Interview

国交省近畿地整 大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部、近畿自動車道紀勢線、京奈和自動車道などビッグプロジェクトの進捗を聞く

2024.06.28

保全分野の対策やDXの活用も進む

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DX 国土交通省
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never-ending challenge 道路下面施工が容易で発泡ウレタンの圧縮変形特性を活かした非排水用乾式止水材 プレスアドラー 社会価値創造企業へ

2022年度末時点の土砂災害要対策箇所数は約200箇所

2022年度末時点の土砂災害要対策箇所数は約200箇所

17の新技術を活用 橋梁が11技術105箇所、トンネルが6技術135箇所

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいます。河積阻害率の高い橋梁の改良や補修もしくは更新(架替)、道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください

 水野 2022年度末時点の要対策箇所数は約200箇所です。このうちR6年度は約13箇所(継続工事や設計含む)について対策を実施します。残る箇所についても引き続き、対策を行っていきます。


災害対策実施例


 ――新技術や、コスト縮減策または独自の新技術・新材料などの活用について

 水野 令和5年度の施設点検においては、17の新技術を活用しています。内訳は、橋梁が11技術105箇所、トンネルが6技術135箇所です。

新技術・新工法活用実績


全方向衝突回避センサーを有する小型ドローン


 橋梁点検の活用事例としては、全方向衝突回避センサーを有する小型ドローンや360°周囲を認識するドローンを用いた橋梁点検支援技術(Skydio)、橋梁等構造物の点検ロボットカメラなどがあります。トンネル点検の活用事例としては、走行型高速3Dトンネル点検システムMIMM-Rなどです。


走行型高速3Dトンネル点検システム MIMM-R

私たちがもとめるもの それは豊かな未来を支える確かな技術です。 スーパーブラスター工法 下地補修ができる浸透型防水工法

国道26号住吉橋架替事業 プレビーム桁の架設を完了

奈良市管理の鶴舞橋を直轄権限代行による修繕工事に着手

 ――特殊・長大橋梁の架替や大規模修繕、長大トンネルの修繕事業等について。また権限代行で自治体が保有する橋梁などの構造物の点検や補修補強もしくは架替を行う事例の進捗中案件などについて教えてください

 水野 国道26号住吉橋架替事業は、老朽化の進んだ橋梁を架け替えることで、耐震性能を確保し、大阪府が定める広域緊急交通路の信頼性向上を目的とする事業です。既に上部工の架設は完了し、引き続き改良工(道路交通切り回し)を進め、令和7年春開通に向けて鋭意整備を進めているところです。

  部工は橋長34m、幅員45mの単純プレビーム合成桁を採用しました。


住吉橋架替概要


住吉橋の架替え状況
桁架設は夜間に行った(上2枚写真)ほぼ幅員と橋長がほぼ同じ長さ(下左)
桁下クリアランスが低いため桁高を絞る必要があり、プレビーム桁を採用した(下右)


 また、直轄権限代行としては、奈良市が管理する「市道登美ヶ丘(とみがおか)中町(なかまち)線 鶴舞橋」の直轄診断を令和3年2月8日より実施し、令和4年2月9日に奈良市に診断結果を報告しました。その上で、令和4年度に修繕代行事業として新規事業化しており、令和6年度より、修繕工事に着手する予定です。



鶴舞橋 損傷もあるが、橋脚も特殊であり、補強が必要である

DX 上部工の架設ステップを時系列で施工CIMモデルとして作成

3Dモデル作成による干渉確認、施工計画検討、ロボット溶接の検討などを実施

 ――新設・災害復旧・保全問わず、安全性の向上、業務の効率化やDXの活用事例について教えてください

 水野 建設DXの実例として2例紹介します。

 大和御所道路の橿原高田ICランプ橋上部工事では、架設ステップを時系列で施工CIMモデルとして作成し、既設構造物と吊荷との離隔確認、クレーン位置・地組位置の妥当性確認など、リスクを可視化して関係者間で共有し、改善点などを施工計画へ反映しました。

 大阪湾岸道路西伸部の六甲アイランド第三高架橋鋼製橋梁工事では、3Dモデル作成による干渉確認、施工計画検討、ロボット溶接の検討などを実施しました。

 道路施設の点検・診断の膨大なデータが各々の道路管理者ごとに様々な仕様で蓄積されている中、デジタル化やAI技術の進展を踏まえ、データを活用した効率的な道路の維持管理の実現を目指し、点検・診断データのデータベース化、各分野の一元化を図り、APIで連携することにより、一元的に処理・解析が可能な環境を構築していきます。
また、データベースについては可能な限り公開し、各研究機関や民間企業等によるAI技術などを活用した技術開発やアプリケーションの開発を促進することにより、維持管理の更なる効率化を図っていきます。

 ――いろいろなDXに取り組んでいますね

 水野 DXを進めていくには国交省も大きく変わることが必要です。今後は、無人化施工もしくは遠隔地から現場を動かせる技術が必要になってくると思いますが、民間がそうした方向にシフトする一方で、発注者である我々の体制が整っていると言い難い状況です。例えば「DXや3Dとか言われるけど、データを事務所に渡すと事務所ではコンピュータのスペックが低くて開けない」ということがあります。DXに即した環境をまずは整えなくてはいけません。

 さらに言うと国交省は自分たちがやってほしいことを明確に定めて、ジャッジをする立場になる必要があります。

――具体的には

 水野 やり方は問わない。結果に対して効率的かつ低コストで到達する技術や、高コストでも効率性や安全性を優先しなくてはいけない――など、条件を提示してマネジメントするということです。

 そのためには、マネジメントに必要なデータは何か? ということを我々の中で標準化し、それをチェックし、セキュリティも厳しくすることが重要です。

 私自身は施工上のDX以外に、道路交通のDXに興味があります。

DGMXに挑戦 道路を「効率的に使う」能力を高める

カメラ画像をAI解析することで、交通量の把握、異常の検知ができる

 ――どのような点に興味を持たれているのですか

 水野 現在、DGMX(デジタル・グリーン・モビリティ・トランスフォーメーション)(https://www.kkr.mlit.go.jp/road/dgmx/index.html)に挑戦しています。

 開幕が来年に迫っている大阪・関西万博においては、様々な輸送について、検討しており、来場者の輸送をコントロールするため、ETC情報と連携した万博P&R(パーク&ライド)料金を設定するダイナミックプライシングに挑戦していきます。オーバーツーリズムが課題となっている京都では、駐車場探しのうろつき交通や駐車場待ちによる渋滞の緩和のための交通マネジメントを実施したいと考えています。

 また、直轄国道にはかなりの箇所にカメラが設置されているので、そのカメラ画像をAI解析することで、交通量の把握、異常の検知ができます。さらにETC2.0のデータを活用することで速度、急加減速も把握できる状況にあります。道路部ではその豊富なデータの使い方や、ジャッジの手法を整備局や国道事務所の職員に考えさせて、積極的に使うことを促しています。

 やはり道路は整備したのちにどう利活用していくのかというのが、非常に大事ですので、我々の中で「効率的に使う」能力を高めていきたいと考えています。


DGMX(デジタル・グリーン・モビリティ・トランスフォーメーション)


 --交通量や車種、速度やブレーキなどの情報が分かるビッグデータであれば、構造物の管理や劣化予測にも使えそうですね。それは宝の山と言えますね

 水野 情報の宝庫です。そのデータをオープン化も含め、うまく活用していくことが重要です。

 ――橋梁や舗装に対して作用する力がわかるわけですから、うまく使えばかなり保全を効率化できるかも知れませんね

 水野 そうですね。ビッグデータをうまく使うことで、輸送問題、構造物の保全などあらゆる面での効率化につながると思います。

 ――ありがとうございました

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