国交省近畿地整 大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部、近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道などビッグプロジェクトの進捗を聞く
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すさみ串本道路 令和7年春開通に向けて全面展開
すさみ串本道路 令和7年春開通に向けて全面展開
豊岡道路 グランドアンカー等の法面対策を実施
――一般国道42号近畿自動車道紀勢線すさみ串本道路については
水野 令和7年春開通に向けて、延長19.2kmの区間で、改良、橋梁、トンネル工事を推進中です。構造物は土工が約52%(9.9km)、橋梁が約20%(3.9km)、トンネルが約28%(5.4km)となっています。
国道42号すさみ串本道路事業概要
同道路事業は、高規格道路の近畿自動車道の一部であり、当該区間に並行する国道42号については、南海トラフ巨大地震の発生時、国道42号の約6割が津波浸水想定区間となっており、津波に対して十分な高さを確保して計画をしている路線です。
かつ、当該地域では、軟岩内においてスレーキングの特性がある切土法面が多く、対策が必要な箇所においては、グランドアンカー等の法面対策を実施しているところです。
――一般国道483号北近畿豊岡自動車道豊岡道路は
水野 令和6年秋開通に向けて、全線の延長2.0kmの区間で、改良、トンネル、舗装工事を推進中です。構造物比率は土工が約45%(0.9km)、橋梁が約15%(0.3km)、トンネルが約40%(0.8km)となっています。
北近畿豊岡自動車道豊岡道路事業概要
国道483号豊岡道路は、高規格道路の北近畿豊岡自動車道の一部であり、当該区間に並行する国道312号等は、但馬(たじま)地域を流れる円(まる)山川(やまがわ)が過去65年間で8回もの大きな氾濫が発生しており、水害の影響を受けにくくするため、比較的標高の高い位置に計画をしている路線です。
かつ、当該地域では、白色凝灰岩が確認されており、未固結の地山で自立しない箇所においては、グランドアンカー等の法面対策を実施しているところです。
北近畿豊岡自動車道佐野トンネル 白色凝灰岩対策
同トンネル施工状況
国道8号大谷防災に新規着手 ほとんどがトンネル構造
ビッグデータを分析し、効果的に渋滞解消 国道26号北島局所渋滞対策
――新規事業化区間としては防災事業がありますね
水野 先ほどお話ししました一般国道8号大谷防災に新規着手します。事業区間は福井県南条郡南越前町大谷~敦賀市元比田間の5.1㎞が対象です。ほとんどをトンネルが占めます。
国道26号の北島局所渋滞対策も新規事業化しました。事業区間は大阪市住之江区西住之江~堺市堺区鉄砲町間です。ビッグデータの分析により、阪神高速ランプからの合流車両との輻輳や、交差点左折時の横断歩行者待ちによる車両滞留が渋滞の原因となっていることが特定されたため、合流部分での車線拡幅や左折直進混用レーンの設置などの対策により、渋滞の緩和・解消を図るものです。
ビッグデータによる分析例
北島交差点の渋滞状況と対策検討図
北島局所渋滞対策概要
近畿自動車道紀勢線 PCラーメン箱桁や鋼箱桁を多く採用
大和北道路 主にPC連結コンポ桁を多く採用
――2024年度の主要橋梁・トンネル事業の計画と進捗状況(設計中、設計発注予定、設計済、着工予定の主要橋梁・トンネルの橋長(延長)、上・下・基礎各形式、架橋地、施工地の土質、防食方法など)について教えてください
水野 まず橋梁については、津波の浸水区間を回避する高さに計画されている近畿自動車道紀勢線においては、多くの橋梁工事が進み、最盛期を迎えております。
主要な進捗状況として、PC橋としては、大山口川橋(228m)を始め、4橋が施工中です。江田川橋(279m)を含め、6橋は上部工の施工に向け、準備工に入っております。
橋種としては、高低差のある山間部の谷間を通るため、ラーメン箱桁橋の採用が多くなっています。
施工中の主要橋梁(PC上部工)
すさみ串本道路 熊谷川第二橋
すさみ串本道路 和深川橋(左2枚:A1、右2枚A2)
同橋P2~P3
すさみ串本道路 田子川橋の進捗状況
(左:A2橋台からA1橋台を望む、中:A1橋台とP1橋脚、右:A2橋台、P2橋脚)
すさみ串本道路 鬮(くじ)の川橋とサンゴ台高架橋の進捗状況
すさみ串本道路 大山口川橋上部工の進捗状況(左2枚)/同東雨川第一橋上部工事の進捗状況
施工中の主要橋梁(鋼上部工)
鋼橋については、高富川橋(354m)を始め、3橋が施工中です。有田川橋(381m)を含め、4橋は工場製作に入っており、小河瀬谷川橋(183m)等2橋は準備工を実施しております。橋種は箱桁橋の採用が多数を占めています。
すさみ串本道路二色川橋上部工進捗状況
すさみ串本道路高富川橋上部工進捗状況
すさみ串本道路 釜郷原川橋上部工進捗状況
すさみ串本道路 里野西池川橋進捗状況
その他、福井県の大野油坂道路事業や、滋賀県の野洲栗東バイパス事業、奈良県の大和御所道路、大和北道路、兵庫県の大阪湾岸西伸部事業等において、準備工や工場製作工等、が進んでいます。
野洲栗東バイパスでは、野洲川橋歩道橋部の工事を進めています。同橋は全て鋼床版箱桁方式を採用し、基礎は主にケーソン基礎を採用しています。現在は上部工が進捗中です。
野洲栗東バイパス 野洲川橋歩道橋部 上部工進捗状況
米原バイパスでは矢倉川高架橋(P5~A2)鋼上部工事を施工しています。橋長146.3mの鋼2径間連続合成箱桁橋で、一級河川矢倉川渡河部に加え、JR東海道本線を跨ぐ箇所にあり、施工には細心の注意が必要となります。現在は桁を工場製作中です。
米原バイパス 矢倉川高架橋上部工進捗状況
大和御所道路では、ランプ橋上部工の架設を進めています。いずれも連続非合成あるいは合成の鋼鈑桁、鋼箱桁です。主要な国道・県道や近鉄を跨ぐ部分も多く、そうした箇所は夜間に大型クレーンを用いて架設しています。同地は地盤が軟弱な個所が多く、ニューマチックあるいはオープンケーソン、鋼管ソイルセメント杭を基礎形式に採用しています。
大和御所道路 橿原高田ICランプ橋進捗状況
湖西道路 天神川橋上部工事進捗状況
設計前・設計中・工事発注前橋梁(PC上部工)
設計前・設計中・工事発注前橋梁(鋼上部工)
一方、現在施工中の大和北道路は、主にPC連結コンポ桁を多く採用しています。PCコンポ桁は、現場施工期間の短期化、安全性の向上、LCCの向上に寄与します。
PC橋は、その他に、滋賀県の小松拡幅事業において、滝川橋(24.4m)、兵庫県の相生有年道路の黒尾橋(59.7m)の工事が施工中です。どちらもプレテンション方式のT桁橋です。
相生有年道路 黒尾橋上部工進捗状況
トンネルは、2024年度に完成を迎えるものとして、兵庫県の、豊岡道路事業の佐野トンネル(189m)や、洲本バイパス事業の炬口トンネル(963m)、福井県の、大野油坂道路事業の、東市布トンネル(1161m)、和歌山県の奥瀞道路(3期)の2号トンネル(1620m)などがあります。いずれもNATM工法での施工になります。
施工中の主要トンネル
掘削中のトンネルは、和歌山県の有田海南道路の1号トンネル(1545m)、すさみ串本道路の江住第一トンネル(275m)、宇の平見トンネル(355m)、中平見トンネル(190m)、和深西トンネル(445m)、東地トンネル(833m)、江田トンネル(490m)、福井県の大野油坂道路の大谷トンネル(2853m)などがあります。
奥瀞道路(Ⅱ期)2トンネルの進捗状況
大野油坂道路 新長野トンネル
大野油坂道路 東市布トンネル
大野油坂道路 大谷トンネル
設計前・設計中・工事発注前トンネル
ロングライフ塗装用鋼板、ゴムラテコーティング、高遮断形エポキシ樹脂塗料などを採用
大野油坂道路の東市布トンネルで安全性の向上に寄与する切羽発破システムを導入
――新設における新技術・新材料の導入事例について
水野 橋梁においては、すさみ串本道路で、アルミ合金押出し材を用いた耐腐食性能に優れる橋梁検査路(KERO)を、大山口川橋、和深川橋に採用しています。従来の溶融亜鉛メッキ処理を施した鋼製検査路より、防食性能が向上し、ライフサイクルコストが低減されます。
また、大和御所道路橿原高田ICランプ橋の一部では、ロングライフ塗装用鋼板(エコビュー)の使用により支点部の主桁下フランジの防食性機能確保、鋼・コンクリート複合構造物一体性向上用ポリマーセメントモルタル「ゴムラテコーティング」(QS-180041-A)、の使用により鋼材とコンクリート等との付着力を確保しています。また、鋼部材への腐食性物質浸透遮断のため、高遮断形エポキシ樹脂塗料「タイエンダー下塗りストロング」(CG-210013-A)を使用しています。
合わせて、同ランプ橋ではBIM/CIMの3次元データを作成し、設計照査の効率化を図り、架設時のシミュレーションにより作業員との情報共有のツールとして活用しました。
また、鋼・コンクリート界面の止水材「タフコネクト」、紫外線硬化型FRPシート「e-シート」、透明ボルトキャップ(透明ボルトアイキャップ)、塗装周期延⻑耐⾷鋼(CORSPACE)、3次元データを活用した配筋検査省力ツール「Modely」なども活用しています。
トンネルについては、安全性の向上に寄与する、切羽発破システムの導入を、大野油坂道路の東市布トンネルで採用しました。システムを使用することで、発破穿孔から岩盤の性状を定量的に把握し、地質に応じた発破孔毎の適正装薬量を算出し、適正な発破計画を設定でき、過装薬を防止できます。
「橋の計画と形式選定の手引」 道路橋の設計に活用
――土木学会では2023年5月に「橋の計画と形式選定の手引」を発刊しました。新設橋の予備設計や道路計画段階時点で様々な形式選定や、リスク管理、新技術の導入などを検討し、しかもプロセスの過程を残しておくことで、後工程に資する橋梁計画や予備設計となることを目指したものです。予備設計段階では、地質や住民との合意形成など不確定要素があり、かつ同時点での新技術についても有望ながら信頼性の点で断念することもありました。しかし、予備設計段階から実際の工事に入るまでは通常でも3~5年程度かかり、その間で所与の条件やより詳細な情報、新技術の信頼性も向上することから、議論の過程を残し、予備設計の最適案も無理に1つにしないことで、後工程の選択の幅を広げるようにしたことが最大のメリットです。同取り組みには近畿地方整備局からも幹事または委員として参画しています。同手引きを今後どのように活用していくのか教えてください
水野 本手引「橋の計画と形式選定の手引」については、土木学会 構造工学委員会 橋梁予備設計の適正化に関する研究小委員会の委員長として富山大学の久保田委員長を中心に取りまとめを行った手引きであり、国土交通省国土技術政策総合研究所、地方整備局等と議論を重ねながら、作成されているものです。
今回の手引きは、計画実務担当者の参考図書の位置付けとなっているため、今後、本手引を各事務所の設計担当者と共有し、道路橋示方書の性能規定に満足する道路橋の設計に活用していきたいと考えています。