC~夕張IC間約4.1kmが該当します。


追分~夕張間の4車線化事業概要図


各IC間の構造物比率

道東道4車線化 構造物一覧


 

 先行して事業化された十勝清水IC側では、令和3年度に橋梁下部工やトンネルを含む土工工事を2件、PC上部工工事を1件、鋼橋上部工工事を1件と令和5年度に舗装工事を1件、令和6年度に施設工事2件の合計7件の工事発注を実施しています。

 土工工事2件は土工概成しており、令和5年12月に広内トンネルが貫通しています。橋梁は3橋の上部工で施工が進んでおり、広内川橋は鋼上部工を施工中、ペケレベツ川橋は鋼桁架設を終え、現場打ち床版工を施工中です。PC橋ではペンケオタソイ川橋の張り出し架設(3橋とも詳細は下表参照)が進んでいます。


 また、同IC間のトマムIC側では、現在工事発注を行っています。

 令和5年度にトンネル工事1件(狩勝第一トンネル(延長約2.5㎞)、附帯工工事1件の合計2件の工事発注を実施しており、令和6年度には土工工事1件(トマムIC工事)、トンネル工事1件(狩勝第二トンネル東工事(工区延長約1.5km))の工事発注を実施しています。

 占冠IC~トマムIC間の4車線化事業は延長約19.9kmの事業を進めています。

 令和5年度にトンネル工事2件(ホロカトマムトンネル工事、延長約2kmと東占冠トンネル工事、延長約2.5km)、土工工事1件(占冠PA工事)、合計3件の工事発注を実施しました。

 追分町IC~夕張IC間は測量業務の発注に向けて準備を行っています。


  ――4車線化事業において技術的に難しい構造物はありませんか

 池田 東占冠トンネルが該当します。蛇紋岩という非常に風化しやすく、脆く崩れやすい岩石を含んだ山をトンネル掘削するもので、掘削中は1期線のトンネルに影響を与えないように、トンネル内を計測しながら、慎重に工事を進める必要があります。具体的にはⅠ期線とⅡ期線の離隔を最大約60m離して施工します。

 また、Ⅰ期線とⅡ期線を結ぶ避難連絡坑の施工には、走行車両に影響が無いように低騒音・低振動の工法で施工していく予定です。

 ――そのほか技術的な工夫を施しているところは

 池田 建設事業においては、構造物の高耐久化につながる取組みを実施しています。

 例えば構造物の最外縁に配置する鉄筋は防錆処理された鉄筋を使用し、構造物の耐久性向上を図っています。

 また、寒冷地の地域特性を考慮して、橋梁検査路や排水管の材料仕様にも気を遣っています。

 例えば従来使われていた鋼製の橋梁検査路では凍結防止剤により腐食が生じる可能性が大きいため、北海道支社ではFRP製やアルミ製検査路など、耐防食性能の高い材質の検査路を採用しています。


様々な技術的工夫


 また、排水管も従前は鋼製排水管を採用しましたが、排水管内部の水が冬季に凍結膨張し、排水管の継手部が破損する事象が発生しています。そのため、耐凍結性に優れた継手構造の高密度ポリエチレン管を採用しています。

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SIC事業 長流枝PAの手前にSICを設置、橋長39.4mのPC単純合成桁も施工予定

新得SIC 観光拠点だけでなく防災拠点としても重要 ランプ橋は本線から施設への流入ランプ部で交差する構造

 ――SIC事業に関しては

 池田 長流枝スマートインターチェンジ(以降、SIC)事業を進めています。


長流枝SIC位置図


 道東道の音更帯広IC~池田IC間の音更帯広ICから約9.3km、池田ICから約12.3kmの位置、ちょうど長流枝PAの手前にSICを設置する事業です。付近は十勝川温泉や十勝川エコロジーパーク、道の駅ガーデンスパ十勝川温泉などが立地しており、SICを設置することで、観光地へのアクセス性・利便性の向上が見込まれます。

 産業振興の面からも重要です。十勝管内はわが国最大の肉用牛の生産地です。幕別町に立地する十勝中央家畜市場は、全国3位の取扱量であり、出荷頭数は10年で約4倍に急増しています。とりわけ生体牛は品質を保つため、ストレスを与えない高速道路輸送が行われており、SICの設置により、さらなる輸送の効率化を図ることが可能となります。

 令和5年度に橋梁上下部工を含む土工工事1件の工事発注を実施しています。


 

 ――橋梁の規模を教えてください

 池田 長流枝内川橋(仮称)で橋長39.4mのPC単純合成桁を採用しています。

 もう一つ、新得SIC事業も進めています。


新得SIC位置図


 ――新得SIC事業の内容を教えてください

 池田 同事業は道東道のトマムICから約13.1km、十勝清水ICから約7.8kmの位置にSA・PAも兼ねたSICを新設するものです。

 付近にあるサホロリゾートスキー場は、十勝で最大規模のスキー場であり、シーズンには国内外からたくさんのスキー客が来場しています。一方で、現在までの道路アクセス状況は最寄りの両ICを降りると危険性の高い狭小区間や峠道を通る必要があり、アクセス時間が長く、危険でもありました。SICを設置することで、アクセス時間も短くなりますし、通行時の危険性も少なくできます。

 防災拠点としてもSA、PA接続型の新得SICは期待できます。

 新得町内の指定避難所の大半は浸水区域内にあり、周辺地域を含めて平成28年8月の台風時は多数が被災しました。通行止め実績のある十勝清水IC、トマムICからのルートでは災害時の防災体制に課題があります。同SICを整備することで、新得町が防災拠点としても新たに整備予定である道の駅と連携して、防災体制を強化していきます。

 現在は設計業務に着手しています。建設予定の本線を跨ぐランプ橋(橋長約45m、形式検討中)が本線から施設への流入ランプ部で交差するため、ランプと橋梁のクリアランス確保など橋梁構造を工夫する必要があります。構造形式を含めて、設計の段階で十分に検討していきます。

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PAの舗装補修でICT舗装を試行的に採用

路盤も含めた舗装の高耐久化を検討

 ――保全も含めた新技術やコスト縮減策または独自の新技術・新材料の活用について

 池田 令和5年度に比布大雪PA駐車場の舗装補修工事(日本道路(株)が施工)でICT舗装を試行的に採用しました。工種はMC(マシンコントロール)切削、TS(トータルステーション)による出来形管理です。


ICT舗装を施工した比布大雪PAの位置図と概要図

ICT舗装の施工状況


 ――試行してみての結果はどう感じられましたか

 池田 おおむね省力化、省人化、現場工期の短縮は図ることができる見込みです。ただし、本線上はまだ使える見込みではありません。また、現場での施工時間は短縮できますが、ICTでは座標登録と3次元設計データ作成作業などが必要となるため、内業は増加します。このため、ICT機器費用で約500万円(本試行工事の場合)のコストアップも生じます。

 耐震補強工事では、河川内橋脚の補強が必要な箇所において、制震ダンパーを用いて当該橋脚に作用する地震力を低減させることで、施工に要する費用の削減を実現しました。その結果、河川内橋脚の補強を回避でき、約7,000万円ものコスト削減効果がでました(道央道朱太川橋、TSUCHIYA(株)が施工)。


耐震補強工事によるコスト縮減


 ――舗装の脆弱な路盤が「さらなる知見」で大規模更新メニューの中に入ってきていますが、北海道支社はそうした損傷はありませんか

 池田 あります。支社管内で舗装のポットホールが多発しています。ゼロクロッシング(1日の間に気温が0℃前後を上下する気温の変化)が多くなる融雪期に多発しておりまして、凍結融解が原因の一つとして疑われています。路盤の施工時の締固め不足や上部舗装から路盤への水の浸入なども疑われています。


ポットホールの発生状況と補修状況

ゼロクロッシングが多くなる融雪期に多発しており、凍結融解が原因の一つとして疑われている

本補修状況


 緊急的には通常の舗装補修で対応しますが、抜本的には損傷状況を調査したうえで、路盤も含めた舗装の高耐久化を検討しています。このような舗装の劣化事例については、外部有識者を含めた技術検討会を立ち上げ、発生要因の分析なども行っています。

 ――ありがとうございました

コンクリートを”はつる” コッター床版工法 価値ある環境を未来に

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