Interview

静岡県 南北交通と伊豆半島の道路整備が課題

2025.02.12

東西交通は充実 沿岸部は塩害の進行により架替えるPC橋も

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橋梁耐震補強 進捗率は77%、2032年度の全数完了目指す

橋梁耐震補強 進捗率は77%、2032年度の全数完了目指す

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況、および落橋防止装置の設置状況(全数および実施済み数)および今年度の設置予定についてお答えください

 森本 静岡県地震津波アクションプログラム2023に基づいて、1995年の兵庫県南部地震より前の耐震基準を適用した橋梁のうち、緊急輸送道路やその他の交通量が多い重要路線上にある15m以上の橋梁を対象にして耐震補強を進めています。対象橋梁は707橋です。2023年度末時点の橋梁耐震補強の進捗率は541橋(77%)に達しています。2032年度の対策完了を目指しています。

 落橋防止対策については、静岡県では1976年に東海地震説が発表されて以降、対策を実施し、15m以上の橋梁は「落ちにくい構造」となっています。現在は、支承部の補強などとあわせて、現行の耐震基準を適用した対策を実施しており、今年度は落橋防止対策を16橋で実施しています。

 ――耐震補強対策の今年度実施予定は

 森本 落橋防止対策を実施している16橋を含め、43橋で耐震対策を実施しています。

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橋梁長寿命化 1巡目に比べ2巡目点検では健全度判定Ⅲが大幅に減少

2005年から県独自で橋梁点検を実施していた

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです

 森本 2019~23年度の2巡目の点検では、全体の管理橋梁数の7%にあたる257橋が健全度Ⅲと判定されました。その以前となる2014~18年度に行った1巡目の点検では、全体の約12%にあたる423橋が健全度Ⅲ判定となっており、それと比較すると確実に早期措置が必要な橋の損傷は減っています。

 また、その早期措置を必要とする橋への着手状況ですが、一巡目で発見された423橋については100%着手しています。2巡目の255橋についても、点検した翌年度から補修の設計に着手するよう進めている状況です。早期措置が必要な損傷が発見された全ての橋梁についてはできるだけ5年以内に対策を完了するよう進めていますが、損傷の状況により少し長くかかってしまう橋もあります。

 ――橋梁の長寿命化対策について、現場や制度両面から特筆すべき点はありますか

 森本 静岡県では、実は定期点検が義務化される前の2005年から県独自で定期点検を行っていました。

 橋梁については255橋でⅢ判定が出ていますが、それほどひどい損傷はありません。ただ、中にはPC橋でPCケーブルが露出して腐食している橋も1橋で確認しています。それは補修が難しいということで、上部工のみを架け替えていく予定です。

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国道135号渚橋 PCケーブルが一部破断、上部工架替えへ

 ――それはどこですか

 森本 熱海土木事務所管内になりますが、国道135号の伊東市内にある渚橋で橋長は67.5m、1963年に架設された3径間のPCポステンT桁橋です。

 ――渚橋の損傷状況をもう少し詳細に教えて下さい

 森本 主桁のPCケーブルの損傷(最大2束/1主桁)、コンクリートうき・剥離・鋼材露出(最大17箇所/1主桁)を確認しています。塩害が損傷要因の一つと考えています。補修や架け替えについて、施工性やライフサイクルコストを比較した結果、上部工を架け替える方針で、設計を進めています。


渚橋の損傷状況


 現橋についても専門家の「その程度の損傷なら当面は問題がない」という助言を得ましたので供用を続けています。

 ――上部工は同じくPCに架け替えるのですか。下部工への荷重を考えると防食をしっかりと行ったうえで鋼橋に変えるということもあり得ますが

 森本 鋼橋を含め、比較検討しています。

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補修補強 2024年度は119橋、25年度は112橋の施工を予定

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2024年度施工済みおよび施工予定数量、2021年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて県が管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです

 森本 上部工を含む橋梁の補修については、主に、鋼部材の塗装塗替え、当て板補修、コンクリート部材のひび割れ補修、断面修復などを行っています。2021年度(令和3年度)から2023年度(令和5年度)までの3年間の施工実績は、290橋です。

 2024年度(令和6年度)は、前年度からの継続90橋を含む119橋で施工しております。

 2025年度(令和7年度)は、今年度からの継続39橋を含む112橋の施工を予定しています。

 鋼床版については、最近では、富士川かりがね橋などで採用実績がありますが、コンクリート床版に比べ路面が凍結しやすいため、採用してきませんでした。このため、鋼床版を採用した古い橋はなく、疲労亀裂も確認されていません。

 コンクリート桁・床版部においては、剥離、ひび割れが主な損傷ですが、先ほど申し上げた渚橋のような事例もあります。

 床版の防水工については、現在、全ての橋梁で施工することとしていますが、古い橋梁には未施工のものもあります。供用済みの橋梁で床版防水工未施工のものは、床版や橋面舗装の補修時には、塗膜系の防水工を施工しています。

 ――とりわけ塩害やASRによる損傷はありませんか

 森本 塩害の事例として渚橋がありますが、ほかに塩害やASRによる著しい損傷は報告されていません。

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鋼橋塗替の際の塗膜除去は循環型のブラスト工法を基本採用

24年度は32橋で予定 レーザーブラストの採用も今後考慮

 ――2024年度の鋼橋塗り替え予定(橋数と面積)と、ここ3年の塗り替え実績に ついて教えてください。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください

 森本 鋼橋の塗装塗替については、今年度、32橋で実施しています。施工面積は1橋あたり137㎡という小さなものから3,400㎡程度の比較的大きいものまであります。


例えば県が管理している沼津市内にある昭和12年供用の御成橋は戦火も潜り抜けてきた橋長130mの下路バランスドソリッドリブタイドアーチだが


 RC製の床版との地際部で損傷が出てきていた(御成橋は全て井手迫瑞樹撮影)


 2021年度から23年度までの3年間の施工実績は44橋であり、施工面積は1橋あたり40㎡の小さなものから3,480㎡という大きなものまでありました。

 基本的にはRc-1塗装系による塗り替えを採用しています。塗装塗替以外の防食工法としては、支承部で金属溶射を採用している事例があります。

 PCBを含有している可能性がある鋼橋については、塗膜調査を行っており、県内で49橋の含有を確認しています。順次、塗膜除去、塗替工事を進め、2026年度の処理期限までに対策が完了する予定です。

 素地調整には、PCBや鉛などを含む塗膜の除去も含め、基本的に循環型のブラスト工法を採用しています。



修善寺橋では循環式ブラストを採用して、塗膜除去を行っていた


 ――IHやレーザーブラストについては今後採用を考えていますか

 森本 レーザーブラストについては検討しています。富士市に本社のある企業が同技術を開発しており、昨年度、経済産業部が実施したスタートアップ企業のビジネスコンテストで、準グランプリを受賞されました。すごく軽い機械で塗膜除去、ブラスト施工ができる工法です。


レーザーブラストの施工状況と施工後の鋼材表面状況(トヨコー提供)

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耐候性鋼材 97橋で採用 一部部分塗装を行った事例も

 ――耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、県では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください

 森本 耐候性鋼材を使用した橋梁が97橋あります。定期点検により概ね健全性は確認されていますが、安定さびが形成されなかった下フランジ部について、部分塗装を行った事例があります。

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支承取替は6橋

ジョイント取替は34橋で実施

――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい

 森本 今年度は6橋で支承取替を行います。基本的には耐震対策で行っているものが多く、鋼製支承をゴム支承に取り替えるケースが多いです。

 ジョイントは34橋で取替を予定しています。

 国道136号黒浜桟道橋では、埋設型の突合せジョイントを採用しています。

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