Interview

国交省近畿地整 大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部、近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道などビッグプロジェクトの進捗を聞く

2024.06.28

保全分野の対策やDXの活用も進む

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DX 国土交通省
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鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 CORE技術研究所 ブラスト施工技術研究会

塩害推定損傷は49橋、ASR推定損傷は59橋で確認

50年経過橋梁は41%、20年後には71%に達する

50年経過トンネルは32%、20年後は46%まで増加

 ――次に保全分野について現在の管内橋梁・トンネルの内訳から教えてください

 水野 近畿地方整備局では2m以上の橋梁5,243橋を管理しています。


橋種別の橋梁数と延長/10年ごとの供用年数別橋梁数


 橋種別割合は、RC橋が最も多く46%、鋼橋が20%、PC橋が28%です。

 供用後50年以上経過している橋梁は41%、10年後には56%、20年後には71%まで増加する見込みです。

 橋長別では、15m未満が半数を超える55%で、100m以上の長大橋は16%ほどとなっています。

 路線別にみると、国道24号が806橋で最も多くなっています。


路線別橋梁数/橋長別橋梁数

管理橋梁例(左:国道43号伝法大橋(鋼ランガーアーチ橋)、
中:国道29号カラウコ大橋(単径間鋼斜張橋(箱桁))、
右:国道27号塩出橋(3径間連続鋼溶接方杖ラーメン橋)


 一方トンネルについてですが、近畿地方整備局が管理するトンネルは202箇所あります。

 工法別割合は、矢板工法が41%、NATMが57%、その他が2%となっています。

 建設後50年以上経過しているトンネルは32%で、10年後には39%、20年後には46%まで増加する見込みです。


工法別トンネル数/建設後経過年数(10年ごと)別トンネル数


 延長別では、100m以上300m未満が多く37%を占めています。1,000mを超えるものは 19%に達します。

 路線別にみると、国道42号が51箇所で最も多くなっています。


延長別および路線別トンネル数

管理している工法別トンネル例

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点検2巡目4年間の点検結果は、健全性診断区分Ⅱが31%、Ⅲが6%

トンネルは、健全性診断区分Ⅱが78%、Ⅲが22%

 ――点検を進めてみての管内各路線の劣化状況について詳しくお答え下さい。橋種、部位ごとの損傷傾向とその理由についてお答えください。また、一巡目と二巡目の比較や、損傷度が遷移した状況についても教えてください。同様にトンネルについてもお答えください

 水野 2019年度から2022年度までの点検2巡目4年間の点検結果は、健全性の診断区分Ⅱが31%、Ⅲが6%となっています。

近畿地整が管理する橋梁の劣化状況


 変状の種類は、鋼橋では腐食、防食機能の劣化、PC・RC橋では、乾燥収縮など種々の要因で発生するひび割れが最も多く、漏水・遊離石灰、剥離・鉄筋露出、うきなどの防水・排水不良が要因と考えられる損傷も多くなっています。


橋種別損傷状況


 1巡目点検で診断区分がⅢ以上の橋梁については、2022年度末時点で修繕等の措置に着手しているのは98%、予防保全への転換に向けた対策を着実に進めています。措置の内容としては、鋼部材であれば部分的なあて板、コンクリート部材であればひび割れ補修や断面修復、炭素繊維シートの接着などです。


橋梁損傷の対策事例


 同様にトンネルは2019年度から2022年度までの点検2巡目4年間の点検結果は、健全性の診断区分Ⅱが78%、Ⅲが22%となっています。


トンネルの変状傾向

国道8号 大谷第4トンネルの変状および対策工


 変状の種類は、うき・剥離、ひび割れ、路面の滞水が多く見られ、材質劣化に伴う変状が多くなっています。

 1巡目点検で診断区分がⅢ以上のトンネルについては、2022年度末時点で全て修繕等の措置に着手、予防保全への転換に向けた対策を着実に進めています。措置の内容としては剥落防止ネット、ひび割れ注入、漏水対策などを行っています。


トンネルの損傷対策例


 橋梁、トンネルともに、1巡目の診断区分がⅠ・Ⅱから2巡目でⅢに遷移する理由は、劣化の進行が原因と推定され、予防保全への転換に向けて、引き続き対策を着実に進めていきます。

耐震補強 今年度は19橋で対策予定

今年度の橋梁修繕は118橋、トンネル修繕は14箇所で実施予定

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況(耐震性能2)、および落橋防止装置の設置状況(全数および実施済み数)および2024年度の対策予定についてお答えください。また、熊本地震や今回の能登半島地震に対応した耐震対策についても知見をもとにどのようなことが改めて必要になっていると考えているかお答えください

 水野 緊急輸送道路上の橋長15m以上の橋梁の耐震補強進捗率(R6.3末現在)は、約9割対策済みです。今年度は、19橋を対策予定です。


耐震補強工事実施例


 社会資本整備審議会道路分科会道路技術小委員会にて、能登半島地震における道路構造物の被害分析が整理されており、耐震補強を行っていた道路橋は致命的な被害を回避している一方で、古い基準で設計された道路橋の中には深刻な被害も見られています。


能登半島地震における橋梁被災状況


 ――能登半島地震では高盛土構造も大きな被害が生じています

 水野 高盛土構造についても聞いておりますが、近畿地整においては、まずは損傷した時の影響がより大きい橋梁の耐震補強を完了させることが先決であると考えています。その上で、先ほども申し上げました通り、能登半島と比定される紀伊半島については何よりもまず近畿自動車道紀勢線の工事を完成させ、津波や地震の影響が少なくなる道路の整備を行うことが災害時において効果があると考えています。

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。トンネルついても橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください

 水野 定期点検の結果、健全性の診断でⅢおよびⅡとなった橋梁を主に、次回点検までに修繕(補修)を実施するように計画しています。Ⅲを対象とした「事後保全」、Ⅱを対象とした「予防保全」があり、現在は「事後保全」が主となっていますが、早期の「予防保全」への転換を目指しています。今年度の橋梁修繕は118橋で実施予定(継続工事や設計含む)です。

 国道2号天神橋では、主桁・支承の腐食が生じており、あて板補修及び塗装等を行う予定です。


国道2号天神橋の損傷状況


 トンネルについては、定期点検の結果、健全性の診断でⅢおよびⅡとなったトンネルを主に、次回点検までに修繕(補修)を実施するように計画しています。トンネルについても現在は事後保全が主ですが、早期に予防保全への転換を目指していきます。トンネル修繕は14トンネルで実施予定(継続工事や設計含む)です。

 国道42号鰈川トンネルでは、既設剥落防止材の劣化や覆工からの漏水などが生じており、炭素繊維貼り付けなどにより補修を行う予定です。


国道42号鰈川トンネルの補修状況

コンクリート床版の損傷 防水・排水不良が要因と考えられる損傷が多い

塩害推定損傷は49橋、ASR推定損傷は59橋で確認

――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2024年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況などを教えていただけましたら幸いです。

 水野 床版防水については、既設橋は、舗装打換えなどの補修に合わせて床版防水を施工するなど随時対応しています。

 鋼床版の疲労亀裂事例としては国道26号紀の国大橋、国道1号古川高架橋などがあり、削込みによる亀裂除去、車道下部の縦リブ、横リブ交差部へのL型鋼設置による補修(紀の国大橋)、当て板による補修(古川高架橋下り線)を行いました。


鋼床版の疲労亀裂事例

国道24号京奈和道 橋本東ICAランプ橋における損傷状況


 コンクリート床版の損傷は、損傷が見られた1,531橋のうち、漏水・遊離石灰(34%)、剥離・鉄筋露出(13%)、うき(9%)のような防水・排水不良が要因と考えられる損傷が多く、乾燥収縮・疲労などが要因と考えられる床版ひび割れ(31%)も見られています。


コンクリート床版の損傷事例割合


 ――支承取り換えや、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度の施工予定個所数と取替える際の工法・種類をお答え下さい

 水野 支承取替えは14橋、伸縮装置の取替えは54橋で予定しています。

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、またその対策工法などを具体的な橋梁などを挙げてお答えください

 水野 2022年度末時点の点検結果では、塩害によるものと推定される損傷は49橋、アルカリ骨材反応(ASR)によるものと推定される損傷は59橋で確認しました。ただし、今後の詳細調査等により見直される場合もあります。塩害による損傷が最も多いのは国道42号で28橋、ASRによる損傷が最も多い路線は国道2号で29橋となっています。



塩害対策事例 国道42号古座大橋

ASR対策事例 国道26号堺高架橋

既設塗膜にPCB含有が確認されている橋梁数は27橋

耐候性鋼材は9橋でⅢ判定 ブラスト処理をした後に防食塗装を実施

 ――2023年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)と、2024年度の鋼橋塗り替え予定(同)は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや厚生労働省・国土交通省から2014年5月30日に出た文書をはじめとした一連の文書・通達を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください

 水野 2023年度は21橋約2,400m2の塗替えを実施しました。2024年度は予定も含めて28橋約7,300m2の塗替えを実施します。

 溶射など新しい重防食の採用については、2023年度は15橋、2024年度は15橋で金属溶射を主に支承防錆で採用あるいは採用を予定しています。

 PCBや鉛などが検出された場合は、塗膜剥離剤を用いた工法にて既設塗膜を除去し、その上で特定管理産業廃棄物、PCBや鉛など汚染物が出ない場合は産業廃棄物として処理しています。

 低濃度PCB廃棄物の処分期間は、2027年3月末で終了しますが、既設塗膜PCBの含有が確認されている橋梁数は、2024年3月末時点で、27橋あります。

 耐候性鋼材は131橋で採用しています。診断区分Ⅰが73%、Ⅱが19%、Ⅲも8%と9橋でⅢ判定が出ています。


(左写真)耐候性鋼材は22橋でⅡ判定、9橋でⅢ判定
(右写真)耐候性鋼材を採用している国道175号天神橋(単純鋼非合成鈑桁橋)


 ――Ⅲ判定が出た耐候性鋼材についてはどのように補修していきますか

 水野 防食機能の劣化要因によって異なりますが、ブラスト処理をしたのちに防食塗装を実施することが多いです。また、路面からの漏水などが損傷を招いているケースもあるため、点検・診断結果に基づき適切に損傷原因の排除を行うことが重要です。

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