静岡県 南北交通と伊豆半島の道路整備が課題
INDEX
静浦バイパスⅡ期 有料道路事業を導入して早期の開通を目指す
地域高規格道路「金谷御前崎連絡道路」 金谷相良道路Ⅱ工区が2024年度に開通
残る金谷相良道路Ⅲ工区約1.8kmでは2橋を建設予定
――進捗中の各事業路線の概要と進捗状況を教えて下さい
森本 地域高規格道路「金谷御前崎連絡道路」は、国道150号や国道473号のバイパスとして整備を進めており、これまでに全体約30kmのうち約22kmが完成しています。
国道1号菊川IC(島田市菊川)から倉沢IC(菊川市倉沢)までの約3.3km区間について、2011年度から国道473号「金谷相良道路Ⅱ工区」として整備を進めており、2024年度の開通を予定しております。
Ⅱ工区は今年度開通を予定している(静岡県提供資料より抜粋)
また、現道を活用して供用している沢水加IC(菊川市沢水加)から(仮称)八十原IC(牧之原市東萩間)までの約1.8kmについては、金谷相良道路Ⅱ工区の開通後、切れ目なく整備を進められるよう、2023年度に国道473号「金谷相良道路Ⅲ工区」として新規事業化しました。この区間には、東名相良牧之原ICに直結する新しいICも整備されます。用地は概ね取得済みであることから、早期の工事着手を目指し、測量、地質調査、道路設計、函渠(BOX)設計などを進めています。代表的な構造物としては、東名跨道橋である(仮称)1号橋、牧之原台地の谷部を横架する(仮称)2号橋があり、今後(次年度以降)、設計を実施します。
過年度に実施した予備設計では、1号橋が47.5m、2号橋が250mで計画しています。
静浦バイパスⅡ期 有料道路事業を導入して早期の開通を目指す
構造物比率は約65% (仮称)静浦2号トンネルは延長約1.7km
――国道414号静浦バイパスⅡ期工区は
森本 国道414号「静浦バイパス」は、沼津市下香貫から伊豆の国市南江間の長岡北ICに至る延長約6.9kmの幹線道路です。沼津市静浦地区を通る国道414号現道の狭隘区間の解消、主要渋滞ポイントである「口野交差点」の渋滞緩和、大規模災害時の緊急輸送路の確保を図るものです。第三次緊急輸送路である現道は津波浸水想定区域内を通過しており、道路を横断する通称「獅子浜陸閘」(獅子浜13号門扉)があるため、東日本大震災の際には門扉が閉鎖され、交通が遮断されました。
静浦バイパス全体概要図。Ⅱ期工区は概要図の南側にあたる(静岡県提供資料より抜粋)
沼津市下香貫から香貫山の反対側の沼津市大平に抜けるⅠ期工区約2.5kmを、2023年3月に暫定2車線で供用しました。
残るⅡ期工区約4.4km、沼津大平IC~長岡北ICに至る区間については、静岡県道路公社による有料道路事業を導入し、早期の開通を目指しています(有料道路事業の期間は、2028~37年度)。
――同区間はどのような構造物比率になっていますか。また構造物の詳細についても教えて下さい
森本 山間部に建設するため、構造物比率は約65%(橋梁6橋、トンネル1本)と高くなっています(過年度予備設計時の延長ベース、対象は先行整備する海側2車線)。
代表的な構造物としては、延長約1.7kmの長大トンネルとなる(仮称)静浦2号トンネルがあります。沼津大平ICのすぐ南に位置する場所に建設を予定しています。現在、予備設計を進めており、工事は静岡県道路公社が発注する予定です。
また、橋梁で代表的な構造物は沼津市大平に建設中の大平高架橋がございます。同橋は橋長340m、有効幅員8.0mの鋼7+2径間連続鈑桁橋で下部工は張出式橋脚、ラーメン式橋台、基礎工は場所打ち杭、深礎杭を採用しています。同橋は道路橋示方書の改定などを受けて、未施工区間の修正設計を実施する予定ですが、影響のない範囲で橋脚基礎工事を進めています。本線橋梁は5橋計画しており、今後(次年度以降)、設計を実施する予定です。
大平高架橋の整備状況(同橋のⅠ工区区間、静岡県提供資料より抜粋)
――予備設計段階ではどのような設計ですか
森本 沼津市多比に架橋予定の(仮称)1号橋は橋長210m、有効幅員8.0mの鋼4径間連続箱桁橋で、下部工は逆T式橋台、T型橋脚、基礎工は橋台部が組杭深礎、橋脚部が柱状体深礎として計画しています。
同じく沼津市多比に架橋予定の(仮称)2号橋は橋長175m、有効幅員8.0m、の鋼3径間連続箱桁橋で、下部工、基礎工は1号橋同様の構造を予定しています。
同じく沼津市多比に架橋予定の(仮称)3号橋は橋長135m、有効幅員8.0mの鋼3径間連続箱桁橋で、下部工および基礎工は、1,2号橋と同様の構造を予定しています。
(仮称)4号橋と(仮称)5号橋は伊豆の国市北江間・南江間に架橋予定の橋梁で、4号橋が橋長135m、有効幅員8.0m、5号橋が橋長160m、有効幅員8.0mを予定しています。
――狩野川放水路と交差する部分は
森本 同放水路はトンネル構造になっており、その上の地山を切土して道路を築造する計画です。
清庵新田橋 桁架設が完了
日掛大橋 最小曲線半径が60m、最大縦断勾配7.5%という厳しい条件
――特徴ある形式あるいは工法適用(基礎、下部、上部、床版問わず)の橋梁・高架橋について(路線名、橋長、形式、架橋地、着工年次、完成年次、進捗状況)、また鋼・コンクリート形式問わず、防食などLCC縮減の手法について(鋼橋の重防食(塗装・溶射・耐候性鋼材やコンクリート橋のエポキシ樹脂塗装鉄筋や表面保護など)。また、長期耐久性を向上させるための施策などを行っている構造物施工例がありましたら挙げてください
森本 特徴ある形式・工法を採用している橋梁としては、現在建設中の2橋、国道150号磐南Ⅱバイパスの磐田市内仿僧川渡河部に建設されている清庵新田橋(せいあんしんでんばし)、国道362号の日掛大橋(ひかけおおはし)があります。
架設中の清庵新田橋(井手迫瑞樹撮影)
清庵新田橋ではMRや4D架設シミュレーションも活用した(髙田機工提供)
国道150号の清庵新田橋は、橋長97.0m、鋼2径間連続箱桁橋で、桁架設が昨秋完了しました。上部に77,000Vの高圧電線が通っており、斜角も45°と非常に建設条件が厳しい現場です。そうした様々な課題に対応すべく、MRや4D架設シミュレーションを用いて施工の効率化や安全性の向上を図っています。
国道362号本川根~静岡バイパスの中山間地に建設中の日掛大橋は、橋長219.0m、鋼4径間連続箱桁橋で、最小曲線半径が60m、最大縦断勾配7.5%という特徴を有します。今年の春からベントによる桁の架設を行う予定です。
日掛大橋の進捗状況
――かなり厳しい線形ですね
森本 ループ橋とまではいきませんが、厳しい平面形状です。
――中山間地ということで凍結防止剤を散布することになろうと思いますが、そのケアは
森本 連続橋ということで伸縮装置は橋の起終点しかありませんが、勾配もきつく、塩分を含んだ水が、そこから落ちると腐食を招いてしまいます。同橋はメンテナンスコストを下げるため耐候性鋼材を採用しています。当然伸縮装置は非排水型を使用しますが、両桁端部については塗装を施し、腐食による損傷を未然に防いでいます。また、沓座面については排水がされやすいように勾配を付けています。
黄瀬川大橋 プレビーム合成桁を採用
3次元点群データ「VIRTUAL SHIZUOKA」をオープンデータ化
――架け替えを行う黄瀬川大橋についてもお願いします
森本 橋長100mの3径間連続プレビーム合成桁に架け替える予定です。現在は左岸側の下部工の工事を行っています。来年度以降、右岸側の下部工、上部工の工事を行っていきます。
――新設トンネルの計画で詳細を説明できるものはありませんか
森本 先ほどお話ししました静浦2号トンネルがありますが、詳細は検討中です。所々に破砕帯が確認されています。湧水があるかもしれないという情報も確認しています。
――建設分野で用いている県独自の技術・材料について
森本 静岡県では、3次元点群データを県内ほぼ全域で取得し、「VIRTUAL SHIZUOKA」としてオープンデータ化しています。この3次元点群データの活用の推進により、現地計測作業を省力化する3次元測量を拡大するなど、生産性の向上に取り組んでいます。
VIRTUAL SHIZUOKAのコンセプト(静岡県公開資料より抜粋)
VIRTUAL SHIZUOKAの活用・開発事例(静岡県公開資料より抜粋)
――そうした技術を用いれば、橋梁の3D設計や、4Dの橋梁台帳なども作れそうな感じがしますが、そうした取り組みは行っていますか
森本 橋梁についてはまだデータ化しきれてない部分がありますが、道路台帳は3次元点群データと結びつける1つのプラットフォームの中で作っていきたいと考えています。点群データを取得した後にこれまで取得した点検情報や二次元データを載せていくという手法を執っていきます。現在はそうした作業が進行しています。
――点群化されたデータを運用する時ネックになるのが、データ量の重さですが、それについての工夫は
森本 データ提供する場合は、分割して提供しています。
県全体で3,304橋を管理 鋼橋が484橋、コンクリート橋が2,820橋
県管理トンネルは149箇所 1,000m以上のトンネルは4箇所
――次に保全について聞きます。橋梁及びトンネルなど構造物の現状について教えて下さい
森本 橋梁については、2024年4月1日現在で3,304橋を管理しています。鋼橋が484橋、コンクリート橋が残りの2,820橋となっています。
建設年次別にみますと、1974年以前に建設され、50年以上が経過した橋梁が1,954橋と全体の約6割となっています。
橋長別では15m未満が2,322橋、15m以上100m未満が837橋、100m以上が145橋あります。
――県管理橋梁で最長は
森本 1994年に架設された県道島田吉田線の島田大橋は、大井川渡河区間と起点側の高架区間を合わせ、橋長が1167.5mあり、県が管理する橋梁で最長です。橋梁形式は、大井川渡河区間の12径間がPC箱桁橋となっています。
――同様にトンネルは
森本 県管理トンネルは149箇所あり、在来矢板工法が89、NATM工法が60となっています。
延長別では100m未満が40、100以上500m未満が94、500m以上1000m未満が11、1000m以上が4となっています。
一番長大なトンネルは函南と熱海をつないでいる県道熱海函南線の鷹ノ巣山トンネルで、1267.5mです。
橋梁 健全度Ⅲは255橋(7%)
鋼橋は腐食や塗膜の劣化 コンクリート橋はひび割れや剥離などが主な損傷
――点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答え下さい(橋種(鋼、PC、RC)、部位(桁、床版、橋脚、地覆、高欄など)ごとの損傷傾向とその理由についてお答えください。同様にトンネルについてもお答えください。また、新たな道路橋定期点検要領案が昨年3月末に策定されましたが、その運用状況について何かありましたら教えてください
森本 県が管理する橋梁では、2巡目点検の結果ですが、Ⅰが368橋と全体の10%、Ⅱが3,012橋(83%)、Ⅲが255橋(7%)となっています(※点検橋梁数と管理橋梁数は、数え方が異なるため、合計が一致しない)。通行止めなどの措置が必要となる判定区分Ⅳ(緊急措置段階)と診断されている橋梁はありません。
鋼橋では、腐食や塗膜の劣化、コンクリート橋では、ひび割れや剥離、鉄筋露出などが主な損傷であり、コンクリートの中性化など、経年的な要因によるものが多いものと認識しています。
部位としては、支承や落橋防止構造など、水や土砂が溜まりやすく、風通しも悪い橋座部に設置された部材は、腐食が進みやすい傾向にあります。
――要領改訂についての対応は
森本 今年度から国の定期点検要領改定を踏まえ、定期点検を実施しています。橋梁諸元などのデータを、新しい国様式へ自動入力するよう、県独自の点検調書作成システムを改修していますが、要領改訂により追加された事項についても記録できるよう、今後、システムを改修していく予定です。
技術的助言については、「点検箇所の5年後の状態」について自由筆記する欄があり、そこが違う部分ですかね。
トンネル 判定区分Ⅱaについても修繕の対象とし予防保全を促進
――トンネルについては
森本 トンネルは、2006年度から11年度までの6年間で、静岡県が管理するトンネルすべてで近接目視による点検を実施ました。また、2012年度から14年度には、2回目点検を実施しています。2015年度からは法令に基づく定期点検を実施し、2023年度までに2巡目点検が完了し、2024年度から法令に基づく定期点検の3巡目点検を実施しています。
また、2016年3月にトンネルガイドラインを策定し、それに基づいて、定期点検で判定区分Ⅲ(早期措置段階)となった施設について修繕を実施しています。法令に基づく定期点検(1巡目)で判定区分Ⅲとなった54トンネルについては、すべての箇所で修繕工事に着手している。
2024年3月には、トンネルガイドラインを改定し、予防保全管理の推進のため、今まで経過観察としてきた判定区分Ⅱaの変状箇所についても修繕の対象としました。
2巡目の点検で、健全度がⅢ判定(要補修)とされたトンネルは、全体の4割弱(37%)に達しています。部位別では坑門部、覆工一般部、覆工目地部に分けると、目地部の劣化が49%と一番多く、次いで覆工一般部が47%と2つで95%を占めます。
――トンネルの損傷の仕方は
森本 9割以上が材質劣化によるものです。そのほかも漏水による損傷が占め、外力による損傷はほんの一部しかありません。
――覆工背面に空洞が生じている損傷について対策はどの程度終えているのですか
森本 基本的に全数で調査を終え、損傷が確認されている個所の対策は全て終えています。今後も同様の損傷が発見される可能性がありますが、それはその都度迅速に対応していきます。